第7話
○会いにいく②
「ルーシー様こちらへ」
声が聞こえて我にかえる。
ぼーっとしていたみたい。
あらためて、まじまじとあたりを見渡す。
わあ、ここが地底の国?
冷んやりした空気に、ブルッと震えがくる。
寒気なのか、気味が悪いのか、両方かもしれない。
「まりんさんもご一緒に」
促されルーシーちゃんついて歩く。
お供らしい黒づくめスタイルの男性に案内されて、近くに停めた馬車に乗る。
てか、映画でみたことあるから、とりあえずルーシーちゃんについて、エスコートされ乗り込んだ。
はあ、ここはどこだろう。
これは、夢なのか、現実なのか。
信じられない状況に戸惑う。
これからどこに行くの?
と、聞きたいけど、無理よね、この雰囲気では。
空気読め、自分。
いかん
余計なことは考えるのはやめて目の前のことに集中だ、と自分に言い聞かせる。
やがて馬車が木立を抜けると広がる草原の先に、白いシャトーが見えてきた。
到着すると、間近にみる白いシャトーはさらに大きく驚くばかりだ。
馬車を降り、ルーシーちゃんについて、アプローチを通り抜けると
「おかえりなさいませ」
執事とメイドさん2人が玄関で出迎えてくれた。
「パパを呼んでください」
ルーシーちゃんがここでやっと口を開いた。
「こちらへ」
と執事に案内され廊下を歩き部屋に入る。
広い部屋の真ん中に四角いテーブルと椅子、窓際に、ソファが並んでいる。
大きな写真や絵画、本棚、飾り棚も目に入った。
「まりんさん、お座りになって」
ルーシーちゃんは妙に大人びた口調で言う。
雰囲気に馴染めない、なんだか気持ちがふわふわしている。
落ち着け自分と言いながら、目に入った近くの椅子に座る。
はあ、緊張する。
しばらくすると、ドアが開き、男性がスタスタ入ってきた。
あ、この方は、もしやと思ったとたん
「パパー」
と、ルーシーちゃんが飛びつく。
「おかえり、待ってたよ」
抱き上げ、しばらく抱きしめる。
そして、くるりとこちらを向いて
「初めまして、アンソニーです。
きていただきありがとう」
と挨拶をする、
「初めまして、まりんです。
お招きありがとうございます」
挨拶を返したものの
まず服装にびっくり
映画で見た中世の貴族みたいなスタイルだ。
それに、誰?ルーシーパパかしら?
あ、メッセージに名前が書かれていた、そうだアンソニーさんだ。
確かに背は高くみえるけど、そうでもないような気がする。
顔は、窓からの逆光でよく見えないポジション。
その場を狙ったかのように、見づらい角度に立っている。顔がはっきりわからない。
ルーシーちゃんが
「まりんさん、もうすぐお昼だから、ランチを食べながらお話しましょう」
「はい。そうしましょう」
確かに、お昼だわ、急に空腹を感じる。
「パパは先にいらして。少し休んでから、まりんさんと参ります」
「わかったよ、ては、あとで」
アンソニーさんは,会釈をするとさっと部屋を出た。
やはり顔は認識出来なかった。
とたん
ルーシーちゃんが駆け寄ってきた。
「あのねー私ねーひとつだけ、ひとつだけ嘘ついちゃったの」
と言いながら
両手の人差し指をくるくるさせる。
かわい子ぶってる。
「なんですか?」
と聞くと
「あのですね、パパの身長なんですけど本当は、百七十五センチなの」
えっ、ここでそんなことを。
マジですか。
そこ重要!
日本の男性として低くはないんだけど、私より少し低いってことね。
汗たらり。
重要なことだけど、ま、小さなことですよ。
仕方ない、流れに任せよう。
「了解です。気にしないで」
「ほんとですか、ありがとう」
ルーシーちゃんが顔の前で手を合わせる。
「そうだ、まりんさん、ランチの前に、上のお部屋で着替えましょう」
と言うなり歩き出すから、とにかくなるようになれ的な感じでついていく。
廊下の先にあるゆるいカーブの螺旋階段を上がり部屋に入る。
ルーシーちゃんが部屋の奥の大きな鏡の前に立つと、メイドさんが次から次へとドレスを運んでくる。
びっくりして見ていると
「まりんさんもこちらにきて選んてください」
手招きされて近づく。
小さいサイズはルーシーさま用
大きいサイズはまりんさま用
とメイトさんが並べているが、とにかく枚数が多すぎる。
「選んでください」
と、言われても
ドレス選びはわからない。
それを着た自分がイメージできないまま、目移りしていた。
結局、ルーシーちゃんが
「まりんさんはこれを着てください」
と選んでくれたドレスを試着する。
大きな鏡の前に立つ。
淡いピンク系の濃淡の色使いコテコテクラシックスタイルだが、意外と似合ってる気もする。
色白だけが唯一取り柄の私。
淡いピンク色が、肌の色に合うみたい。
ルーシーちゃんが、嬉しそうに
靴はこれねと差し出す。
淡いピンク色のハイヒールだ。
ハイヒールだとさらに背が高くなるんですけど、いいのかしら。
アンソニーさんを見下ろすかも。
心の中でぶつぶつ言いつつ足を入れ、鏡の前に立つと
「まりんさん素敵です」
満足そうに見ている。
次はルーシーちゃん。
キュートな赤いドレスに着替えると、まるでクラシックなフランス人形みたいに可愛い。
ニ人手を取り寄り添ってメインの広い階段を降りる。
お食事の部屋に入り、案内された椅子に座ると、向かい側に、キリリとしたイケメンが座っていた。
わあ、素敵な人がいる、とドキドキしていると
「黒もお似合いでしたが、そのドレスもよく似合ってますね」
と笑顔で語りかけてきた。
あっと、声でアンソニーさんだと気がついた。
貴族スタイルルーシーパパだ。
なんて素敵なの!
背なんか関係ないじゃん。
顔にやられました。
哀愁を帯びた表情の彫りの深い系イケメンです。
これが、一目惚れか、と思う。
ひ、と、め、ぼ、れ
目にキラキラと星が光り
少女マンガの主人公状態になる。
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