第3話

○メッセージ交換の始まり


 背が高いと何かいいことある?

とか、たまに聞かれるけど、特に何にもないよ。


「あ、まりん、そこの棚のあれとって」

「あれじゃわかんないんですけど」

「あれよ、あれ」

「この箱?」

「そ、そう、それよ」

みたく、高い所に手が届くから、ママに何かと使われる。

ま、いいことはないね。


 身長百七十八センチあるけど、ヒョロッとしてるし、猫背、側弯症、外反母趾とかあるし、結構出来損ない系の体だと思う。


 中一の時、夜寝ていると、骨がバキバキ音を立てていると思ったら、一気に身長が伸びていた。

その後も、高一まで、たまにバキバキ音をたてて伸びて、この身長になったのだ。


 背が高いだけで、スポーツしてるわけでもなく、何かに打ち込んでもいない。

何の取り柄もない、いたって呑気な女子高生なのだ。


だから、こんな私に、何を期待しているのか?

よくわからん。

あ、でも、私のことを知らないまま、メッセージしてるのかもしれない。

無作為に、誰にでも送っているかもしれない例の定型文

[お願い、私のママになって]

引っかかったのが私だけとか?  

そこら辺もまだ何もわかかってない。


 一度返信しちゃったせいで、あれから

バンバンメッセージがくる。

例の定型文メインで、プラス軽い自己紹介とか。

ほぼスルーしてるけど、たまに、なんとなく気が向いたら返信することもある。

推薦で2流大学に内定してるから、勉強しなくて済むし、結構暇なんだよね。


 でも、メッセージ交換と言っても、まだ大した話はしてない。

返信したとしても、おはよう、おやすみの挨拶程度なのだ。

だって、相手は子どもだもの。

メッセージの内容を間に受けた場合に限るけど、そうらしい。

五歳の女の子で、名前は、ルーシー

って、外国人?!


「ルーシーちゃんは、にほんじんですか」

理解できそうなシンプルな質問をひらがなで書いてみる。

「違うよ、私は魔女です」

思わずのけぞる。

何ですって、魔女?!

あ、ガキのジョークねと


「まじめにお返事してね。

ルーシーちゃんは外国人ですか?」

今度は、漢字も入れる。

「違うよ、魔法国の魔女です」

って、わー、ますます意味不明。

これじゃ、まったくヒアリングできない。


それに5歳にしては漢字知ってるし、魔女とか言ってるし、誰かに手伝って貰って書いてるしのかしら、背後に誰かいるのか、みたいな、虫食い状態に謎が入る感じだ。


 それに、ママになってということは、ですよ。当然ながら、パパがいるに違いないのに。

パパが気になるけど

そこんとこまでまだ聞けない。

でも聞いてしまうとそれもヤバい。

勘違いされても困る

みたいなひとり妄想をしていたが

急ぐことでもない。


「じゃ、またお話ししましょう。

おやすみなさい」

とりあえず、今日のところはこれでお終いにして寝る。

眠ろう。

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