第31話
「おつかれっ。面接どうだった?」
水滴のついたグラスを僕に向けながらりほが聞いてきた。
「んー、あれは落ちましたね完全に」
グラスを合わせながら僕が言うと、りほはふふっと笑った。
りほは就職活動をしていない。
詳しくは聞いていないが、今バイトしている居酒屋で当分は生活するつもりなのだろう。
聞けば色々教えてくれるんだろうけど、別に聞かない。
僕が聞かなくたって、周りの人間に腐る程将来のことについて聞かれていると思うからだ。
「そういえばさ、しゅうちゃんとりょうたくん別れちゃったらしいよ」
「えっまじで?」
「うん。あんなに最近まで仲良かったのにねえ」
僕たち以外にも同じ専門学校にカップルは沢山いたが、その多くは既に破局してしまった。
破局していくカップルを横目で見るたびに、りほとはいつまで一緒にいられるのだろうかと考えてしまう。
別れの危機と言うほどでもないが、僕たちもただ1年間楽しく過ごしてきたわけではない。
いわゆる倦怠期みたいなものも経験したし、僕への熱が少し冷めていると感じる時もあった。
それでもアップダウンを繰り返しながらここまできたんだ。
2時間飲み放題1500円からの、ラブホテル。
この1年間で変わったことは沢山あるが、この流れはもはやルーティンと呼べるぐらい僕たちに染みついている。
電気を消して、ベッドに飛び込んで、キスをしたら始まりの合図だ。
珍しくりほから求めてきて、求め返して、僕らは激しく交じり合った。
僕の隣で、りほは裸のままぐっすりと眠っている。
この時間がずっと続けばいい。
将来とか、人生とかそんな難しいことなんて考えずに、ずっとこうして2人でいられたらいい。
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