第48話
体の倦怠感と眠気はあるのに、激しい悪寒と背中にぐっしょりとかいた汗のせいで何度も目が覚めてしまう。
起きてはスポーツドリンクを飲み、おでこに貼った冷えピタを貼り替え、何度も寝ては起きてを繰り返していた。
本日5回目の昼寝から目を覚ますと、部屋が真っ暗になっていた。
もうこれ以上眠ることは困難だろうと思い、一度起き上がって部屋の電気をつける。
あれほど寝たというのに、体調は全く良くなっていない。
肌感覚で自分の体温が下がっていないことは分かりきっていたが、祈るような気持ちで再び体温計を脇の下に差し込んだ。
30秒ほど経ち、音を立てた体温計を脇の下から抜いて体温を確認すると、再び絶望する。
38.5℃。
下がるどころか、朝測った時よりも熱は上がっていたのだ。
スマホの液晶画面をタップし、今の時刻を確認する。
今は18時42分。
この時間から一気に体調が良くなる可能性は極めて低いだろう。
現実的に考えて、明日の仕事に行くことはほぼ不可能と言ってもいい。
明日のことを考えた瞬間に、吐き気を催すほどの憂鬱に襲われる。
休むことは勿論嫌なのだが、何よりも休みの連絡をするのが辛い。
今日は会社に誰も人がいないだろうから、明日の朝に休みの連絡を入れるとして。
「もしもし、すみません、栗原です」
「もしもし田島です。あー栗原、どうした?」
「あのー、非常に申し訳ないのですが、昨日から体調を崩してしまいまして…」
「…それで?」
「大変申し上げにくいのですが、今日はお仕事をおやすみさせていただきたくて…」
「お前さあ、まだ入社から1ヶ月ぐらいだよね?それでもう欠勤って、社会人としてどうなの?体調管理も仕事の一部ってずっと言ってるよね?」
「はあ、申し訳ないです」
「まあいいや、一応伝えとくから。じゃ、お大事に」
そのままブツっと電話を切られ、僕が欠勤するという情報が瞬く間に拡散されて、あいつは貧弱だの根性がないだの使えないだの罵倒される場面が容易に想像できてしまう。
そして次に出勤をした時も他の社員からは冷たく扱われ、同期との差はますます開き、さらに社内での居心地は悪くなってしまうだろう。
とは言え、この体調のまま出勤をすることは流石に不可能だ。
会社 体調不良 休みの連絡 したくない
小学生のようなワードを打ち込み、インターネットで検索をかけた。
分かっている。こんなことをしてもただの時間の無駄だということぐらい。
しかし、今はとにかくこの目の前の現実から目を背けたいのだ。
会社を休む時に使える理由10選!
今日はサボりたい…そんな時に使える理由5選!
自分が求めている情報とは少し違う見出しの記事をスクロールしていくと、少し興味深いものがヒットした。
休みたいけど休めない…そんなあなたにおすすめの『おやすみ代行』
おやすみ代行という聴き馴染みのないワードに思わず目を奪われ、僕はその記事をクリックした。
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