第9話
○三人でデート、それから
「明日、三人でデートしませんか」
ルーシーちゃんからメッセージが入る。
え、三人?
ですよね。そうでした。
「はい、大丈夫です」
「では、十一時に、いつもの場所で」
ニ回目にして、いつもの場所となりにけりの渋谷ハチ公の頭あたり。
ふーむ、何着て行こうかしら。
また洋服で悩む乙女心
誰が乙女じゃ、というツッコミはなしよ。
あ、ママが買ってくれたワンピースがあるじゃない。
あれにしよう。
今回は、ママに感謝ね。
るんるん気味で、リビングのソファに寝転がる。
携帯を見ていると
横をトッツィがトコトコ歩いてる。
廊下に出るのかと思いきや
トトトと足踏みして方向を変えて
またこちらに向かってきた。
「トッツィ、おいで」
と、呼んでみる。
止まってじっとこっちを見てる。
うーん、どうするのか
初めてのしっぽふりふりご愛嬌とか、甘えるのか
次のアクションを待つ。
おや、おやー
お化けポーズで立っちした。
おや、おやー
両前足バンザイポーズ
えっ
半立ちで、前足を前に移動し
今度は、左右クルクル上下に回してる
えー、えーーー?!
体おろして、両後ろ足踏ん張って
片前足を床に
って
チアリーダーのがんばれポーズじゃん。
今のは何、何?!
すごい速い動き
あっという間のポージング!
トッツィは、動ける踊れるフレンチブルドッグだった。
はああ、悪い夢をみたのか。
それとも?
何事もなかったかのように
トッツィはもう腹這いになって
いつもの場所で寝てる。
ふーん。
はーん。
何事?
でも、何だか、不思議な気持ちだ。
気分が上向き元気になる。
あり得ない動きに驚いたけど
トッツィが励ましてくれてる気がする。
あれは、トッツィの応援か!
チアアップ!
しかし、わからん
トッツィはツノがあるからユニコーン?まさか魔法使い?
イヤイヤ、想像だけで、色々考えるのは拒否する。
その日は、ママに買ってもらったワンピースとペタンコ靴で家を出る。
ハチ公前あたりに行くと
いたいた
ルーシーちゃんは
まるでお姫様みたいだ。
フワッとしたワンピース姿。
あ、みたいじゃなく、魔法国の姫でした。
アンソニーさまは、というと
わあ、素敵!
スマートなジャケット姿。
英国ジェントルマンみたいだ。
まわりの視線も、エキゾチックフェイスのアンソニーさまへ。
女性たちの注目が集まる。
お洒落なニ人とデートするなんて
ハッピータイム!
でもなかったみたい。
ペタンコ靴でも、やや身長が。
やや私が高めじゃないかと気になる。猫背をさらに縮めるてみる。
ショーウィンドウで確認する。
勢いでなんとかなるバランスだ。
うん。
俄然、元気が出る。
「どこか入りたいお店はありますか」
聞かれたけど、特にない。
「人が多いので、静かな場所がいいですね」
と、言ってはみたが、それより、このままどこまでも歩いていたい。
みんなの注目を浴びながら歩きたい。
なんで見てんのかは定かではないが、やはりアンソニーさまを見ているのか、または、お姫さまみたいに可愛いルーシーちゃんを見ているのか、はたまた、のっぽの私をみているのか。
注目すべきは、この3人のアンバランスさか。
不思議な取り合わせに見えるかも。
なんでーなんで、ダサいのっぽが
こんな素敵な人の連れなの?
みたいな、みんなの心の声が聞こえたような気がして、思わず振り返る。
ちょいと複雑な気持ちにはなるけれど、そんなのいいの、気にしないで歩こう。
「じゃあ、また魔法国に一緒に行きませんか、来てください」
ルーシーちゃんに、「はい」と答えるとアンソニーさまが笑顔で頷く。
渋谷川の下流のあの場所まで。
ポータルポイントへ。
「では行きましょう」
そして移動する。
なんて自然なんだろう。
疑問を持たず、抵抗もしない
なすがままよ。
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