第12話
○あなたは誰?
なんだか外が騒がしい。
時間を見ると、午前九時。
アンソニーさまは、朝早くに城での公務のため出勤していた。
出窓からのそくと
ふはっ
あれは何?
玄関アプローチで変な塊が暴れてる。
なにかよくわからない。
判別不能。
確かめようと、急いで外に出る。
なんだろうと目を凝らして見る。
少し近づいてまた見る。
ふはっ
あ
きゃー
まさかの、トッツィじゃん
まさかのまさかの
フレンチブルドッグなのに
横デカい体で騎士姿
小さなハットも被ってる。
よくサイズがあったよね。
それに、後ろ足、ニ本足で立ってる。
暴れてると思ったら、どうやら
一人?一匹で、剣の素振りしてたらしい。
それも奇妙な声を発しながら。
「トッツィなの」
叫んでみた。
動きを止めて、こちらを向く。
じーっと見つめ合う。
と、後ろから
「アルフレッドさま」
ルーシーちゃんの声がした。
アルフレッド?
えー、アルフレッドとか
なんじゃそれは。
「アルフレッドさま、お久しぶりです」
と、ルーシーちゃんが走り寄って飛びつく。
フレンチブルドッグに抱きついてハグしてる。
はあ、ショック、ショーック!
事態が把握できない。
トッツィじゃないの?
固まって動けない。
ルーシーちゃんが振り返り
「まりんママ、こちらはアルフレッドさま。パパのベストフレンドです」
紹介する、
アルフレッドさんが
うやうやしく、小さな帽子をとり
「アルフレッドです。お見知り置きを」
と、礼をする。
えっ、アルフレッド?
それに、わあ、ベストフレンドとかフレンチブルドッグなんですけど。
それに、あ、ダメダメ、フレンドにベストつけるのは今じゃ禁止事項なのよ。
他のフレンドが、じゃ僕はなんなの私は何?
って気を悪くしたり、悲しんだりするから博愛主義的に禁止なのです。
そだ、ツッコミ入れてる場合じゃなかった。
「初めまして、まりんです。アンソニーさまの婚約者です。どうぞよろしくお願いします」
一応、挨拶してみる。
反応をみていたが、何のアクションもない。
いや、笑っているような気もするが.フレンチブルドッグの表情は読めない。
ここは、スルーするしかない、と思い、素知らぬふりを決め込む。
ルーシーちゃんは、嬉しそうに、何やら親しげにアルフレッドさまと話してる。
「中に入りましょう。どうぞ」
と声をかけると
「はい」
と、ルーシーちゃんがアルフレッドさんをエスコートする。
「そちらにおかけになってください」
椅子をすすめる。
ルーシーちゃんは
「そうだ、ちょっと待ってて」
アルフレッドさんに見せたいものがあるらしく、自分の部屋に取りに行った。
わあ、二人だけになっちゃった。
あっ、一人と一匹とか、まだ言ってるし。
困ったなと思いつつテーブルを挟み座る。
「まりんさん、こちらの世界はどうですか?もう慣れましたか?」
フレンチブルドッグに、じゃなかった、アルフレッドさんに聞かれ
「はい、まだまだ慣れる途中ですが、順調だと思います」
曖昧にアルカイックスマイルする。
今のところはね。
「お待たせしました」
と、ルーシーちゃんが戻ってくる。
手に厚手画用紙が、一枚。
「アルフレッドさまたちを書いてみました。ご覧になって」
と、アルフレッドさまに渡す。
「上手だね」
と言われて嬉しそうなルーシーちゃん。
「あ、私にも見せてください」
アルフレッドさんがくるりと回してこちら向きにする。
あ
ややっ
三匹の子豚?
じゃなかった
そこには三匹のフレンチブルドッグがいた。
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