第8話
○日常に戻る
「まりん、あの洋服着てそこに立ってみせてよ」
日曜日なのに、ゆっくりしたいのに、朝からママがうざい。
頼んでもないのに、また海外ブランドの洋服を買ってきたのだ。
紙袋を指差して
「ねえ、あのワンピース、似合うと思うから着て見せて」
ママがしつこい。
姿見を出してきて、目の前に置くから仕方なく、紙袋から出して広げる。
あれ、よくみると、意外にいいかも、可愛い系だけど。
望み通り着て見せる。
「あー.やっぱりこのワンピース似合うわ。いいとこのお嬢様みたいよ」
ママは満足気に見てる。
確かに、色はベージュ系、スリムなライン、切り替えが下の方だから、上品な感じに見える。サイズもちょうど良い。
けどね、背がさらに高くみえるデザインなのよ、知らないの?ママ。
「これ、デートに来ていけば」
と、ママに言われて
「えっ、何、やあね、デートだなんて」
バレたか。ドキドキする。
「最近、るんるんしているから、好きな人ができたのかなって思ったわけよ」
図星じゃん。
わかりやすい私だった。
恋をすると、見える景色も、目に入るものすべてが美しいと、誰か言ってたけど、まさにそれだわ。
「ふ、ふ、ふ、内緒だよ」
わざと気をもたせてやるのだ。
キッチンから
「怪しいわね。誰かいい人出来たら紹介しなさいよ」
と、ママの大きな声が聞こえた。
ワンピースを脱いでハンガーにかける。
吊るして改めて見てもなかなかに可愛いワンピースだとは思う。
着るのが楽しみになる。
このワンピースを着て、アンソニーさまとデートする!
アンソニーさまは、騎士スタイルとか
あ、ダメ、ブップー
ダメダメ
タイトなスーツが良き!
二人で並んで歩いたら、注目の的ね。
だって、アンソニーさま、素敵だもの。
実は、また会いに行くのだ。
アンソニーマイラブなんてね。
あ、でも、まだ恋未満だ。
一目惚れしたばかりだし。
アンソニーさまの気持ちはまだわからない。
にゃーとドロンが擦り寄ってきた。
抱っこしようとすると逃げる。
待って抱っこしよ、と追いかける。
残念、ニ階に逃げられた。
猫は気まぐれ。
ソファにバタンと横になり、うつ伏せになり、足をバタバタ。
あれ、そういえば、と
顔を上げて、キョロキョロ。
トッツィはどこ?
姿が見えない。
気配すらない。
むー、うーん。
あ、と、トイレに行くと
犬便器に鎮座してた。
便秘なのね。
がんばれ!
トッツィは完璧運動不足だと思う。
一日中、寝て食べてるだけだもん。
だから、犬だって便秘になると思う。
よし、夕方、トッツィを鍛えてやるぞ。
一緒に散歩する、てか、走らせてやる。
しかし、今日はいたって
普通のフレンチブルドッグみたくおとなしい。
じろじろ観察する。
ツンと顔を上げて、姿勢正しく、ただ今ウンチ中だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます