第6話
○会いにいく①
せっかくの機会だから、いいとこ見せたい。
スタイリッシュに決めて、会いに行きたい。
でも、いつもながら、身長のせいで、可愛い洋服はサイズがない。
学校帰りに、根性入れて探したけど、なかなか気にいる洋服が見つからない。
海外ブランドだったら、大きなサイズがあるからとママが時々買ってくれるけど、悪目立ちするし、いまいち好みじゃない。
ラフなトップスに、そのままはけるジーンズやパンツスタイルが多い。シンプルが1番だ。
でも、ワンピースなら丈が長いタイプをそれなりに着こなせる。
春に着たいと買っていたベージュのシンプルなワンピースと去年の秋に買っていた黒色て胸元がオーガンジー生地の切り替えが入った大人っぽいストンとしたワンピース。
どちらもお気に入りだ。
ワンピースにしようと決めて
「ママ。どっちがいいと思う?」
リビングにおりて、黒系とベージュ系のワンピースを見せる。
「そうね、春だし、ベージュなんていいわね。でも、黒もなかなかいけてる、とにかく両方着てみせてよ」
と、言われて姿見を出す。
まず。ベージュ系を着る。
「どうかな、なかなかいいよね、これ」
とポーズをとりながらみていると
ご飯食べて食後休憩していたはずのトッツィが、突然むくっと起きあがり、トコトコ近づいてきた。
と。思ったら、顎を上げて、食べたばかりでまだご飯の残りカスがついてる口を、ワンピースの裾にスリスリすり付ける。
唾液がたらりと流れ落ちて染み込む。
「きゃ、何すんのよ」
「あはは、これで、黒で決まりね」
笑ってる場合じゃないんですけど。
汚れちゃった。
もー、トッツィのヤツめ。
許さん。
仕方ない、まだ肌寒いから、ジャケットを羽織り、黒いワンピースで行くことにした。
渋谷に着いたけど、ハチ公の頭と言っても、人が多いからどうかな。
とか、心配は無用だった。
黒いドレスに黒い頭巾を被った
一目瞭然の小さな女の子がいた。
ひとりで立っていた。
あ、ここで気がつく
私のことわかんないよね。
目印とか合言葉?とか決めてないじゃん。
しかし、その心配も無用だった。
私を見ると、真っ直ぐスタスタ歩いて近づいてきたのだ。
「パーイ、私ルーシーよ」
片手をあげる。
あ、あ
「こんにちわあ、まりんです、初めまして」
ちょっとモタモタした。
すると
「行きましょう、こっちよ」
と促されるまま、ついていく。
人混みをスイスイすすむルーシーちゃん。
追いかけるだけで、やっとだ。
この川は、渋谷川かな。
川沿いに歩いていると
ルーシーちゃんが
突然、立ち止まって振り向き
すっとこちらに近寄ると手を差し出す。
自然に伸ばした私の手を握る。
あれ
あれれ
風に巻き込まれたような感じ
思わず目をギュッと閉じる。
しばらくして恐る恐る目を開けると
見慣れない風景が広がっている。
ここはどこ?
まったく知らない場所にいる。
ここは中世ですか、みたいな
街中の石畳に立っていた。
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