第9話

まだまだ春には遠い冬の季節。ウナネではいつもどおりの日常があった

今日は休日で広美と明子はのんびりリビングに。これもいつもどおりのことであった

明子は庭の手入れを。広美はスマホでソシャゲをしていた。のほほんとした日常が一番いいと思ってる2人であった

手入れを終えると明子はリビングに戻っていた。そんな明子を見て広美は言う

広美「ねえ明子。このウナネってどれくらいの人に出会えるんだろうね?」

急に不思議なことを言い出した。明子は反応する

明子「もしかして会ったフウカやコウリさんのこと言ってるの?」

そう言うと広美はスマホを見るのを止めて明子の顔を見る

広美「だって、色々な人に会ってるじゃん。フウカのこと知って龍人知ったしコウリさんを知って兎人も知った。そんな感じよ」

なるほど。このジパングの固有種族に会ってもしかしたらもっと会うかもしれないと思っているのだろうか

明子「そうね…ウナネもあまりいないとは言えど決してど田舎では無いわ。だって都会の一部だもの。秘境とは言われているけど…」

明子が言うと広美はソファから立ち上がる

広美「もっとお友達増やしたいわ!そしてもっとこの地域を知りたい!そんな気分だよ」

お友達を増やす。確かにそれは全然悪い話ではない。だが会えるだろうか?

