第34話 ダンジョンラッシュ
「エロオ! 丁度いい所にいるじゃないか。アタシと一杯付き合いなよ」
ミュウちゃんの家を出て自転車で移動していたら、女戦士のエマさんに声をかけられました。これから教会に隣接された司祭館に行って、墓守ギャル娼婦のルビーとラヴィとセックスして功績値を稼ごうと思ってたんですが、大事な戦力として確保しておきたいエマさんの誘いは断れませんね。
「僕もエマさんに聞きたいことがあったので、ぜひお供させて頂きます」
自転車のことをあれこれ聞かれながら向かった先は、この村で唯一経営されている酒場です。村のど真ん中にある教会と村の入り口を繋ぐメインストリートに居を構えているのですが、僕の店の隣の隣だったりします。
酒場に入ると、昼間だというのに10人ぐらいの客がいました。
鍛えられた高身長のビキニアーマー姿に威圧されたのか、ちょっとざわつく店内を奥に進んでテーブルついて注文すると、エマさんは用件を切り出します。
「アタシとの約束は憶えてるだろ。そろそろ娘を抱いてやっちゃくれないかい」
はぃぃぃいいいい?
あなたの娘さんなら、昨日いたしたばかりじゃないですか。
しかも、こっちの都合はお構いなしで拉致監禁の強チンでしたよ。
「エリーさんとは、昨日の午後に種付けさせて頂きましたけど?」
「何だってぇっ、そりゃ本当かい?」
「間違いありませんよ。エリーさんから聞いてないんですか」
「あの子は一言もそんなこと言っちゃいないし、そんな素振りも見せてなかったよ………照れくさくてアタシには言えなかったのかねぇ」
いやいやいや、あの肉食獣は照れるなんてガラじゃないでしょ。
拉致って強チンしたことを知られて怒られたくなかったんだろうなぁ。
あまり深く関わりたたくないんで、適当に話を合わせておきますか。
「きっとそうでしょう。親には言いにくいものだと思いますから」
「そうだね。ま、ともかくご苦労さん。今後も孕むまで面倒みておくれよ」
「………努力はしてみます」
「ああ、頼んだよ。それから話は変わるが、聞いたよォ……アンタ、レジーの足を治したんだってね! しかも、男の機能まで復活させたっていうじゃないか」
「ええ、たまたまですけど、上手く治療できて良かったです」
「一体どうやって治したのさ?」
「母国の医学書に載っていた通りにやっただけです。それが、たまたまレジーさんには効果がありました。他の人ならダメだったかもしれません」
「へぇ、そうだったのかい。だけど、レジーにとってもこの村にとっても僥倖には違いないさ。アンタ、良くやってくれたよ」
「本当に治ってくれて良かったです。セーラさんもすごく喜んでくれましたし」
「そうだろうねぇ。レジーのことはずっと気にかけていたようだから────アタシの話はこれぐらいさ。それでアンタが聞きたいことってのは何だい?」
聞きたかったのは、既に話題に上がったエリーさんのことでした。
一体どういう教育をしてるんですかと詰問しようと思ってたんですけど、妙な展開になったんで今回はスルーしましょう。
でも、せっかくの機会だから、いろいろ別件の情報を仕入れるとしますか。
「果樹園を荒らすダイオウコウモリの件です。ふと思ったんですが、冒険者を雇わなくても、エマさんや先日の猟師たちなら討伐できるんじゃないですか?」
「そいつは難しいね。私は見ての通りパワータイプの剣士なんでね、地上専門だよ。空を飛んで逃げる相手にゃ手も足も出ないさ」
「そうですか。でも、猟師の彼らなら何とかなりませんかね?」
「アイツらは毛皮ハンターだよ。獲物は四つ足専門の罠猟師ってやつさ。二足魔獣にも対応できるが、飛び道具は使わないから有翼魔獣にはからっきしだね」
「なるほど。専門外なら仕方ないですね────それから、エマさんのほうも僕に力を貸してくれるという約束を憶えてくれてますか?」
「当然さ。あれは約束なんてもんじゃなくて誓約だからね。必ず果たすよ」
「実は10日後に僕の店の改装が終わるので、遅くとも20日後には開店する予定です。そこで、大きな取引のある日にはエマさんに護衛を頼みたいのです」
「そんな簡単なことでいいのかい。もっと大変なことでもいいんだよ?」
「いえ、商人の僕には取引が一番大事ですからぜひお願いします」
「分かったよ。私に任せときな」
「有難うございます────あと一つ、エマさんは冒険者だと聞きましたが、この村にギルドを復活させるにはどうしたらいいでしょうか?」
「アンタ、冒険者ギルドを再建させる気なのかい!?」
「はい、常に冒険者たちにいてもらって、誰もがモルザークへ安全に行けるようにすれば、男不足も解消されて村の人口も回復すると思うんです」
「まったく、セーラもとんでない男を捕まえたもんだよ────だけどね、そいつは順番が逆さ。ギルドってのは人が多いところに設置されるもんなんだ。まず先に人口を回復させて村から町に再昇格させないと、ギルドも来ちゃくれないよ」
「そういう仕組みですか。確かに理に適ってます。でもこの村には厳しい現実ですよね。農業と商業を活性化して仕事を増やす予定ですが、急に移住者は増えないでしょうし………何か爆発的に人口が増える方法ってないでしょうか?」
と言ってみたものの、そんな都合のいいものがあるわけな────
「あるよ」
あるんかーい!
