第21話 目隠しプレイ
「エロオ!ここが広くていいよ! うちにも近いから遊びにきやすいし!」
モルザーク市に行くことをセーラさんに相談した翌朝、僕たちはこの村で開くお店の物件を探しに中心地へ来ていました。
かつて町だった頃には賑わったメインストリートに立ち並ぶ石造りの建物は、主たちを失って多くが空き家となっています。
その中の一つにピンと来て内見していると、ベルちゃんが素直で本音ダダ漏れの感想を言ってくれたところです。ふぅ、遊びに来る気マンマンでしたか。
「チョコパンとラムネは売りませんよ」
「えーっ、どうしてそんなイジワルするんだよー?」
「パンは日持ちしないし、ラムネはガラスが問題だ。それに他にもちょっとね」
「……エロオさんが美味し過ぎるパンを売ったら、パン屋のビクトルさんが困ってしまうでしょ。他の人のことも考えなさい、ベル」
「そういうこと。だけど、ベルちゃんたちが食べる分は、ちょくちょく仕入れてきてあげるから、それで我慢してよ」
「やった、約束だからねエロオ!」
「それよりもベルちゃん、ここはエロオお兄さんが働くお店なんだから、遊び来たりしたらお仕事の邪魔になっちゃうわ」
「大丈夫! ボクもミュウちゃんといっしょに手伝うから!」
本当かなぁ。すぐ飽きてミュウちゃんを遊びに誘う姿が目に浮かぶよ。
ただ、ベルちゃんの言う通り、ここは広くて屋敷にも近くて便利ですね。
一階はぶち抜きの店舗、二階は大小3つの部屋に台所と風呂とトイレ、さらに屋根裏部屋までアリ。店内はコの字型の長いカウンターに囲まれた広い店側のスペースが特徴的で、僕の目的に適してる。うん、決定です。
「キャシー、ここに決めるよ。手続きはどうしたらいいかな?」
「あ、私のほうでやっておきます…」
「ありがとう。助かるよ」
感謝の印に尻揉み10回を実施しますね。
「………アンッ…どう…いたしまして……ンンッ」
ムフフフフ、僕のボディタッチがクセになってきたようですね。
明らかに当初より感じやすくなってます。
今晩いけるかもしれません。仕掛けましょう────レッツ・夜這い!
商売の拠点となる物件を決めた僕たちは、大工のクルトの所へ行き、店舗の補修を依頼しました。屋根や床、カウンター、商品棚などを直すためです。
その後、屋敷へ戻って昼食をとりながら、店舗の件をセーラさんに報告すると、彼女からも護衛の手配ができたので予定通り明日、モルザーク市へ出発できると伝えられました。そうと決まれば、僕も明日の準備を始めましょう。
午後からは、モルザークへ持って行く荷物の整理、道中での危険に際してのイメージトレーニング、ベルちゃんの家庭教師などをやって過ごしました。
そして夕食後、キャシーが入浴を終えたタイミングで直ぐに夜這いスタート。
明日は早朝からの出立で夜更かしできないのでこの時間にGOです。
ノックもせず、キャシーの私室に入りました。
ロリータファッション的なフリルのある白いネグリジェ姿の婚約者は、一瞬驚いた表情をしましたが、覚悟を決めたように「どうぞ」と小さな声で言いました。
了承を得た僕は、喜び勇んで突撃し、激しいキスを降らせると、お姫様抱っこでキャシーをベッドへ運びます。そして、ネグリジェをたくし上げてパンツを脱がせ、秘所に顔を近づけたその時でした。再び、寸止めされたのは。
「今夜もダメなの……?」
「ごめんなさい…私……やっぱりムリです…こんなの………できない…」
今回も何故ムリなのかどうしても理由を教えてくれません。
かといって、以前言われたように罵倒しながら犯すわけにもいきません。
僕にできることは、すごすごと退散することだけでした。トホホ…
「ホント何なんですかこれは? ヒロインとエッチしようとしたら、必ず良いところで寸止めとか、ラブコメのお約束そのものですよ。まったくもぉ」
お借りしてる自分のベッドルームに戻った僕は、一人悶々としながら愚痴を吐き出してました。ハァ~、一体キャシー攻略の糸口はどこにあるんでしょうか。
スキル「フラグ破壊」がラブコメのお約束もぶち壊してくれたら……
────コンコンコン
んん、誰か来たみたいですね。
どうぞ、と声をかけると、メイドのマルゴさんが入ってきました。
「ブレイクチャンス!」
急に大声を出されて何事かとマルゴさんがビックリしています。
でも、ビックリしたのは僕も同じですよ。
だって、フラグ破壊が発動した証の赤いビックリマークが、マルゴさんの頭の上に出現してたんですから。これはもしかするともしかしますよ。
期待感にドキワクしながら僕はキーワードを呟きました。
「プロミスブレイカー」
『フラグを壊しますか? <はい> <いいえ>』
空中に浮かび上がったタッチパネルの<はい>を迷わず押しました。
赤いビックリマークが消えましたね。これでフラグが折れたはずです。
果たして、これでキャシーとの寸止めループが解消されて最後までいたすことができるんでしょうか?
