「それ」の話
でもその当時私は小学3年生。
たったの9歳だった
そして皮肉なことに、きちんとした判断はできないのに趣味の読書から得た偏った知識だけはあった
私の中で「放射能」と「雨」という単語から出てきた情報は「それ」だけだった
私は「それ」を言ってしまったのだ
本当にとんでもないことをしてしまったと思う
情報源が私ということは広まらなかったため私が非難されることは無かった
でも今となってはそれがとても苦しかった
「戦争をしていた頃、広島と長崎に放射能の爆弾が落とされたことがあるんだって。
すぐに大きな雲ができて暗くなって、それから黒い雨が降ってきたの。
建物がボロボロに壊れてたからみんな浴びたし、それがなんの雨なのかみんな知らなかったからその雨を飲んじゃった人もいたって。
それはたっくさん放射能が混ざってて、その雨のせいで、爆発では生き残った人も時間が経ってから次々に白血病になって死んじゃったって。
前に本で読んだの。
だからきっと今度の雨は放射能の黒い雨が降るよ。
外に出ちゃダメだよ、死んじゃうよ。」
私の話を聞いたその子はみんなに私が話した内容を広めた
すぐに広まってしまった
もちろん大人達の耳にも入った
さすがに大人達は、黒い雨は降らないだろう、という意見だったと思う
でも雨に結構な量の放射能が含まれるようになるという話は信じていたようだった
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