第5話 天才児

「たぶん、経済テロのミスで」

「分った、彼を守ろう」

「私達は0時45分に着くわ」

「うん、待っているぞ春麗」

小妹の祖父趙剛は触れしそうな声で言った。


~~~~~~~~

「亮、あなたに秘密を教える」

「はい、なんですか?」

「あなたの子の絢香ちゃん、危険なの」

ジェニファーは秘密にしていた絢香の

存在を知っていた。


「絢香が?」

「亮、ハーバード大学に留学中に

精子の提供をしたわよね」

「ええ、教授に頼まれて」

「あの時の子が今4歳」

「ええ、たぶん」


「その時の子供がどうなったと思う?」

「意味が分りません」

亮はジェニファーの言っている

意味が分らなかった。


「あなたの子が一人、他に二人の天才が

あなたの子と思われている」

「どうして僕の子供って分るんですか?

精子は混ぜて使うんじゃないですか?」


「ううん、あなたがあまりにも優秀なので

一人の患者さんの希望であなた単独の

精子を使ったの」

「なんていう事を!」


「三人の天才児はノーベル賞を受賞した

キンブリー博士が設立した脳神経科学研究所で

特別な教育をしているの」

「三人ですか?」

「ひょっとしたら

他にもあなたの遺伝子を受け継いだ

優秀な子が居てもおかしくないわね」


「もしそれが本当だとしたら、

絢香とどういう関係があるんですか?」

「絢香ちゃんがもし天才だったら

研究材料として狙われているわ」


「ま、まさか」

「そして亮、優秀な精子の持ち主のあなたも」

「でもどうして、FBIのジェニファーがそんな事を

知っているんですか?」


「その天才児の母親が私の姉なの」

「えっ?!アンナさん」

亮はパティの従妹アンナの

話を聞いた事が有った。


「そう私の姉のアンナ

亮は私の甥のお父さんよ」

「お姉さんはなんて言う事を」

亮は驚きで落胆した。


「実は姉は今、旦那さんとの離婚したので

その子を返してもらいたいの」

「じゃあ、返してもらえば良いじゃないですか。

そもそもどうして実の子を研究所に預けたんですか?」


「それが生後8か月の時に言葉を覚えて、

テレビから聞こえる歌を唄ったらしくて、

アンナの夫が気味悪がってキンバリーの

組織に相談したら、そのまま放って置いたら

精神に障害を受けると脅されて預けたらしい」


「確かに脳の生育が早すぎるのも問題かも

しれないですけど、血のつながりが無いと

父親は・・・」

「ええ、虐待の可能性があるので姉は預けた

それで、10歳まで契約が有って」


「あと6年ですか」

「でもそれまでに洗脳されてしまえば、

息子のロバートは姉を見捨ててしまうわ」

「まさか誘拐するわけには行かないでしょう」

「うふふ、考えておいてね。亮

とにかくあなたはアンナの親子を守らなくちゃ

いけないのよ。父親なんだから」


「マジか」

亮は溜息をついて独り言を言った。

