4. 英雄伝
午前中の内にヤーツの研究所に辿り着けた。
研究所は前より壊れている・・・・・・。
「しかしあのイヤーウィングドラゴン迄が凶暴になるとは——。
ああ、僕はね、エアースクーターで海も渡っちゃうんだ。だから君達には違うルートを教えてあげるよ」
「あの、でもオイラ、急いでて——」
「大丈夫、5時間もあれば行けるよ」
「5時間で!?」
「うん、但し、着く場所はアダサート城内。だから無許可の城内侵入という事でとっ捕まる。それでもいい?」
「いい!いい! オイラ、アダサート城へ行かなきゃなんないから調度いい」
ヤーツが教えてくれたルートは、アダサート城の地下隠し通路だった。
その通路は非常用としてヘリオトロープの森へと繋がっている。
砂漠のビーストは強い為、もしもの場合の逃げ道らしい。
ヤーツにヘリオトロープにある隠し地下通路の場所を教えて貰い、早速向かう。
隠し地下通路は森の西側、大樹の影となる所にあった。
中は暗い洞窟のようで、バルーンを先頭にして、光る角の明かりで進んでいく。
「シンバよ、アダサートで誰と約束しておるのだ?」
「いいだろ、誰だって」
「しかしだな、このまま行けば城内。捕まってしまうのであろう?」
オーソは心配して言っているのに、
「捕まんねぇよ」
と、シンバは適当な返事。
何時間位歩き続けただろうか、そろそろ扉か階段らしきものが見えてもいいのだが——。
今、シンバは闇に蠢く何かを見つけた。
「シンバ? どうしたの? 急に止まって」
ディジーがシンバの顔を覗き込む。
「——いる。ビーストの気配だ」
シンバは剣を抜き、闇に走る。
それは蛇の変異型だと思われるビーストだ。
バトルにならない間に、シンバはビーストの肉を斬り裂き、心臓を抉り出し、握り潰した。
恐らくビーストは数秒の出来事で、何が自分の身に起きたのかもわからぬままの死だっただろう。多分、死んだ事すら気付いていない。
ふと直ぐそこに扉があるではないか。
しかし、押しても引いても開かない。
「どれ? 私に貸してみろ」
オーソはそう言って、扉を引いてみるが無理だ。
「シンバよ、共に体当たりといくか」
オーソの言う通り、その手段しかなさそうだ。
シンバとオーソは、ドーン、ドーンと扉にぶつかる。
何度目かの当たりで扉は壊れ、シンバとオーソは扉の向こうへ倒れ込む。
チャキッ・・・・・・
嫌な音がして顔を上げると、目の前には銃口。
シンバとオーソは手を上げ、起き上がる。まわりはアダサートの兵士達が銃を構えている。
「お前達何者だ!? 通路を通って来て、中にいたビーストはどうした?」
「質問する前に銃は下ろしてくんねぇ?」
「ならぬ! 何者かもわからぬ者にアダサートを守る者として銃は下ろさぬ!」
「——ああ、そうかよ、それなら、オイラだって兵士なんぞに話はないねぇ。アダサート王に会いに来た、どいて貰おうか」
シンバは手を下ろした。すると額の真ん中に銃口を突きつけられた。
「貴様、何様のつもりだ!」
「オイラはアダサートの兵士に感謝されても偉そうな口聞かれる覚えはねぇよ。お前こそ、何様のつもりだよ」
「私はアダサート兵の少尉にあたる者だ!」
そういえば、他の兵士と違い、胸元にメダルがついている。
「シンバ、少尉って偉いんじゃないの?」
ディジーが背後から小声で尋ねる。
「いーや。少尉ってのは将校の階級で一番下の事。つまり全然偉くねぇよ」
態と大声で答えるシンバに兵士達は銃を余計に向ける。少尉を名乗る男も、
「牢に放り込めぇーーーーっ!!!!」
と、かなり怒らせてしまったようだ。
「牢に入れる必要はない。銃も下ろしなさい」
そう言って現れた一人の男——。
「ストフル将軍」
シンバが、その男をそう呼んだ。
「やぁ、シンバ君。そろそろ来る頃だと思っていたが、まさかそんな所から登場するとは。兵士達も、英雄が、そんな所から現れるとは思わず、失礼な事をしたのだ。数々の無礼、お許し願えるかな? 英雄」
「英雄だなんて、やめて下さいよ」
シンバは照れ笑いしている。
「将軍、彼はあの英雄なんですか?」
「ああ、彼はあの英雄だ」
「こ、これは失礼致しました、英雄」
少尉はシンバに深々と頭を下げる。
「い、いや、だから、英雄は言い過ぎだよ」
シンバはそう言いながら、満更でもなさそうだ。