鍵となるのは、当然、ここにいるマルゴさんですよね。
さあ、お願いします。僕とキャシーのキューピッドになって下さい!
「キャサリン様と首尾よく同衾できなかったみたいですね」
イエス! いきなり向こうからキャシーに触れて来たっ。これはいける。
「そうなんです。どうして拒まれるのかサッパリ分かりません────」
マルゴさんに、これまでの経緯を包み隠さず赤裸々に語っていきます。
最後まで口を挟むことなく聞いてくれた心優しいメイドさんは、しばらく目を瞑って考えた後、何か思いついたような顔で不可解な行動に出ました。
「エロオ様、このスカーフをお使い下さいませ」
部屋のタンスの中から取り出したおよそ75センチ四方のリネンの布地です。
これまた理由がサッパリ分かりません。
「これを使って何をすればいいんでしょう?」
「目隠しです」
目隠しっ!?
答えを教えてもらったのにまだチンプンカンプンです。
普通のセックスさえ拒まれてるのに、目隠しプレイなんてソフトSMならOKなんて有り得ないでしょ………あ、そうえいばキャシーにはドM疑惑があったな……ともかく、女心はマルゴさんのほうが詳しいですからアリなのかも……
「このスカーフをキャシーの顔に巻いて目隠しすればいいんですね?」
「そうではありません」
違うんかーい!
もぉ何が何だか分からないですよ。
1から10まで全部説明してください、と情けない表情と視線で伝えました。
「目隠しをするのは、エロオ様の方です」
「僕がするんですか? 一体何のために?」
「私も女ですから、キャサリン様のお気持ちを察することはできます。きっとお嬢様は今、エロオ様に嫌われたくないと思っておいでなのです」
「え、それならどうして拒むんです。セックスをすれば、もっと深く繋がり合って互いの好感度も高まるじゃないですか」
「それは、殿方の思考でございます。キャサリン様のような乙女は初体験においてこう考えておいでです。好きな男性の前で大きく股を開いたはしたない姿を見せたくない、不格好な秘所を見られて気味が悪いと思われたくない、行為中に快楽でよがり狂った醜い顔を見られたくない……嫌われたくない…」
「なるほど。それで目隠しということなんですね」
「はい、それにキャサリン様は………人六倍大きな胸を気にされております。恐らく、エロオ様に一番見られたくないのが行為中に激しく揺れるお胸かと…」
あぁ、それ僕が一番見たいやつです!
でも我慢します。揉むだけで感触だけで我慢しますとも。
「ありがとうございます。キャシーの気持ちは分かりました。早速、このスカーフで彼女を安心させて、男子の本懐を遂げてきます!」
「……エロオ様のご成功を心からお祈りしております」
あれ? 慈愛に満ちたマルゴさんの笑顔が一瞬だけ悔恨に歪んで見えた。
何か気にかかることがあるんでしょうか。
というか、そもそも僕の部屋へ何をしにきたのですかね。
「あの、もしかしたら僕に何か用があったんじゃないですか?」
「いえ、私のことなど気になさらなくて結構ですので……」
「ダメです。このままだと気になってキャシーとの初体験にまた失敗してしまいます。お願いですから正直に話してください」
「………実は、お情けを頂きに参りました…」
お情けって、僕とエッチしに来たんですかっ!?
「それはまた、どうして………?」
「昨日、セーラ様と三度性交渉をもたれたエロオ様は、一度他の女性と行為に及ばないと再びセーラ様に子種を注ぐことができません。ですので、私がお相手するようにと命じられて参りました……」
マジですかぁぁぁ。
ということは、フラグ破壊のスキルを使わなかったら、マルゴさんルートに突入してたってことですよね。あぁ、失敗しました。下手こきました。
いや、キャシールートに入ったんだから、決して失敗じゃないんですけど、何なんでしょうねえ、この喪失感は。心にポッカリ大きな穴が開いてますよ。
だがちょっと待ってほしいんです!
これ、まだ選択の余地がありますよね。
即効でマルゴさんを口説けば、素直に応じてくれそうな気がします。
ゆっくり考えてるヒマはない。ASAPで選ばなくては。
地味子な爆乳JKと母性的な爆乳メイド…………
今すぐものにしないといけないのは、どっち!?
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