第281話 巨大な渦の底

巨大な渦の底


余興の時間は20分前後、気を失ったシャーズはアローリアの膝の上で目をさます。


《ここは?》

《ダンジョンの手前よ》

《俺は 負けたのか…》

《そのようじゃな》

《くそ!》

《まあ妾にガチで向かってきた者は久しぶりじゃ、そこはほめてやろう》

《く…》

《マーシャ様、火に油です》

《悔しければ鍛えて来い、リベンジはいつでも待っておるぞ!》


手加減されて負けたのだ、しかも全力で負けた。

マーシャの思った通りそこからは妙におとなしくなったシャーズ、多分仲間の中で彼は負け知らずなのだろう。


《渦が収まって来たな》

《はい、それではまいりましょう》

《…》


渦が収まって行く、その中心部には巨大な穴があり、4人はその縦穴へと入って行く。

十数メートル降りたところで横道のような洞窟があり、アローリアを先頭にして進んで行くと今度は斜め下へと海底洞窟は伸びている。

さらに30メートルほど進んだところで今度は大きな扉のようなものが見えて来る。

近寄ると魔法の灯りがその扉の両側に燈り、ダンジョン挑戦者をまるで待っていたかのように見えた。


《古のしきたりに従い我らの力を試さん、海竜王の命に従い開錠せよ、サザール》

「ゴゴゴゴゴ」


ゆっくりとだが確実にその扉は開いて行く、海の中しかも辺りは薄暗い。

海底の潮流が少し残っているのか、扉が動いても濁りは少なく、扉の向こう側を見る事が出来た。


《こちらです》


扉の中はやや広い部屋、そして向こう側にはまた扉が見える。

そしてその部屋は1階の転移門なのだろう、床には魔法文字で書かれたサークルがあり。

壁には他のダンジョンでも見た事が有る固有の規則が書かれている。


《うぬ、やはり他のダンジョンと同じようじゃな》

《はい、すぐに進みますか?》

《1階がどうなっておるのかは知っておるのじゃろう》

《1階は…》

《1階は巨大な渦と食人魚のたまり場だ》


海の中という設定は中々面白いアトラクションのようだ、もしかしたらこの2名は1階でやられた可能性が高い。


《2階は分からぬと言う事じゃな》

《そ その通りです》

《では行くか》

《はい》

《おい、本当に行くのか?》

《なんじゃ、さっきの勢いはどうした?》

《くそ…》

《まあ任せて置け》


次の扉は手を触れただけで開いて行く、向こう側から光が差し込んでいるように見える。

どうやら洞窟の中とはいえ日差しがさしているのかもしれないが、ここがダンジョンの中だと言う事は忘れてはならない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る