第5話

○早い展開


「ねえ、まりん

最近さー、何か隠しごととかしてない?私に話してないことあるんじゃない?」

さすが真紀子は鋭い。

「うーん、あるって言えばあるような、ないような」

「どっちだよ」

話すべきか、話さぬべきか、それが問題だ。


 近頃、頻繁に、ルーシーちゃんとメッセージ交換している。

すっかり仲良くなった感じだ。

信じるものは救われる世界だけどね。

だからって、真紀子にはまだ話せない。

だって

馬鹿じゃん!終了!

だと思うから。


でも、真紀子は、受験地獄をくぐり抜け、見事、希望の大学に受かったばかり。

そこそこ機嫌がいいし、このタイミングで話すのがいいかもしれないと思い直す。


ねえ、と言おうとしたら

ちょうどメッセージが入る。


見るとルーシーちゃんからで

「まりんさん、今度、遊びに来ませんか?」

って、いよいよ地底の世界訪問か。

思わずニヤける。

「何、にやにやしてんの」

真紀子が覗き込む。

画面を見せると

「えっ、誰これ、何、遊びに来ませんか?

なんて、どこへ行くのでしょうか?」

へっという疑問の顔だ。

しょうがない、話そう。

と、近くのカフェに入る。


実はね。

「お願い、私のママになって」

というメッセージが入ってからの一連の話をする。

本当かどうか確かめてはないけれど、ルーシーちゃんは自分のことを魔女国の魔女だと言ってる。

本当は地底人かも知れない。

ルーシーパパは、身長百八十五センチのイケメンらしい。

と話す。


「ちょっと待って話を整理すると、そうなんだ、地底人か、いいじゃん、面白そう」

えっ、意外な反応に驚く。

「私ね、魔女はよくわからないから、コメントしずらいけど、地底人はいると信じてる」

真紀子がそう言うので、またびっくり。

信じてるんだ。


「ま、確かに怪しい部分はあるけど、面白そうじゃない」

「そうね、うーん」

実際、私も面白がってる。

「それに、もしうまくいけば、子ども産む手間が省けるし、5歳だから育てる手間も少なくて済んじゃうしね」

「おおーっ」

なんと、そこまで、そうきたか。

真紀子は合理的すぎる考え方だ。


「とにかく、あれこれ考えてないで、会うことをすすめるよ、会って、魔女か、地底人か、確かめよう!」

「そうね」

「そうそう、まず会ってから考えなさいよ」


真紀子にプッシュされ

だんだんその気になってきた。


「じゃあね、会ったら結果おしえてね」

「お土産よろしく」

「わかってます!」

バイバイと別れた。


真紀子は、明日から長崎に行く。

受験から解放され、のんびり長崎のおばあちゃんの家で過ごすのだ。


 リビングでテレビをつける。

ソファに寝転がって、チャンネル合わせしていた。

ニュースタイムか。

あ、え、

画面に釘付けになる。


信州地方で新たに洞窟が発見されたとか。

かなり地下に入り込んだ複雑な洞窟らしい。


きゃー出たー。

地底人現るか。

ますます興味が湧いてきた。

よし、と立ち上がってガッツポーズ!


 「ママ、何が手伝うことある」

機嫌よく、キッチンにいく。

「しゃ、そのレタスちぎって」

「はーい」

ちぎってポールに入れながら

リビングの方をみると

うわっ

トッツィが、トッツィが

私の携帯を見てる。

ちょこんとお尻座りして

ローテーブルに置いた携帯の画面を器用にスライドさせてる。

嘘ぴょん。

「ママ、トッツィが」

「えっ、何、どうしたの」

「トッツィが」

「寝てるわね」

ひぇ

すでにいつも通りに腹這いで寝てるし、素早い

瞬間移動か。恐ろし。


 夕食後、マイルームで返信した。

だって、リビングだとトッツィがいるから。

トッツィが怪しい動きをするからね。


「はい、いいですよ、ぜひ。

にちじとまちあわせのばしょをしらせてね」

また今度は意味もなく、ひらがなで書いてみる。

遊んでる?、ま、そうなんだけどね。

5歳で漢字がわかるのって凄すぎる。


即、返信がきた。早っ。

「じゃあ、三月三日午前十一時に、渋谷ハチ公の頭あたりで」

あらっ、漢字の羅列

ふーむ、やはり誰か代わりにメッセージ書いてるのかな?

うん、絶対そうだ。

でも、ま、そこは気にしない。


いよいよイケメン地底人との遭遇だ!たぶん。

楽しみだ。

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