明子「うんうん。フウカやコウリさんを通して会ってみる…というのも手かもしれないね」

そう言うと広美の目が輝きをはなった。やはり人付き合いの良い人。そんな前向きな人と結婚できて本当に良かったと明子は思う

広美「そうしよう!よーし!今日は何もしない」

ガクッ。宣言したのに今日は何もしないのか…明子の肩が落ちた


一方。ここは次代夫堀公園。ここでは休日なのか見学する人が多かった

江戸時代から伝わるこの公園。ひと目見ようと色々な種族が集まってここへ来ていた

のんびりとした空間で、どこか懐かしい。大きい公園というわけではないがウナネでは憩いの場として存在していた

そんな正門前から既に見学を終えた2人組がいる。フウカとコウリだ。今日も2人は仲良く歩いていた

元々気に合う同士の2人。もちろん前に会った広美と明子だって友達である。人間との友情…なかなか難しい種族間の違いも一切ない

フウカ「どう?この公園?」

コウリ「うん。とてものんびりした場所で良かったよ。案内してくれてありがとうフウカ」

そう言うと自転車の鍵を開けて帰ろうとしてた

フウカ「アメスタに行くかい?またバッティング勝負しようじゃないか」

コウリ「あ!いいねえ!今度も勝つよ!」

フウカ「負けないよ!野川沿いと通っていけばすぐだ。さあ行こう」

しかしここはまだ公園内。自転車を押して歩いていた

ちょうど田んぼのある場所だろうか。2人が歩くとベンチに座っている人がいた。フウカが気づく

空を見上げ、のんびりした…角のある人物だった。もしかしたら…フウカはこの人を龍人だとわかった

恐らくフウカ以上の身長だろう。髪色は白なのか銀なのか。ショートヘアでそこまで可愛いとは言えない服を着ていた

そのベンチに座っている龍人の近くまで行くと彼女が反応する。こちらを見ていた

?「…おー?龍人ー?我と一緒ではないかー?」

話しかけられたのでフウカは喋った

フウカ「そうだよ。あんたも龍人じゃないか」

コウリ「龍人がここに…!?」

フウカは冷静に反応するがコウリは驚く

?「ほー?なかなかー。いい体格してるなー?お主らはなんというー?」

名前を聞かれた。当然フウカとコウリは答える

フウカ「あたしは外龍角フウカさ」

コウリ「私は日下部コウリと言います」

2人が言うとその龍人が言う

?「我はー。王月龍オコトー。カチトの妹だー。勝利を司る龍人の一人だー。お主はー。フウカとコウリかー」

その名前を聞いてフウカはあれ?と思った。カチトに妹が?しかも口調もやけに似ている。姉妹揃って勝利を司るとは…

フウカ「あんたあのカチトの妹だったのか!」

コウリ「カチトさんって確か今マドカさんのとこにいる龍人だよね?」

コウリは言うとフウカは顔を向く

フウカ「そうだよ。今はマドカと一緒にいる。だが妹の存在は全く知らなかった。こんなウナネにいるなんて!」

ここまで言うとオコトも言う

オコト「そうだー。カチト姉はー。マドカさんと一緒ー。だがー我はー。このウナネ地帯に住んでいるー」

コウリは思ったがまさか有名なカチトさんの妹とは…!と思った。オコトは言うとすっと立ち上がる

オコト「ここで龍人に会ったのはー。何かの縁ー。友達になろうぞー」

そう言うとオコトは握手を求めていた。断る理由なんてない。フウカは握手をした

フウカ「ああ。よろしくなオコト!」

ここで龍人同士が友達になった。これは有り難いことだ。フウカに握手したあと、コウリにも握手をしたオコトだった

フウカ「…ところでオコト。あんたここで何してるんだい?」

フウカが言うとオコトは空を見上げて言う

オコト「我はー。この場所をのんびり散歩するのがー。趣味のひとつー。案内できるほどだぞー」

ここらへんを知ってるとはよく分かっているのだろう。オコトは更に言う

オコト「我のもうひとつの趣味ー。スポーツ観戦だったりスポーツをすることー。カチト姉はー。体をあまり動かさないー」

なるほど…スポーツ観戦とは…フウカもコウリも一緒の趣味だ。フウカは言う

フウカ「その…特に大好きなスポーツってなんだ?」

そう言うとオコトはすぐ答える

オコト「野球だー。我ー。野球がとても大好きー」

なんだ!ここまで一緒とはびっくりした。まさかここで偶然会って趣味が一緒とは。できすぎた出会いである

フウカ「なんだ!あたしもオコトと一緒だよ!」

コウリ「私もオコトさんと同じく野球が大好きさ」

2人が言うとオコトはびっくりするような、嬉しい表情をするような顔になる

オコト「おー?そうかー。嬉しい限りだぞー」

フウカ「なああんた。暇だろ?アメスタに行ってバッティングしないかい?」

そう言うとオコトは喜ぶ顔をした

オコト「おー!行きたいー!バッティングー。するー!」

コウリ「やった!じゃあ行こうよ!」

オコトが加わり3人でバッティングセンターへと向かうことになった


ちょっと経った時間帯…今日は何もしない!と宣言した広美だったが、なんとなくアメスタへ来ていた。当然明子もいた

そんな広美を見て明子は言う

明子「ね、ねえもしかしたら野球に目覚めた?」

広美「だって面白かったもん。明子はきちんと見てなかった?ボールを打つ快感っていうのを!」

う、うーん…野球なんぞ簡単そうに見えて難しいスポーツだと思うが…

広美「低速の球を打ちたい!行くわよ!」

明子「わかったわ」

半分あきらめの態度で2人は入っていった


カキーン!!

