第7話
年明けのウナネ
相変わらず静かな雰囲気のあるこの街はいつもどおりの昼を迎えた。寒くて、心地いい日差しが降り注ぐ
広美、明子は家でゆっくりと昼間を過ごしていた。広美はスマホでゲームを。明子はテレビを見ていた
スマホでゲームは今は新年だから様々なイベントがあって楽しい。広美はとことんプレイをしていた
一方の明子はそんな広美を見つつテレビで番組を見ている。正月なので面白い番組しかやっていない
そんな昼下り。明子はここまで時間を潰してふと思ったことがあった。広美に向けて言う
明子「ねえ、広美?」
広美「…」
全然反応ない。スマホのゲームに夢中なのだろう。明子は広美のところに近寄って耳元で声を言う
明子「広美!」
広美「わわわ!あわあ!」
さすがに反応する。広美は声の主に顔を向けた
広美「な、何!?っていうか耳元で大きい声出さないでよ!」
そう言うと明子は反論する
明子「だってスマホに集中しちゃって普通の声じゃ届かないだろうし耳元で言ったのよ」
広美「う、うう…」
広美はあまり反論できなかった。そりゃ集中したら声なんか一切届かない。そんな自分に反省するしかなかった
広美「ご、ごめん…で、何?」
ようやく本題に入れた。明子は言う
明子「この近くに神社があるのよ。小さい神社だけど、初詣に行きましょう?」
神社。そう言われると広美はわかったそぶりをする
広美「もしかしてウナネ氷川神社?」
明子「よくわかったわね?そうよ」
明子が言うと広美が説明する
広美「ランニングしてるときにウナネ氷川神社に着いてフウカに会ったんだよ?」
明子「あらそうだったの?なら話が早いわ。行きましょう?」
広美「うん!行こう!」
そう言うと2人はしっかり防寒をして家を出た
まだ日の傾きが無い時間帯のウナネ。2人は手をつないで歩いていた。やはり寒いのか手をつないだほうがいいのかもしれない
家からまずは水道道路へ。水道道路に着くと2人は迷わずコマエ方向への道を歩き始めた
てくてく…あるくと歩道の歩幅があまり無いことに気づく。ずっとこれなのだろうか?
広美「ねえ明子。この水道道路って歩幅があまりないね?」
明子「昔からずっとこれよ?人1人通るだけで自転車と言ったものは道路を通らないといけないの」
広美「うーん。ちょっと不便」
明子「まあコマエに行くのなら水道道路よりも別の道なんてたくさんあるわ。ある意味ここは車で通ったほうがいいのよ」
広美「ほーん。そっか」
そんな会話をしつつ2人はコマエ方向への道を歩いていた
ちょっと歩くと墓地っぽいものが見えてきた。最近新調したばかりだろうか。きれいな木材で作られた場所に到着した
広美「ここは…」
明子「常光寺。小さいお寺よ」
2人の着いた場所には駐車場、その隣に墓地があった。しかしここは神社では無く寺
広美「スルーの方向性?」
明子「そうね」
そう言うと2人は常光寺をスルーするのであった
寺の脇にある道を行き、道なりに進んでいく。元々広美はここを通ってるためわかっている
明子は思ったが広美はこの街、ウナネをわかってくれてる気がして明子は嬉しい気持ちになっていた
そして十字路に入った。ここまで行くと真っ直ぐな道はキタミへ、右は寺。そして左は目的地だった
広美「ねえねえ右のお寺って…」
明子「観音寺って言うわ。寺ね」
広美「ふーん。寺、多いね?」
そう言うと明子は目的地、ウナネ氷川神社の方向に顔を向ける。広美もわかっていた
何も言わずに2人はウナネ氷川神社へと足を運んだ。あと少しである
明子「到着ね!」
広美「わー。夜とは違う雰囲気ね!」
ウナネ氷川神社に着いた。ここは静かな場所である。鳥居、狛犬といるが決して破損なんか無い、きれいな場所だった
それでいて広々としていてたまにお祭りと言ったものがここへ開催されるほどの大きさだった
明子「じゃあ早速本殿に行きましょう」
そう言うと2人は鳥居をくぐり本殿へと向かう。その向こうに誰か人がいた。あの大きい体格をした人、間違いはなかった
しかし今日は2人いる。フウカともう一人は誰だろうか?そこまで近寄るとお祈りが終わったのか2人は広美と明子に顔を向けた
フウカ「おや!広美に明子!あけましておめでとう!」
明子「ええ。おめでとうフウカ」
広美「今年もよろしくねフウカ!」
そう言うとフウカの隣にいる人を明子と広美は見た
だいたい身長161センチだろうか。あまり大きいわけではない。そして頭に兎の耳があった。間違いなく兎人であった
髪色は黒で瞳の色は赤。兎だから瞳の色は赤なのは決まっているだろう。表情は優しげで良い人そうだった
?「フウカ。彼女たちの友達?」
フウカ「そうだよ。前に会ったばかりなんだがすっかりお友達になれたんだ」
?「へ~。フウカよかったねえ」
ここまで言うと兎人ははっと気づき広美と明子の方に向く
?「すいません早速フウカに話していて。私の名前は日下部コウリと言います。こおりじゃないですよ。
ウナネに住んでる1人でつい最近引っ越してきたばかりなんです。ここなら安心して過ごせそう。そんな気持ちで来ました。
どうぞよろしくおねがいします」
そう言うとコウリはべこりと頭を下げる
明子「そうなの。コウリさんって言うのね。私は上村明子。隣の人は上村広美っていうの。パートナー婚なのよ」
広美「どうもはじめましてコウリさん!広美って言います!よろしくね!」
広美と明子も頭を下げる
コウリ「へー!パートナー婚なんて初めて見た!よろしくおねがいします!」
そう言うとコウリはまた頭を下げた
フウカ「君たちはここへ初詣に行くんだろ?さっさとやったほうがいいよ?」
広美「うん!ちょっと待っててね!」
広美と明子は本殿に行きお賽銭箱にお金を入れる
パン!パン!一礼。また一礼。パン!…これが二礼二拍手一礼だったか。2人はどんな願い事を言っただろうか?