「モール少尉はアダサートに配属されて、まだ数ヶ月なのだ。シンバ君の事は話で聞いていただけで知らなかったのだよ。さて、先ずは隠し通路のビーストだが、いつからか住み着いてしまい、扉を固く閉ざしていたのだ。礼を言おう。全員!! 英雄に全員敬礼!!!!」
ストフル将軍の合図で兵士は皆、シンバに敬礼する。
「英雄、王が待っておる。案内しよう」
シンバはそう言ったストフル将軍と敬礼している兵士達の中を通り、行ってしまった。
オーソ、シュロ、ディジー、バルーンは、事の事態が飲み込めず、ぱかーーーーんと口を開き、間抜け面で呆然としている。
アダサート王はシンバを見て、喜びの声を出す。
「英雄よ、待っておったぞ。大臣よ、宴の準備をせよ。英雄の明日の勝利を祝おうぞ」
王の命令により、今夜は宴となりそうだ。
シンバは少し休もうと、一人、客部屋へと向かっていた、その時、
「これはこれは英雄、どちらへ?」
と、ディジーがペコリと頭を下げ、現れた。
「バーーーーカ」
「えへへ、兵士達に聞いたよ。シンバの英雄伝。3年前にアダサートを襲う物凄いビーストを倒したんだって? それで3年後にアダサートに戻ってくる約束を王としたんだって? 約束ちゃんと守るんだね。でもどうして王も3年後に戻って来るように言ったのかな?」
ディジーは言いながら考え込む。
「アダサートにはオイラの英雄伝の他に、もうひとつの英雄伝があるんだよ」
「——もうひとつの英雄伝?」
「砂漠の怪物スフィンクスを封印した英雄の話さ。その封印は千年後、解かれるんだとよ。そして明日の夜が調度その千年後。つまりオイラにそのスフィンクスを倒してくれと、そういう事さ」
「ふぅん、それが王との約束だったんだ?」
「別に。王と約束なんてしてねぇよ。一方的に頼まれただけさ」
「そうなの? でもオーソさんが言ってたよ? シンバはアダサートに約束を守る為に来たとかって。違うの?」
「違わねぇよ、約束はした」
「誰と?」
ディジーがそう尋ねた時、
「シンバーーっ!」
向こうからアダサート王の娘、ローズ王女が走って来る。
「王女! ローズ王女!」
と、シンバの嬉しそうな表情。
「シンバ、嬉しい! 約束を守って来てくれたのね!」
「勿論、オイラは王女の約束は死んでも守ります!」
「うふふ、死んでもなんて、シンバったら、死んだら約束は守れないから死んだら駄目よ。でも忘れてるでしょう?」
「え?」
「私をローズ王女って呼ばないでって約束したでしょう、ローズって呼んで?」
「そ、そうでしたね、で、ではっ、ロ、ロ、ローズ!!!!」
「うふふ、なぁに? シンバ」
ローズ王女にデレデレのシンバ。
「兵士達が英雄が来たって大騒ぎ。シンバが来たんだって、私、嬉しかったわ。スフィンクスを倒してくれるって約束忘れないで守ってくれるなんて、やっぱりシンバは英雄だわ。私、本当に嬉しいの」
「オイラも王女に、い、いや、ロ、ローズに会えて、すっごい嬉しいです!!」
「うふふ、シンバ、また後で会いましょう? 旅の話を聞かせて?」
「はい、勿論です! また後で!!!! 必ず!!!!」
王女は手を振って行ってしまう。シンバもニヤけた顔で、王女が見えなくなる迄、手を振り続ける。
「ふぅーーーーーーーーーーーーん」
ディジーが冷めた目でシンバを睨みながら、嫌味っぽく頷く。
「な、なんだよ、まだいたのかよ、お前・・・・・・」
「いちゃ悪い? それにしてもシンバって、優しい声が出せるんだね! 初めて聞いた! 私相手には出さない声だよね! あーぁ、気分悪っ!! 体調悪いから、もう寝る!! ホント気分悪い!!」
ディジーはベッと舌を出し、あっかんべぇをして行ってしまった。
「なんだアイツ・・・・・・変な奴だなぁ・・・・・・」
その夜——。
英雄到来に宴は遅く迄続いた。
そして次の日の昼過ぎ。
「スフィンクスはピラミッドにおる。古い書物によれば英雄オレハはピラミッドにスフィンクスを封印したと言う——。
英雄シンバよ、スフィンクスとは嘗て我等の血筋の者が生み出した生き物なのだ。
鳥の翼を持つ人面の獅子、アンドロスフィンクス。
女の頭と乳房を持つ、ジノスフィンクス。
知能も高く、戦闘力は計りしれん。いや、しかし、全ては言い伝えだ。だが事実、砂漠の中央にピラミッドは存在する。英雄シンバよ、千年の刻は来たり——」
アダサート王は不安を隠しきれず、俯いた。
