第29話

「もう一回映画見る?」

ベッドの上で天井を見つめながらりほが言った。

「いやさっき見たから大丈夫だよ」

行為をした後は目を合わせるのがなぜか恥ずかしくて、いつもこうして裸のまま2人で天井を見て会話をしていた。


「いつもりほが見たい映画ばっか見てるじゃん。

ゆうちゃんはどんな映画が好きなの?」

「えー、なんか見た後元気が出るというか、共感できるというか、自分と似てる登場人物が出てくるというか、、」

自分でも何を言っているのかよく分からなかったが、りほはうんうんと頷きながら聞いてくれた。

「ゆうちゃんに似ている登場人物かあ、、。

りほが見たことある映画にはいないかもなあ、、、」

顎に手を当てながら、分かりやすく頭を悩ませている。

そんな仕草が急に愛おしくなってハグをしようと腕を伸ばすと、りほが何かを思い立ったかのように両腕を広げた。

「そうだ!思いついた!」

りほが瞳を輝かせながら僕に言ってきた。

「え、急にどうしたの?」

「ゆうちゃんが自分で物語作ればいいんだよ!

自分に似てる登場人物がいないなら、自分で作っちゃえばいいんだよ!」

冗談でもなく、茶化しているわけでもなく、りほは本気の顔をしていた。

「どういうこと?俺が映画を作るってこと?」

「いきなり映画を作るのは難しいかもしれないから、まずは小説書いてみれば?文章力とか発想力あるし、ゆうちゃんなら面白い小説書けるよ。

で、その小説が売れたら映画化するでしょ?映画になったらりほのこと女優さんとしてキャスティングしてよ!」


りほは時々、こういう突拍子もないことを言い出す。しかも、真顔で。

「分かった。今度書いてみるね。映画化したらりほが出れそうな小説」

否定したり、りほを茶化したりしても話が終わらないのを知っているから、いつもこうやって肯定する。

「約束だよ?書いたら読ませてね?」

「分かった分かった。待ってて」

僕がそう言うと、安心したように僕に抱きついてきた。

僕も強く抱き返す。

何回かそれを繰り返していると、気づいたらりほは僕に抱きつきながら寝ていた。


小さな寝息と子供のような寝顔は、何回見ても可愛くて見慣れない。

いつもりほがこうやって先に寝て、僕は先に寝たりほの髪を優しく撫でる。

リラックス効果があるのか、りほの髪を撫でているといつの間にか寝ているのだ。

いつも通りこの日もりほの髪を撫でていたら、いつの間にか僕も熟睡していた。



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