豪快かつボールがバットにあたって吹っ飛んだ。それを見ていたフウカとコウリは呆然とする

このオコトという存在。ただの野球好きではなかった。普通にバッターとしてはしっかりしたフォームで打っていた

そんなオコトを見てフウカとコウリの目にハイライトが消える。あまりにも上手すぎて月とスッポン並の感覚だった

10球を終える。10球中全部打った。フウカとコウリは顔を見合わせて言う

フウカ「…なんだいこれ」

コウリ「上手すぎて私らが下手くそに見えてきた」

バッティングを終えたオコトが近寄って言う

オコト「どうだー。我のバッティングはー」

もうべた褒めするしかないバッティングだった

フウカ「あんた最高だよ!どんだけバッターに向いてるんだ!」

オコト「おー。実は野球経験者でー。バッティングに関してはー。とても上手くできるー。ただそれだけー」

ただそれだけ…十分な素質のある打ち方をしてフウカとコウリは共感するしかなかった

フウカ「ちなみに…ポジションはどこだ?」

そう言うとオコトは笑顔で言う

オコト「最近やったとこはサードだー」

コウリ「サードかあ…」

コウリが言うとオコトは持ってたバットをもとに戻し言う

オコト「お主らのー。バッティングを見たいー」

フウカ「わ、わかった。コウリ、あんたがいけ」

そう言うとコウリは慌てて言う

コウリ「だ、だってあんな完璧なフォームのバッティング見て私のバッティング見たらオコトさんがっかりするんじゃないの!?」

フウカ「あんた兎人だからってそんななよなよしなくていいだろ!ほら、行って来い!」

コウリ「でもー!」

2人がちょっとした口論になってると広美と明子がやってくる

広美「おーい!フウカ!コウリさーん」

3人はその声に反応して顔を向ける

フウカ「おや。広美に明子じゃないか!」

コウリ「こんにちは2人さん。偶然ですね?」

バッティングをする前の場所に5人はいた

オコト「ほー?お主らの友達かー?」

広美は見た。龍人の角をしていて大きい。間違いなく龍人だった

広美「新しい龍人さん?」

そう言うとオコトは自己紹介する

オコト「我はー。王月龍オコトー。人間達よー。ここで会ったのも何かの縁だろー」

明子「はじめましてオコトさん。私は上村明子。こっちはパートナーの広美。よろしくね」

オコト「おー。よろしくー。パートナーかー。とても良き2人だー」

そう言うとオコトは2人に握手した。広美は思ったがとても大きい龍人なので手もでかい。まるで包まれるかのような手だ

フウカ「…で、あんたたち何をしにここに?バッティングでもするのかい?」

明子「広美が前に貴女達と一緒に練習して野球に目覚めてしまってね…」

ここまで明子が言うと広美が言う

広美「バットを振る練習でもしようかなって!」

なるほど。広美が言うと3人は思う

フウカ「ほう。好きになってくれたのかい?」

コウリ「なら今後も練習に付き合ってもOKだね?」

オコト「そうかー。ならー。低速の打球ー。してみろー」

そう言われると早速広美はバッターボックスに入る。コインを入れて打席に立つ

球が飛んだ。広美はタイミングよくバットを振る!カキーン!広美は最初の球で打っていた

フウカ「もう早速打ってるよ」

コウリ「やっぱりヒューマンって飲み込みが早い種族だなあ」

2人が感想を述べるとオコトは黙って広美のことを見ていた

オコト「…」

明子「オコトさん、どうかしら?」

オコト「ちょっとー。ブレブレなー。フォームだなー。だが打ててるだけでもー。十分だー」

そう言うとバッターボックスにいる広美は打っていた

結局10球中7球を打って広美としては満足な結果となった。終わった後広美は4人のところに行く

広美「どうだった!?」

オコト「そうだなー。広美ー。スイングするときー。もっと瞬間的に振るといいぞー。更に打球が飛ぶぞー」

広美「なるほど。わかったわ」

ここまで言うとオコトは思い出したかのように言う

オコト「そうだー。我の友達にー。野球に詳しい人がいるー。種族はアンデッドでー。コーチ兼選手だー。なかなか良い人だぞー」

フウカ「アンデッド?不死のことか?死術師に関係してるか?」

オコト「いやー?別に関係ないぞー。我が伝えればー。きっともっと上手くなるはずだー」

明子は思ったがなんだかすごいことになっている。野球をちょっと齧っただけでこんなことになるとは…

広美「うーん。まだ完全にのめり込みしたわけじゃないけど…」

しかし広美の心の中では学びたい気持ちがあった

コウリ「いいじゃないですか。詳しくなりましょうよ」

広美「…ええ。ならやってみるよ。厳しい人は勘弁してほしいけど」

オコト「大丈夫だー。厳しくないー。我が保証しようー」

よかった。なら安心だ。そう思った広美と明子だった


帰り道。フウカ、コウリ、オコトは別々で帰り明子と広美は一緒に帰る

今日はまた新しい人に出会い本当にこの場所はまだまだ出会えるんだなあとは思った

広美「オコトさんだなんて龍人初めて見たよ。それになんだか気の抜けるような口調だったし」

明子「そうね。でもまた楽しみが増えたわね」

広美「うん。この秘境に住んでよかった。嬉しいことが多いもの」

明子「ええ。広美、よかったわね」

そう言うと自宅へと帰った2人だった


ウナネの夕方近い時間

今日はまた新たな人に出会えて嬉しい気持ちだった



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4Season4Legacy 都会の秘境 緑樹ユグ @yugu1120

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