サイレン

〈ミア視点〉











レン「美亜は今…幸せ?」







あれから数日経っても

蓮君から言われた言葉が

頭の中でぐるぐると回っていて

家事をする手が度々と止まってしまう…







( ・・・私の……しあわせ… )







母「翠さんに感謝しなさい…」






友「専業主婦いいなぁ」






母や…

友人達からは…

私は恵まれている幸せだと言われる…







母「何不自由なく暮らせるって…幸せな事よ」







そう…

私は…何の不自由も感じてはいない…






節電だなんだと言われる事もなく

翠さんの体調を崩さない様にと

部屋の温度は24時間設定されているし…







ミドリ「食材は全て国産品だけにしてくれ」







友人達がよく言う

タイムセールやポイント加算を

気にする様な買い出しはしていないし

家計簿をつける必要もない…






ただ…

翠さんが毎日快適に過ごせる様に

上手くサポートをすればいいだけで

主婦なら誰だって…そうだろう…







「・・・幸せ?」







そう口にした瞬間

ザクッと人参を切ったはずなのに

自分の人差し指に感じる痛みに顔を向けると

人参に添えている手から赤い血が流れ出ていた







「あっ…」と慌てて人参から手を離し

水道水で切れた指先の血を洗い流しながら

排水口へと流れていく赤い血を見て

「幸せ…」とまた呟いていた…






不自由なく暮らしているのだから

皆んなが言う様に

私は幸せなはずだ…






( ・・・じゃあ…どうして… )






ジャーッと勢いよく流れる水道水の音が響くなか

蓮君は何故あんな問いかけをしてきたんだろうと思った…






まるで…

私は不幸だとでも言うかの様な

あの目が…頭から離れない…







( ダメ… )







何となく…

蓮君にこれ以上近づいてはいけない気がして

キュッと蛇口のレバーを降ろし

私の中から出ようとしている感情に蓋をするかの様に

傷ぐちに絆創膏をキツく巻き付けた







( もう…蓮の池には近づかない… )






























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