第4話
○ライブ受難
真紀子とライブに行く。
今話題のシンガーだから、なかなかチケットがとれないけど、なんとラッキーなことに、ニ枚ゲットできたのだ。
Ken!ビジュアル最高!カッコいい。
声もセクシー、うっとり癒される。
ライブ会場の中、まわりは女の子ばっか。
すぐに盛り上がり、スタンディングする。
ピョンピョンしたいタイミングで
どこからともなくっていうか、イヤイヤこれ見よがしに聞こえてくる。
見えない
座れ
ハケろ
消えて
とか、罵声が聞こえる。
ま、要するに頭ひとつ抜けてるから大きな壁でしょう、お邪魔でしょうね。
しかし、無視するのはキツい
真紀子は
「大丈夫だよ、立ってなよ」
と言ってくれたけど
結局座って隙間から見た。
意外と気が弱い私。
凹み気味で帰宅すると
玄関で、黒猫ドロンが
にゃーとお出迎えしてくれた。
抱き上げて、頬ずりする。
最近、トッツィに押され気味で目立たないけど、この猫の感性が好き。シンパシー最高!
トッツィは?とキョロキョロすると
アレカヤシの鉢に頭をもたれ、気持ち良さげに寝てる。
寝てばっかりなヤツ。
食べて、寝て、ウンチして、また食べて、寝て
みたいな。
繰り返してるだけじゃんよ。
ちょいと便秘気味なのも知ってる。
変なフレンチブルドッグだけど
よく見ると愛嬌があるな、と近づいて
かがんでさらによく見る。
頭を撫でようと手を伸ばす。
すると
ギャ
頭から何が飛び出した
びっくりのけぞる。
角だ
あ、あの角だ
スルスルピョーンと角が伸びてきた、
うわー、そのままひっくり返って
両腕後ろについたポーズでじーっと観察する。
これはバランスが悪い。
確かにトッツィフはレンチブルドッグにしてはデカい、とはいえ、体の割に、角が長すぎる。
なんて意外に冷静に分析している私だけど
ここ、この場面で
このシチュエーションで
どうすりゃいいのかわからない
次の一手がわからない。
というのが本音だ。
静止タイムが続く。
ところが、しばらくすると
角がぱっと消えた。
一瞬だった。
スルスルピョーンと伸びたのに
スルスルと収まるのではなく
一瞬で消えるとは
イージーね。
ツッコミ入れてる場合じゃない。
何事?
トッツィは、狸寝入りか、目をつぶったまま
ズルズルと体を滑らせ、腹這いになる。
床にめり込むくらい同化してへたり込んでうつ伏せに寝てる。熟睡かもね。
ふーん。
とにかく怪しい犬ですわ。
けど、深く考えるのは拒否する。
夕食後、メッセージチェックする。
ルーシーちゃんからまた無駄にたくさんメッセージがきてる。
一応、全部読む。
うわ
『日本人でも、外国人でもない。
同じ地球だけど、別の世界に住んでいます』
って
どういうこと?
そこはどこなの?
まさか地底人とか?
うわ
ますます意味不明。
だけど、結構面白い。
楽しくなってきた。
暇な時のストレス解消みたいなノリで
じゃ、返信しましょか。
「ルーシーちゃんのパパのことおしえて。
どんな人ですか」
いきなり核心をついてみる。
だってダラダラするのもめんどくさいから。
あら
また即、返信がきた。
「私のパパはイケメンで背が高いよ」
やったー♪背は高いのね。
あ、でも、背が高い感覚にも個人差があるから
「パパの身長はどれくらいですか」
また即、返信
「パパは、百八十五センチです」
マジ?
地底人は背が低いと何かに書いていたけど
そんなに背が高いとは。
反重力の法則か。
イケメン、背が高い、地底人
悪くはないね。
「じゃ、また明日ね。おやすみなさい」
とメッセージを送る。
すべて鵜呑みにしてるわけじゃないけど
なんだか楽しい。
本当なら面白い。
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