第5話

秋めいた夜

夏は過ぎ去り、気持ちのいい季節がやってきた。広美と明子は相変わらずここ、ウナネに近くに住んでいた

今日は2人で夕飯を食べて先に広美がお風呂に入った。湯船に浸かるのは心地良いものだ

時刻は夜22時。広美は十分満足したのか風呂を出て身体を拭き、下着姿となる

ふと、風呂場の前にある体重計を見た。そういえば私体重計にしばらく乗っていない…

そう思い広美は体重計に乗る。すると広美は体重計の計測で声を上げてしまった

広美「きゃーーーーーーーーーーーー!?」

その声はリビングにいる明子にも聞こえた。明子は見てたテレビを中断して声のあった風呂場へと向かう

何かあったのだろうか。明子が来たら広美は体重計に乗ったまましゃがんでいた

明子「どうしたの広美!?なんか出た!?」

そう言うと広美は答えた

広美「た、た、た…」

何が言いたいかなんとなく明子はわかった。だが、これは言っていいもだろうか

明子「…夏の間で、体重増加。かしら」

ぐざっ!広美はその言葉で心が切れてしまう。そう。体重が増えた

広美「あ…あのね…私…夏は暑いからってアイス食べたり砂糖いっぱいのコーヒー飲んだりしたから…私…」

これは…言い訳だろうか。だが明子は冷静にしゃべる

明子「そりゃ貴女…働いてるからって間食だったり砂糖いっぱいのコーヒー飲んだら太るわよ」

広美「明子!太るって言葉使わないで!」

困ったもんだ。明子はそう思った。広美はすっと立ち上がり言う

広美「私、ランニングするわ!困ったときは走るに限る!」

そう言うと広美はさっさと風呂場から出てしまった。慌てて明子は言う

明子「広美!今日はもう遅いからやるなら次の日にしなさい!」

広美はその言葉を聞いてるのか聞いてないのかわからないが上へと上がってしまった

太るか…明子も念の為か体重に乗ったら標準な体重をしていた。とりあえず一安心

明子「…私も気をつけないと」

そう思い明子は風呂場から出た


次の日の夜…

広美も明子も家に戻って夕飯を食べていた。その後広美はどこで買ってきたのかジャージ姿になりランニングしようとしていた

シューズもしっかり履いて明子にランニングすることを伝える

広美「じゃ、行ってくるわね」

明子「ひとつ言うけどあまり無理しないでね?やりすぎると足が痛くなって次の日に影響あるから」

広美「わかってるよ~!じゃ!」

広美は家の玄関から颯爽と出た。明子は広美の姿が見えなくなるまで見送っていた

明子「…この地域、野川だったりちょっと離れているけど多摩川あるからまあ、ランニングにはもってこいだけど…」

どういうルートを行くのだろうか。それは広美に聞かないとわからない

広美はえっほえっほとランニングをする。野川を越えて、ウナネ地域に行く

元ひまわり畑があった道路へと向かう。ここの夜は静かだ。そう思い通過する

水道道路に出た。広美は歩道を走りながら一直線にコマエまで向かう道路を走る

しかし広美は思ったがあまり行きすぎてもだめだろうと思い途中お地蔵様のある寺から脇道を通った

ここは…なんていう寺だろうか?そんなこと思いその寺はスルー。さらに脇道を通る

しかしウナネは本当に街路灯があまりない。あると言えばあるが明かりがちょっと心もとない

だが静かなことには変わりない。ここまで水道道路以外は車と人に出会わない

そんな脇道を真っ直ぐ走るとまた右側に寺があった。ここで一旦ストップ

広美はまだ若いのかあまり息切れしていない。寺を確認して思った

広美「意外と寺ってあるのね…」

寺のほうに行ったら行き止まりかもしれない。左側を確認してそっちに走ることにした

また走ってると不思議な空間へと足を運ぶことになった。広美はまたそこでストップした。ここは一体なんだろうか…

不思議というよりもそこだけどこか静寂に包まれた空間だった。広美は持っていたスマホで位置を確認する

…ここはウナネ氷川神社。入り口には石像、石の鳥居があり光もあまり無い。そんな空間だった

そう言えばここはあまり知らない。公園めぐりや民家園めぐりはしたが神社はあまり行かなかった

ランニングをしたせいか体温が上がっている。だが気温が低いので汗は出ていない

一人、女性がここに来るのはちょっと怖いがウナネは基本的には犯罪がほとんど無いに等しい地域だ

広美はランニングを止め、何かに吸い込まれるかのようにウナネ氷川神社へと向かっていた

鳥居をくぐり、本社まで行く。ふと、誰かいたことに気づいた

その人はお賽銭箱の前に居て、暗いのか男性か女性かちょっとわからない。広美は更に近寄った

近くまで近寄るとその人は広美が来たのがわかったのか言葉を発した

?「…なんだい?こんな夜にここまで来るなんて?」

広美はその声で女性だとわかった。しかしまだ姿がいまいち確認できない

その女性は振り向き、ゆっくりと明かりがある場所まで移動した。なぜか広美はその場から動けない

女性がわかった。顔は若く金色のロングをした女性だった。顔がどこか優しい顔をしている

しかし、広美は心で驚いたがまず体型。広美以上の身長をしていた。よく見ると角がある。これは龍人の角?