「王よ、何も案ずる事はありません。スフィンクスはオイラに仕留められるのですから。王よ、オイラは千年先の王にも誓う。封印なんて英雄の使う技じゃない。後世に不安を残すような奴を英雄とは言わない」
「おお! しかし、それではオレハを英雄と言わずに何と呼ぶのだ?」
「己より強い者に立ち向かった、勇者、ってトコでしょうか」
「成る程。勇者オレハか。シンバよ、お前は英雄となり帰って来てくれるな?」
「勿論です」
王との約束も終わり、シンバはピラミッドへ行く準備を始める。
「ねぇシンバ。私、ここに残る。封印のピラミッドなんてお宝なさそうだし」
「ディジーさんが残るならば、わたしも残る!」
ディジーとオーソがそう言った。
「誰も付いて来いなんて言ってねぇだろ」
「あんちゃん、俺、一緒に行く。スフィンクスなんて化け物、面白そうだから」
シュロは大鎌を振り回し、やる気満々。
「ねぇシンバ。バルも連れて行けば? ピラミッドの中、暗いかもしれないでしょ? きっとバルの光る角は役に立つよ? ね? バル?」
ディジーがそう言うと、
「クルルルルルル」
と、バルはシンバについて来る様子。
「勝手にしろ。オイラの足だけは引っ張んなよ」
シンバは城を出て行く。
その後ろをシュロとバルーンが追う。
ディジーとオーソは見送る。
アダサートの城下町——。
「シンバーーッ、ちょっと待ってよぉ!」
その呼ぶ声にシンバは面倒そうに振り向く。
ディジーが息を切らし、走って来た。
「なんだよ、何か用か?」
「ハァ、ハァ、あの、えっと、その、あのね、頑張ってね!」
「はぁ!?」
「あ、えっと、その、だから、私じゃなくて、王女がそう言ってたの」
「王女が? オイラに? 頑張ってって? うっしゃーーーー! 気合い入ったぜ!」
「うん、頑張って! ほんじゃ、愛の伝言キューピッドは去ります!」
ディジーはまた走って、城の中へと戻って行く。
「え、おい!? それだけ!? お前はなんか言う事ねぇのかよ!? なんだよ、アイツ・・・・・・」
ディジーの背を見ながら、ふと視界にローズ王女の姿が入った。
見ると、町の青年と話をしている。
王女として町の者と親しくするのも仕事なのだろうか。
——王族ってのも大変なんだなぁ。
ローズ王女もシンバに気付き、笑顔で駆けて来る。
王女と話をしていた青年はシンバと目が合い、ペコリと頭を下げた。
シンバも、全然知らない青年なので、戸惑いながらも、軽く頭を下げた。
「シンバ、もうピラミッドへ行くの?」
「え? あれ? 王女、オイラがピラミッドに行く事、知らなかったんですか? でもディジーに頑張ってって・・・・・・? あれ? あ、あ、あーーーーっ!!!! あの女! またオイラに嘘言いやがって!!!!」
「何言ってるの? シンバったら変な英雄ね。無事に戻って来て下さいね。約束よ」
ローズ王女は、そう言うと、さっきの青年の所へ行ってしまった。
「クッソ! ディジーの奴、またオイラを騙そうと嘘言いやがって!!!!」
「そんな嘘吐いたって何の騙しにもならない」
シュロがそう言うが、シンバは首を振る。
「あの女の事だ、オイラの事を単純バカとか言って、後で笑う気だったんだ!」
「そうかなぁ」
「そうだよ!」
「あんちゃん、凄いひねくれて考えすぎだよ」
「ひねくれてねぇよ! どう考えてもそうだろうが!」
「どう考えてそうなんだよ、あんちゃん、ちょっと鈍すぎだよ」
「鈍い?」
「うん、鈍いよ、おねえちゃんの気持ちに、じゃなくて、自分の気持ちに鈍すぎ」
「はぁ!?」
「気付いてないだろ、王女が自分以外の男と話してても何も思わない事。そんな事より、おねえちゃんの事を怒ってばっかりいる。あんちゃんは、いつもおねえちゃんの事ばかり考えてる。おねえちゃんに構われたくて仕方ないんだ。好きなんだろ? おねえちゃんが」
「はぁ!? オイラとディジーは喧嘩ばっかしてるだろ、シュロだって知ってるだろ」
「知ってるよ。でも、喧嘩してるなんて思ってるのは、鈍いあんちゃんだけなんじゃないの?」
「はぁ!?」
「俺から見て、イチャついてるようにしか見えないよ」
シュロは、そう言うと、スタスタとバルと行ってしまう。
「お、おい、待てよ、シュロ! お前、何が言いたいんだよ!?」
シンバは、青年と話している王女を見る。そしてシュロを追い駆けながら、