~~~~~~

香港の大陸側の九龍のチムサーチョイは

大きな商業地区でたくさんのホテルが

立ち並び対岸の香港島はビクトリアピークで

有名な100万ドルの夜景で有名な大きなビルが

立ち並ぶ経済、金融の地域である。


「亮、香港に着いたわ」

小妹は亮に電話を掛けた。

「お疲れ様」

「一文字は香港島のハーバーグランド

香港ホテルに入りました」


「了解です。しっかりガードしてください」

「はい」

「趙剛統領によろしく」

「亮、こっちに何かあったらすぐに来て」

「分りました」

香港空港には黒塗りのリムジンが横付けになり

ドアが開いた。


「お嬢様お帰りなさいませ」

がっちりした体の男がドアを開けると

「ご苦労様、黄」

「蓮華と桃華もこっちへ乗って」

小妹は二人を手招きした。


「お嬢様どちらの家へ?」

「おじいちゃんの家に行って」

「かしこまりました」

小妹は九龍城跡地の公園近くの古めかしい門構えの

家が趙剛の自宅兼道場へ向った


「小妹、趙剛様にお会いになるんですか?」

蓮華が恐る恐る聞いた

「ええ、報告をしておかないと」

「はい」

蓮華は趙剛を師と仰いでいたが

実際に会う時はとても緊張した。


門をくぐった車は玄関に横付けになり

体格のいい二人が迎えに出た。

「お帰りなさいませ、春麗様」

「ただいま、お祖父さまは?」


「お部屋でお持ちになっています」

趙剛は物静かな雰囲気で中国服を

着て白いあごひげを生やし椅子に

座って本を読んでいた。


「おじいちゃん」

「おお、春麗」

二人が抱き合うと蓮華と桃華は跪いた

「日本はどうだ?」

「凄い凶悪なアメリカ人がいて桃華が怪我をしました」

小妹が桃華を指差した。


「そうか桃華ご苦労だった、ゆっくり休みなさい」

趙剛は桃華に優しい言葉をかけると桃華は頭を下げた

「それで、亮は元気か?」

趙剛は春麗に顔を寄せた

「はい」

小妹は事件の話をした


「なんていう事だ、そのエリックを

殺さなきゃいかんな

王にも亮の身代わりを殺した組織を

始末しなければならない。

依頼を受けているし前面対立を

覚悟しなければならないな」


「ええ、私も亮にエリックを殺ろうと言ったんだけど・・・」

「それで、奴はなんて言った?」

「まだ、ダメだって」

「亮は本当に優しいやつだ」

「うん、そこが亮のいいところよ」


「そうだな、一文字の監視は他の者に

任せて明日はゆっくりしなさい」

「はい、でも体が鈍っちゃたからちょっと

明日訓練を受けてくる」


「ああ、それがいい。腕が鈍ると命にかかわる」

暗鬼の訓練施設は香港の島の1つにあり、

格闘技、射撃、暗殺術を徹底的に教え込まれて

世界中のスパイや組織に恐れられている

秘密組織である。


暗鬼は中国国家安全部と言う諜報組織の

命令の元に動くが組織の頭領である

趙剛が全権を持つ

「春麗、親父さんのところへいつ行くんだ」

「連絡しておく、お母さんに」


「春麗よ、普通の女の子に戻れ、

暗鬼は私の代で終わりにするつもりだ」

「そんな事出来るのかしら」

「跡継ぎがいない組織は崩壊する」

「お父さんを説得してみれば良いのに」


「腹の出た頭領はいらん。春麗が亮と結婚して

跡を継いでくれると良いんだが」

「あはは、無理よ。ライバルが多すぎる、

隠し子がいるし」


「あっ、そうだ。亮の子供賢そうか?」

「何?その質問?」

「もし天才だったら大変な事になるぞ」

「大変な事?」


~~~~~~~~

翌朝、香港の二百数十ある島の1つに

暗鬼の訓練施設は要塞のようなコンクリートの

建物と野外訓練施設で機関銃の音が

激しくのなっており時折、爆発音も聞こえていた。


ヘリコプターで到着した小妹は眩しそうに空を見上げると

「春麗様、どうかなさいましたか?」

黒いチャイナ服を着た男が小妹に聞いた

「ううん、亮とここで訓練を受けたのが懐かしい」

「あはは、亮さまがここに居たのは先月ですよ」


「そうか、まだそれしか経っていなかった」

「ただ、亮さまが作った射撃の

記録はこれからも誰も破れないでしょう」

「60万発中外したのが5発、しかも外したのは初日だけ」

小妹は笑って言った


~~~~~~~

朝早く亮はジェニファーを車に

乗せて汐留のホテルに向かった。

「ジェニファーいつアメリカに帰るんですか?」

亮はエリックたちの行き先が気になっていた。


「出来たら今日帰ろうと思います」

「ブラウン捜査官は?」

「同じ便で」

「分りました、僕は仕事があるので

見送りが出来ませんが」


「ニューヨークでまた会えるのを楽しみに

待っているから。それと趙統領にはあなたの娘が

狙われるかもしれないという話はしてあるわ」

「ありがとうございます」

ジェニファーは亮が車を止めると

別れを惜しむような激しいキスした。


「ふー」

亮が息を吐くとジェニファーは手を振った。

「またね、亮」

ジェニファーはセクシーな太ももを見せながら

亮と別れフロントを抜けると

ブラウンがジェニファーの肩を叩いた。


「おはよう、ジェニファー」

「おはようございます、トム」

「こんな朝早く何処へ行っていた?」

ジェニファーがオドオドしていると

「どうした?」


ブラウンがジェニファーの行動が

おかしいので怪しんできた。

その時ジェニファーのスマフォの

バイブレーターが振動した。

「それは豊洲市場のマグロです」

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