第7話 沙織との再会

その日、二人の男が自宅から忽然と姿を消した。

それはUバンク社長西田義文と元財務大臣武田平蔵

だった。


~~~~~~~

香港の暗鬼の島。

格闘訓練、ピストル射撃、ライフル射撃、

ナイフを持った男との

戦闘訓練を終えた小妹のところに電話があった。

「小妹、どうしている?」

亮が優しく聞いた。


「うん、今久しぶりに戦闘訓練を受けた」

「おつかれさま、それで一文字は?」

「うちの連中が張り付いているわ」

「了解、女好きの一文字の事だ、

夜遊びに出るかも知れない」


「なるほど、それなら得意だ」

「ん?なんだ?」

「うふふ、内緒。ちゃんとやっておくわ」

「了解、頼む」


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「もしもし、お母さん」

小妹が母親の香蘭に電話をかけた

「ああ、春麗元気だったかい」

「うん」

「今、何処だい?」

「おじいちゃんの所」


「本当かい、会いたいわ」

「うん、すぐに行く。お父さんは?」

「もうそろそろ起きる頃よ」

「お願いがあるって言っておいて」

「本当?お父さん喜ぶわ」

電話を切った小妹の母親の

香蘭は手を合わせて天を仰いだ


「あなた」

香蘭は走って夫、趙健徳の所へ行った    

「どうした?香蘭」

「春麗は今からこっちへ来るそうよ」

「ほ、本当か?」

「ええ、あなたにお願いがあるそうよ」

「あはは、それで。何が欲しいんだ!あいつ」

健徳は嬉しそうに笑った。


~~~~~~~~

小妹の乗ったヘリコプターは香港島の

ビクトリアピークの

奥にある白い豪邸の上のへリポートに着陸した。

「お父さん」

小妹は健徳とハグをした


「なんだ、島に行っていたのか?」

「うん」

健徳は小妹を裏の世界に

引っ張り込んだ剛を怨んでいた

「もうあそこへは近づくな、

普通の女の子に戻った方がいい」


「はい」

小妹は健徳に仕事を頼む都合上素直に返事をした。

ヘリポートのからプールの脇を通って

リビングに入ると香蘭が小妹にハグをした。

「春麗お帰りなさい」

「ただいま!お母さん」

「日本はどうだ?」


健徳が小妹を心配して聞くと

小妹は微笑みながら答えた。

「うん、亮が良くしてくれる」

「そうか、彼なら信用できる。9月から大学だな」

「そうだよ、入学手続きも終わった」


「それで今何している?」

「亮が今度オープンするスポーツジムの

インストラクターのアルバイトすることになった」

「何もアルバイトなんかしなくたって」

香蘭が心配して言った。


「ところで何が頼みだ?何が欲しい?」

「お父さんのクラブに来る

日本人の男を調べて欲しいの」

「なんだって、誰の頼みだ?」

健徳は剛の頼みかと思って顔つきが厳しくなった。


「おじいちゃんの頼みじゃないわよ。

おじいちゃんなら自分でやるわよ」

「そりゃそうだ」

「その男、亮の会社を乗っ取ろうとした奴なの」

「本当か?」


「本当よ、とても悪い奴」

「それで亮はその男をどうするつもりだ?」

「それでホステスに何の目的で

香港に来たか聞いて欲しいの」


「それだけか?亮の商売敵なら潰してやるぞ!

それとも香港の魚の餌にするか」

「そこまでしなくてもいいよ」

小妹は健徳が剛と同じ事を

言っている事がおかしくて笑った。


「そ、そうか。分った手を回す。写真あるか?」

「うん、データもあるから」

小妹が健徳にメモリーを差し出すと

健徳は執事を呼んでデータを

出力するように指示をした。

「うちのナイトクラブ4軒に来たらすぐに

ホステスに指示をする」


「ありがとう、お父さん」

「いや」

建徳は娘に礼を言われて照れていた。


「お父さん、亮の父親の宝石店へ行ったわ」

「どうだ?」

「素敵なお店よ日本で一番じゃないかな」

「そうか、じゃあ春麗が入学したら一度営業に行くか」

「うふふ、お父さんが営業なんてセリフ似合わないわよ」


「あはは、久しぶりに一緒に昼飯でもどうだ?」

「うん、糖朝のマンゴプリンが食べたい」

「うふふ」

まだ子供のような小妹を見て香蘭は笑った


~~~~~~~

診療が終わって沙織と食事をしている

最中、亮の元にメールで写真が送られてきた。

「あっくそ!」

「どうしたの?團君」

亮のレストランのテーブルの向かいに座っていた

北川沙織が心配そうに聞いた。


「今、香港からメールが来たんです」

亮が写メールを見せると沙織が写真を見た。

「何?この桶みたいなの」

「これ糖朝の木桶入り豆腐花です。甘くて美味しいんです」


「うふふ、やっぱり変わっていないなあ。亮」

沙織は高校時代の甘党の亮を思い出した。

「沙織さんは変わりました」

「えっ?どんな風に」

沙織は自分の頬に手を当てた


「大人になってそして綺麗になりました」

亮がそう言うと沙織の顔が真っ赤なって

バッグをテーブルに置いた。

「それあの時のエルメスエプリンのバッグですね」

「そう、あの時の約束」

亮は袋から箱を取りだすと沙織に渡した。


「これ、新しいエルメスです。今度はすぐに使えますよ」

「ありがとう、良いの?」

「はい、それなりの所得が有ります。

元気で良かった。沙織さん」

亮は目を潤ませた。


「ごめんなさい、勉強が忙しく連絡が出来なくて」

「僕は秋山さんに彼が出来たと聞いていたので・・・」

「そうか・・・」

沙織は友達の秋山は独占欲の強い

あまり好きでは無かった。


「私から連絡すればよかったんだけど」

 元々文系の私が医学部に入ったものだから

勉強が大変だった」

「それにちゃんとした連絡先

交換してなかったの知っている?」


「あはは、そうかパソコンの

メールアドレスしか知らなかった」

「亮、お医者さんならなくて良かったの?」

「はい、薬学研究で博士号を取りました。

お陰で多くの人を救っています」


「良かったわ。私も頑張ったよ」

「僕は・・・」

亮は沙織に薬剤師になって白血病の薬の

研究をしていたとは言えなかった

「ところで、今何の仕事をしているの?」


「休職中です」

「ええっ!?」

沙織は口を開けて驚いていた

「ああ、1月に怪我をして休んでいました、

そろそろ仕事に復帰します。

そうしたらまた怪我をしてしまったけど、あはは」


「ひょっとしたら、背中にあるガラス

破片が刺さったような傷?」

亮は聞こえないふりをして沙織に聞いた。


「そう言えば彼とは?」

「一つ誤解を解いておくわ。あの日はホテルで

学会が有って同僚と食事をしていたのよ」

沙織は亮の様な素敵な男性と結婚しない

女性が居るのが不思議だった。


「さて、行かなくちゃ」

「お仕事?」

「はい、五島商事の内村社長と打ち合わせです」

「はあ・・・五島商事ね」

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