「何ですかっ? それって一体どんな奇跡なんです?」
「ダンジョンラッシュさ」
「ダンジョン……ラッシュ………?」
「この村の周辺でダンジョンが見つかれば、冒険者たちがわんさと集まってきて、それ目当てに商人や娼婦も集まってくるって寸法さ。当然、ギルドだって速攻で出張所を作るよ。ここは町どころか、ダンジョンシティーになるだろうね」
「それは夢が広がりますね! この辺にダンジョンってありそうですか?」
「まずないね」
ないんかーい!
「そこを何とかなりませんか。新しく作るとこかで?」
「ここは割と海に近いからドワーフたちも近寄らないんだよ」
「ドワーフ? もしかしてダンジョンってドワーフが作ってるんですか?」
「常識だろ。あれだけの施設を地下や山の中に作れるのは彼らだけさね」
「だけですか。では、ドワーフと交渉して作ってもらうってのはどうでしょう」
「アンタ何言ってんだいッ、ドワーフの言葉なんて話せる人間はいやしないよ! 向こうだって同じさ。交渉なんて最初から不可能ってもんだよ」
話せないんじゃ、ワンチャンすらないじゃないですかぁ。
ダンジョンラッシュ………儚い幻でしたねえ。
こんなことなら知らないほうが良かったですよ。
「………あのぅ、結局この話の意味は何だったんですか…?」
「大きな野望を持った商人にしては察しが悪いね。私が言いたいのはさ────
人ってのは人がいる所に集まるってことだよ」
うーん、一理ありますね。
つまり、まず最初に何でもいいから人をかき集めろってことかな。
「肝に銘じおきます」
僕は素直にそう言って、この話を締めくくった。
その後は、軽い世間話を少ししてから酒場の前でお別れました。
「セーラ様の生理は来週からでございます」
夕暮れ時になっていたので、酒場から真っすぐに屋敷へ戻った僕は、日本へ帰る予定日をいつにするか考えていました。
聞けばこの国の季節はちょうど春に入ったところだというじゃないですか。
深夜には氷点下を超える寒さになるから、まだ冬かと思ってましたよ。
となると、トウモロコシ栽培に必要なものを買ってくる必要があるのです。
そこで、どうせならセーラさんとエッチできない時に帰ろうかなと……
「すいません、来週というと何日後になりますか?」
「今日が3月4日の風曜日ですので、3日後の3月7日からですよ」
ふむ、それじゃあ僕も3日後に日本へ帰るとしましょう。
今度は1週間ぐらい準備期間が必要になりそうです。
持ち帰った銀貨をどこかで売りさばいて、トウモロコシの種や肥料、農具を買わないといけませんから。あ、それらを積んで運ぶリヤカーも要りますね。
「ありがとうございます。ちなみに、マルゴさんは?」
「わ、私ですか………三週間後になります……」
うぉぉおおおお、羞恥で身をくねらす爆乳メイドがたまらんです!
でも我慢しないと。夕食前で忙しい体ですからね。
よく憶えておきますと耳元で囁いてお尻をひと撫でしてからマルゴさんを解放しましたが、去り際の嬉しそうな表情が素敵すぎて惚れてしまいそうです。
日本へ帰る日までの丸二日間は、比較的に大人しく過ごしていました。
1週間(この異世界では8日弱)ほどいなくなるので、新たな女性に手を出して下手を打った場合、しばらくフォローすることができなくなると判断した結果です。
という訳で、セーラさんとマルゴさんと重点的にエッチしてました。
その他では、エリーにまた捕まって1回やらされたくらいです。
帰る際にベルちゃんとミュウちゃんに1週間後の夜9時に再召喚してほしいと頼みました。賢いミュウちゃんが付いてるから今度も大丈夫のはずです。
チョコパンとラムネを必ず持ってきてと念を押すベルちゃんが可愛い。
お仕事頑張って来てくださいねと微笑むミュウちゃんが尊い。
不意に強い寂しさが襲ってきました。
ほんの1週間だというのに別れの辛さに目頭が熱くなってきます。
ベルちゃんを急がせてさっさと転移してもらいました。
いい大人が子供に涙なんて見せられないですからね。
さあ、気を取り直して、日本でやることをやらないと。
まずは、背中のリュックに詰めた銀貨を上手いこと売りさばきますか!
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