終わると2人は再びフウカの元に来た
フウカ「終わったね?」
広美「ええ。明子との暮らしをずっとできますようにって願い事したわ」
明子「私のだいたい一緒ね」
広美「嬉しいよ!明子!」
そう言うとなんだかイチャイチャし始めた。そんな2人を見てニヤニヤしだすフウカとコウリ
コウリ「2人っていつもこんな感じなの?」
フウカ「ははは!元からそうなんじゃないかな」
ここまで言われると2人ははっとする
明子「あ!ごめんなさい2人の世界になっちゃって」
フウカ「いいんだよ。あまり気にするな」
そう言うと4人は本殿を離れて神社の玄関口まで戻る
フウカ「あんたたちはこれから家に戻るんだろ?」
明子「ええ。目的は初詣だからもう帰るわ」
フウカ「そうか。あたしはコウリに用があるからこれで」
広美「うん!じゃあねフウカ!コウリさん。今年もよろしくおねがいします!」
コウリ「はい。よろしくです!」
2人が言うと去っていった。姿が見えなくなるまでフウカとコウリは見ていた。2人が見えなくなったらフウカはコウリに話しかける
フウカ「なあコウリ。あんたの姉…戻ってないのかい?」
フウカが言うとコウリは残念そうな顔をする
コウリ「うん。新年明けたらメールで挨拶したけど、それだけだね。杏里姉さんはミチヤさんに付きっきりで…アーカルド国にいるんだ。
アーカルドって住心地がいいのか、それともミチヤさんに付き添いしたいのかわからないけど、今どういう顔してるのかわからないんだ。
軽くでもいいからジパングに戻ってくれればいいのに、あれじゃあここへ帰宅するなんてできないのかもしれないね」
そう言うとコウリは軽いため息をつく
フウカ「そうか。元々杏里ってミチヤの付き人だったからな。あちこち世界を飛んで実家へは戻ってない。そういうことだね」
コウリ「そう。だから親が言ってたけどたまには戻ってこいって杏里姉さんに言ったけど一切聞いてないそぶりだったね」
杏里はミチヤのその凄まじい力と格闘家という存在に尊敬し、ずっと付いていくと決心したのであった
だからミチヤがアーカルド国に行くときも杏里は妹と親から離れていた。妹であるコウリはそこが寂しかったとのことだ
人は惚れてしまうといつでもどこでも付いて行きたくなる…そんな杏里なのだろう
フウカ「なあ、ストレスあるだろうけどアメスタに行ってバッティングしないか?悩みなんか吹き飛ぶよ?」
コウリ「あ!行きたいです!」
フウカ「よし。じゃあ行こうか」
2人はアメスタに行くことになった
広美と明子は自宅へ戻り今日のコウリのことを話していた
広美「あのコウリさんって人、兎人だったね!久しぶりに見たけどやっぱり兎は可愛い種族だね~」
明子「そうね。兎人はハーフアニマルって種族に近いけどここで独立した種族だからね」
広美「龍人だってなかなかすごい種族なのに兎人だからね!いやーなんかおめでたいことが起きそうだわ~」
そう言うと明子は笑いながら言う
明子「あはは!そうね。めでたいわね。兎って基本可愛いしね」
明子が言うと広美は外を見ながら言う
広美「ねえ明子…今年、次はどこに行く?」
明子「いろいろとあるわ。ここ都会の秘境にはまだ知らないことがたくさんあると思うから」
広美「楽しみよ。明子」
そう言うと明子も外を見ていた
カキーン!
アメスタのバッティングセンターに豪快な音が聞こえた。その球は良い角度で飛んでいった。コウリが打った球だった
そんなうますぎるバッティングでフウカは驚くしかなかった
フウカ「ちょ!10球中9球打ったなんてびっくりだよ!球は早くないけどなんでそんなに打てるんだい!?」
コウリ「え?だってバット握って打てばいいんでしょ?このぐらいできるよ?」
フウカ「こ、このぐらいできる…あたしなんか最初その速さでかなり苦戦したのに…」
コウリ「もっと速さのあるのに挑戦したいな」
その言葉を聞きフウカはすぐに財布を取り出す
フウカ「わかった!次はもっと速い球に挑戦しな!あたしがコイン入れてあげるから!」
コウリ「うん!打ってみる!」
そう言うとコウリは速い球が出る場所に挑戦することになった
ウナネの昼下り
色々な思いがあった。そんな日常だった
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