ラッキョウ漬け…












買って来た物をカウンターキッチンの上へと置き

「ふぅ…」と息を吐いてから

ビニール袋の中にある物を見て

「何してるんだろ」とまたタメ息を吐いた…








レン「らっきょう?」







「そう…今の季節なら

  梅とか…ラッキョウを漬けてたかな」







田舎のお婆ちゃんの家での生活を知りたいと言われ

お手伝いでしていた、ラッキョウ漬けなどが

遊び代わりだったかもと話すと

蓮君は「へー!」と顔を近づけながら

「それって美味しいの?」と問いかけてきた







「美味しいって言うか…

 ウチでは甘酢を作って料理に使うって感じだったから」







ラッキョウをそのまま食べたりした事もあったけれど

中々香りもキツくて小学校の中学年辺りからは

食べなくなっていき…

酢の物やポテトサラダに使う感じだった







レン「へぇー…生活の知恵ってヤツだね」







至って普通の事に思えるけれど

蓮君にとっては生活の知恵なんだろうと思い

「ふふ…」と笑ってしまうと

キラキラとして綿菓子を作る作業を眺めている

幼児みたいな顔はキッとキツくなり

「今バカにしたね」と明らかに不貞腐れている…






レン「アレだよね…

  そんな事も知らないのとか思ったよね?」







「えっ?」







レン「どーせ…お坊ちゃんだからとか思ったんでしょ?」







「・・・・・・」







蓮君が翠さんや

他の五十嵐家の人達とは違って見えるのは

きっと…こう言う所なんだろう…







ミドリ「僕は五十嵐家の人間だ」







何かある度に翠さんはそう口にしているし

そうである事に誇りを持っている…





だけど蓮君は…

その五十嵐家から出て行きたいんだろう…

たんぽぽの様に

自由に飛んで行きたいんだと分かった…







「蓮君は……五十嵐家っぽく…ないよ?」







不貞腐れて顔を背けている

金色の髪の毛を見ながらそう言うと

パッと顔をコッチに向けて来て

「でしょ?」と目を細くして笑っている






翠さんに同じ事を言えば…

どんな反応をするんだろう…






そんな事を考えていると

隣りから「ねーねー」と甘える様な声が聞こえてきて

チラッと目を向けると幼児の様な笑顔を浮かべて

「ラッキョウってやつ食べてみたい」と言ってきた…








「・・・スーパーとか…

  コンビニにも置いてたりするわよ?」







嫌な予感がしてフイッと目線を池に向け

知らないと言う態度を取ると

「美亜のが食べたい」とまた甘えた声を出している…







「・・・・やだ…」







レン「ヤダとか…美亜いくつ?」







「・・・・今年24よ…」







年齢を答えると「24でヤダはダメだよ」と

バカにして笑っている蓮君にムッとして

「絶対に作らない」と今度は私が顔を背けると

「ウソウソ!美亜は若いよ」と笑いながら

肩をポンポンと叩いていて

全然悪びれていない…







レン「怒んないでよ美亜ちゃん」






「・・・・・・」






レン「美亜さん?」






「・・・・・・」







返事をせず顔を背けたままでいると

「美亜は子供だねぇ」と

呆れた笑いが聞こえ出し

「一応…お義姉さんなんだけど…」と

小さく呟くと笑い声はピタリと止まり





コポコポコポ…と

池の音だけしか聞こえなくなった…







( ・・・・・・ )







何となく空気が重たくなったのを感じ

振り向けないでいると

ポツポツと水面に水の落ちる音が聞こえ出し

雨が降り始めたのが分かり…







「そっ…そろそろ行くね…」







レン「・・・・・・」








何の返事もない蓮君に目線を向けれないまま

スッと立ち上がり「またね」とは言いづらくて…

「じゃあ…」とだけ言って立ち去ろうとすると

「次…」と低い声が聞こえ顔を蓮君に向けると








レン「作って来てよ?笑」







「・・・・・・」







ニッと笑うその笑顔に「ヤダ…」と言えず…

ラッキョウ漬けに必要な物を買ってしまっていた…










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