〈ミア視点〉












レン「キスって気持ちいいし…

  頭の中なんにも考えなくていいじゃん?」








以前…蓮君がそう言っていた時は

イマイチ分からなかったけれど…






蓮君に口付けられながら

目を閉じ続けている私の身体は

フワフワと浮いた様な不思議な感じだった…






いつぶりだろう…

情事後にこんな風にキスを求められ続けるのは…






抱かれる前の…

甘い雰囲気にキスをされる事はよくあるけど…





抱かれた後も身体を離す事なく

「Mia」と英語混じりに名前を呼ばれながら

与え続けられるこのキスが心地良くて

何もかも忘れてしまいそうだった






唇が離れたのと同時に目を開けて

直ぐ目の前にある蓮君の顔を見つめながら

「帰らなかったの?」ともう一度問いかけると

蓮君は表情を変えずにただジッと私を見下ろしていて

「蓮君?」と首を少し傾けた







レン「・・・美亜は…今シアワセ?」







「・・・・・・」







つい少し前まで不幸のどん底の様な感情だった私に

またあの問いかけをしてくる蓮君が分からなかった…






泥の中であるこの場所で

〝幸せ〟を感じる日などくるのだろうかと思いながらも

今のこの瞬間だけは…






「・・・今は何も…考えなくていいから…」






レン「・・・・・・」






「辛くは…ないかな…」







素直な感情だった…

蓮君には出会った時から

さほど気を遣う事はなく

ただの〝美亜〟でいられるし…





彼のくれる心地よさに

少しだけ息をつけていたから…






私の言葉を聞くと

「ならいいよ」と笑って

また唇を重ねてくる蓮君の首元に腕を回すと…






「・・・ッ!・・・レン…く…ッ…」






彼が私の脚を上げて

また身体を深く重ねようとしているのが分かり

慌てて背中を叩いたけれど

グッと奥にはいってきた暖かさに

「時間が」と蓮君に伝えると

「まだ大丈夫だよ」と言って

心地よいあのキスをくれた






蓮君の抱き方は翠さんとはヤッパリ違っていて…

本当に兄弟なのかと思ってしまう…






レン「ミア…顔みせて…」






蓮君は情事中に私の名前をよく呼び…

顔にかかった髪を手で撫でる様にどかし

私の顔を見ながら身体を動かしていて…





必然的に私も蓮君の顔を見つめる事が多くなり

今誰に抱かれているんだと

身体だけではなく頭や視覚…

身体全身が蓮君に抱かれているんだと感じていた…






そして…

私の表情や反応をみて

私がどう望んでいるのかを理解して

抱いている様だ…






夫である翠さんからこんな抱き方をされた事はなく

この瞬間がさらに心地よく感じた







キスを受け入れたあの瞬間から

私の中でずっと閉じ続けていた蓋は壊れてしまい…






このキスを…情事を…

心地よいと感じるのはきっと当然なんだろう…







蓮君に対して「いい人」なんて感情を持った事はないが

どことなく惹かれていた自分には気付いていた…

















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