体型は胸が冗談が無いほどでかく、バインとしていた。その胸の大きさで服が飛び出ていた

腕も太く、足も大きい。それがしっかりわかるような服装をしていた。足が大きいのだからヒップも大きいだろう

確認をしたらちょっとだけ2人に静かな雰囲気があった。その雰囲気を破ったのは龍人のほうだった

?「人間か。ジャージ姿でランニングシューズ履いて、ランニングしてたのかな?」

そう言うと龍人は笑顔になった。広美は言った

広美「あの!もしかして龍人ですか?」

龍人は答える

?「そうだよ。あたしはちょっと最近お参りしてないなと思ってここへ来たんだ」

こんな夜にお参りをするとは…龍人とは結構変わった性格をしているのだろうか?

そう思うと龍人は言った

?「あたしの名前は外龍角(がいりゅうかく)フウカって言うんだ。あんたの名前は?」

名前を聞かれたから答えるしかないと思った広美

広美「わ、私上村広美と言います。つい最近引っ越してここへ来ました」

フウカ「そうか!広美って言うんだね?よくここへ来たね。ここはのんびりとした場所…隠れて住むにはいいところだよ」

フウカが言うと彼女は周りを見渡した

広美はふと思った。オカモト民家園で会った龍人っぽい人はここらへんではいないと断定したのだが…

広美「あの。前に龍人っぽい人に会ってここの一帯には龍人はいないって言ってたんですが…」

そう言うとフウカはきょとんとした顔をする

フウカ「ん?龍人、普通にいるよ?あたしみたくこうやって住んでいるんだ。誰からの情報だい?」

広美「オカモト民家園で…黒い緑の髪色してフウカさんみたく角も生えていて…龍人のような格好をした人でした」

そこまで言うとフウカはすぐに分かった

フウカ「女帝龍マドカだね?彼女、龍人のリーダーで遠くまで来るときがあるんだ。あたしは彼女がちょっぴり苦手でね。

実際ここへ住むときはマドカには伝えずこっそりウナネに住むことにしたんだ。だからマドカはわかっていないんだ」

この風貌でリーダーが苦手だなんて。あのマドカという人物はあまり評判の良くないリーダーなのだろうか?

広美「そうなんですか…。あの人…リーダーだったんだ…」

ここまで言うとフウカは再び笑顔になる

フウカ「ま!龍人だって自由な種族だから人間のあんたは気にすることはないさ。ハッハッハ!」

大声で笑う。その体型なのだからその笑い声も結構大きめだった

フウカ「さ。もうあたしはお参り済んだしあんたもとっとと帰りな」

広美「あ、はい!」

そう言うと2人は氷川神社の道路の前まで来た

広美「龍人様に会えて嬉しい気分です」

フウカ「龍人に様付け?ハハハ!そんな堅苦しいこといわなくていいよ!あたしはただの龍人だから!」

ただの龍人…その体型でただのとは言い難いが…

フウカ「あ。ひとつお願いだけどマドカはまさかまた来ないとは思うけどあたしの存在を隠してくれよ?面倒だから」

まだ会って間もないのに約束をされた。広美は当然約束を守ろうとした

広美「はい!フウカさんのこと何も言いません!」

フウカ「ハハハ!よかった。じゃあね広美。よかったらいつかまた会おう」

そう言うとフウカはゆっくりとした行動でその場を去っていった

しかしその体型だからかずんぐりむっくりな歩き方でなんだか面白かった

広美「…いるんだ。龍人…」

広美もそろそろ帰ろうとして氷川神社を後にすることになった


広美は家に戻る。明子に今日のフウカのことを話した。明子はたいそう驚いていた

明子「へー!いたんだ龍人。それはびっくりねえ」

広美は水を飲みながら話す

広美「でもあの龍人さんすっごいでかくて身体が大きかったし…なんだか私なんかまだマシなんじゃないかなって思ったわよ」

明子「そうなの!ランニング、止める?」

広美「うーん!もっとグラマラスな体型になりたいから止めない!」

明子「んもう無理しないでね?」

そう言うと2人は笑い合って夜を過ごした


一方フウカは自分の家でとある人物に連絡をしていた

プルルル。プルルル

フウカ「…あ、ソトノ?あたし。フウカだよ」

フウカ「…うんうん。どうだい?ハルカと巴は?」

フウカ「…へえそうなんだもう結婚寸前なんだ。でも恐らくマドカ来ると思うからあたし披露宴に来るのは無理だろうと思うよ」

フウカ「うん…そう…だから2人が結婚したらハルカ宛に手紙送るよ。彼女の住所知ってるし」

フウカ「…へえ?あんたは女性と同居してるの?同居じゃなくてただ付き合ってるだけ?そうか」

フウカ「あたしが?ハハハ!無理無理。こんなデブが男性はおろか女性ですら近寄って来ないよ」

フウカ「うん。わかった。とりあえず、あたしは健康だからソトノも身体に気を使っておくれ」

フウカ「それじゃあな。おやすみ」

そう言うとフウカは通話を終える

フウカ「ふう。ソトノは元気そうだしあたしも元気でいられるね」

窓を見て、今日のことを思った

フウカ「…あの広美というヒューマン。なかなかいいヒューマンだったな。また会えたらいいな…」


ウナネの夜

秋が近寄ってすっかり涼しくなった




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