第3話 香港への一文字

「被害者じゃせいぜい数時間の足止めだろう」

森は悲観的に思っていた

「ええ、そこで警察は別件でシャンプーの件と

教会の件で事情聴取するはずです」


「なるほど、それで京都の殺人はどうなるんだ?」

森は亮に聞いた。

「容疑者のエリックとボニーとハリーは

新潟からソウルへ出国しました。


たぶんそこからアメリカに戻ると思います、

裏で有森が動いていた事が分ったFBIが

アメリカ中の国際空港を張り込むでしょう。

でもメキシコやカナダに渡ってそこからアメリカ

に入国する事は簡単です」


「なるほど、京都の事件の被害者は日本人だから

本気じゃないがスチュアート上院議員狙撃は

FBIのプライドがあるというわけか」

森が言うと亮はうなずいた。


「はい、そうだと思います」

「じゃあ、これで俺達の仕事は終わりか、

なんかすっきりしねえなあ」

森が言うと一恵、美喜、小妹、蓮華、

桃華、マギーがうなずいた。


「僕もスッキリしませんが後は警察にお願いをするしか

有りません、それより明日のキャバクララブポーションの

オープンとブルックのライブを成功させなくてはいけません、

それが僕の差し迫った仕事です」


「そうですね、スポーツクラブのオープンもありますしね」

一恵が亮に言うと亮はうなずいた。

「それで、蓮華、桃華。インストラクターの仕事お願いします」

「雇っていただけるんですか?」

蓮華が聞くと亮がニッコリと笑って答えた。


「もちろんです」

「私はどうしようかな?」

マギーが寂しそうにつぶやいた。

「マギーには英語の先生をしてもらって

一緒にニューヨークに行ってもらいます」


「えっ?」

亮は真剣な顔をして答えた。

「マギーにはエリックたちを捕まえるのを

手伝ってもらいます」

「亮さん、またニューヨークへ行くんですか?」

一恵は亮にまた帯同できるのを楽しみに

聞いた。


「はい、スタジオD・NYとRRレコード会社の

設立そして水のクラサワとアリゾナの水の件が

有りますから」

「忙しいわ。でもワクワクする」

一恵は嬉しそうに笑った


「でもこれだけの仕事、亮一人だけで出来るの?」

玲奈が心配になって聞いた。

「たしかにそうですね」

亮は笑いながら組織作りの事を考えていた。

「やはり組織を作らないといけませんね」

一恵が亮に進言した


「ええ」

亮は考え込んでいた。


~~~~~~~

亮は美咲に電話をかけた。

「亮です」

「具合どう?」

「大丈夫です」

「野口麻実さんはどうなりました?」

「うん、一応警察で保護しているから大丈夫、

一文字も被害届を出さないそうだから」


「ありがとうございます。それで?」

「プレステージの販売したシャンプーから

覚醒剤成分が検出されたので

家宅捜査令状を請求したわ」

「管理者の日坂は逮捕ですね。それで一文字は?」


「日坂との関係を否定しているわ」

「教会との関係は?」

「それも否定している」

「じゃあ、まだ逮捕は?」


「無理ね、日坂と教会の連中が自供しない限り」

亮は溜息をついた。

美咲は事件の解決のため有森の射殺に疑いがあり

ジェニファーをその件で問い詰めたかった。


「そうですか」

「それから、一文字は18時15分の

便で香港へ飛んだわ」

「了解です。ところで車の件ですが

事故証明出ますか?」

「ええと、浜松町でランボルギーニが燃えた事」


「はい、ウイルスの入った容器を燃やすために

ガソリンタンクに突っ込んで火を点けました。

それとエリックたちがピストルで新車の

レクサスを撃って来てドアに穴が開きました」


「はあ、両方合わせていくらくらい?」

「5000万円くらいです」

「はあ、どうにかするわ。

それで保険使えるんでしょう」

「お願いします」


「亮、お願いだからもう少し安い車に乗ってくれる」

「安い車ですか・・・ヤリスかカローラかシビックにします」

「ああ、それなら良いわ」

美咲はGRヤリス、GRカローラ、シビックタイプRが

値段が高いのを知らなかった。


~~~~~~~

亮は一文字の逮捕より一文字の命が心配で

暗い顔をしていると小妹が心配して聞いた。

「亮、一文字は逮捕されなかったの?」

「まだ、証拠不十分だ」

「だって、こんなに悪い事をしたのに?」


「小妹、これが日本の警察なんだよ。

実行犯を逮捕してから指示犯人を逮捕するには

実行犯の自供に頼るしかない」

森は小妹の肩を叩いた。

それを聞いた小妹は手を握りしめ

亮の目を見ると亮は首を横に振った


「ええっ!」

小妹が声を上げた。

「小妹、蓮華、桃華

一文字をガードしてください!

おそらく命を狙う者がいるはずだ」

亮は真剣な顔をして珍しく命令口調で言うと


「はい」

小妹達は背筋を伸ばして返事をした。    

「ところで小妹、一文字は18時15分に

香港へ飛んだそうだ」

「香港って私達の地元じゃない」

小妹が笑うと亮も久々に笑った。


「そう言う事で、明日一番で香港へ行ってください」

「ええと、羽田から20時45分に香港行きの

飛行機があるから私達それで香港へ向います」

小妹はスマフォで香港行きの飛行機をチェックした。

「わかった、荷物は良いのか?」


「大丈夫、一文字は香港にいる

仲間に後をつけさせるわ」

森は自分も何かを期待して亮に聞いた。

「俺はどうすればいい?」


「森さん、一文字を裏で指示した黒幕がいるはずです。

その人間を探しましょう」

「裏にいるのか?」

「はい、そうでなければ世界中で

円が売られる訳がありませんから」


「よし!分った」

森がこぶしに力を入れるとマギーが

亮の脇に来て中国語で囁いた

「亮、ジェニファーに今夜会ってくれる?」


「そう、僕も聞きたいことが有った」

「10時過ぎに亮の所に電話があるはずよ」

「OK」


~~~~~~~~

数時間前

「くそ!」

一文字は足止めをくらい不機嫌だったが

樫村の執拗な追及から逃れられてホッとしていた

「西君か18時15分のアメリカン航空で成田を立つ」


「心配していました」

「うん、ちょっと手間取ったが大丈夫だ、

それで間に合ったか?」

「はい」

「よし!」

一文字は笑って搭乗手続きをした。


~~~~~~~~~

「原警視、一文字は香港へ向います」

樫村が美咲に連絡をした。

「了解です」

「後を付けなくていいんですか?」

「香港なら得意な人がいるから大丈夫よ」

「あっ、そうか」

樫村は小妹を思い出した。


~~~~~~~~~           

亮は話が終わると飯田の脇に座った。

「ところで、飯田さん僕は昨日

ランボルギーニを壊しました。すみません」

「何?ぶつけたのか?」


「いいえ、爆発させました」

「何?爆発!」

「ええ、ウィルスらしき物を燃やしました」

「保険で処理する、事故証明は出るか?」


「はい、目的が目的だったので事故証明の

を出してくれるそうです。状況を偽造して・・・」

「それなら大丈夫だ。うちの保険代理店だから」

「はあ、飯田さん怒っているかと思っていたから」


「それより良くやった。この際だから

マクラーレンにしたらどうだ?」

「お任せします」

亮はマクラーレンに一度乗りたかったので

嬉しかった。


「うんうん、すぐに注文するからな」

飯田は嬉しそうに笑った。

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