「王族の者は王族の者同士か、王が選んだ相手じゃねぇと結ばれねぇから、オイラは安心してるだけ!! 安心してるから何も思わねぇんだよ!!」
と、何かに言い訳するように吠えている。
そして、そのまま、城下町を出て、砂漠の中心にあるピラミッドに向かった。
ピラミッドの中は只広っく、天も高くある。
迷路になっていたり、何かある訳ではない。
只、地に、陣が描かれている。
それがスフィンクスを封印した跡という事だろう。
「スフィンクスを封印した後に、このピラミッドを造ったのかなぁ? でもなんでスフィンクスみたいな怪物がこの世にいるんだろ? あんちゃん、知ってる?」
「事実は知らねぇ。でも聞いた事はある。人間は生命を弄び、そういう怪物が生まれたってさ。まぁ、どうでもいいじゃねぇか。オイラは強い奴と戦い、勝って、オイラ自身が強くなって、クリムズンスターを装備できるようになれればいい。兎に角、楽しいバトルがしたいだけ。人ってさ、いつ死ぬかわからねぇだろ? 明日の命の保証なんてどこにもない。だから、今、楽しければいいじゃねぇか。快楽に身を預けちゃえばいい。だからオイラはスフィンクスを殺してみたいだけで、本当は英雄でもなんでもない。スフィンクスの素性も知らなくていい。過去も未来もいらねぇから」
「もしもスフィンクスが過去の人間達の命を弄んだ結果だったら、それは償うべき罪だろ? 明日の命の保証がないなんて、簡単に諦めてる者に、神は味方しないと思う。命ってものは神だけが造るんだ。それを人間が弄んだなんて、そんなの人間の思い上がりだ。そんな人間に罰を与える為に、神は天からスフィンクスをこの世に堕としたんじゃないかな? だとしたら、俺達は明日を守る為に精一杯戦うしかない。何かを守る為に精一杯戦う事は神に許しをもらえる事だと思うから」
「元王族の時に習ったのか、神の理論は」
「・・・・・・俺自身、狂気に溺れたバカな奴なのに、偉そうな事言って、間抜けだな。何も聞かなかった事にしてよ」
シュロは、そう言うと、フッと悲し気な笑顔を見せた。
——神は天からスフィンクスをこの世に堕とした・・・か・・・・・・。
——なんにしろ、オイラの強さになるなら問題はない。
——化け物だろうが、神だろうが、オイラの血となり、肉となるなら、なんでもいい。
——明日なんていらない。
——ほしいのは自分が生きれる時間内での最強のチカラだけ。
「クルッ、クルクルクルッ、クルルルルルルルルルルッ!」
突然バルーンが騒ぎ出した。
本当にスフィンクスなどがいて、封印が解けるというのか——!?
アンドロスフィンクスとジノスフィンクス、二頭の翼が、地に描かれた陣から盛り上がり、現れようとしている——。
アダサート城は、いつもと変わらぬ時間が流れている。
中庭で月を見上げているディジーに、オーソはそっと声を掛ける。
「月が綺麗ですね」
ディジーはオーソに笑顔で頷くと、オーソも嬉しそうに笑顔になる。
「ねぇ、オーソさん・・・・・・」
「はい?」
「人って死んでも生まれ変わって、また、逢えたりもするのかなぁ?」
「へ?」
「生まれ変わっちゃったら、新しいスタートとして、前の事とか全然わかんないよね。逢えても意味ないかぁ・・・・・・」
「——いいえ。意味のない事など何一つない。例え違う誰かになってしまっても、人でなくとも、生まれた息吹は、昔の出逢いを語り、惹かれ合うでしょう。誰かがお亡くなりになったんですか?」
「・・・・・・んーーん、聞いてみただけ」
ディジーは月を見上げる。
オーソは思う——。
ディジーの旅は死んでしまった誰かを探しているのではないだろうか。
しかし、何も聞けない。
その時、兵士達が騒ぎ始めた。
「ピラミッドが崩れ落ちたぞぉーーーーーー!!!!!!」
その叫び声にディジーの表情が難くなる。
「・・・・・・嘘。シンバは? シンバはどうなったの? シュロ君は? バルは?」
「落ち着いて下さい、ディジーさん! 大丈夫、大丈夫ですよ。あのビーストハンターのシンバ・フリークスですよ! 負ける筈ありません! 殺されたりしませんから!」
——そう、怪物程度に奴は殺せやしない。
たった今、ジノスフィンクスに止めを刺したシンバ。
しかし休む暇はない。
崩れたピラミッドがバトル範囲を広げ、アンドロスフィンクスが飛べば、空へ逃がす事になる。そうなれば、打つ手がなくなってしまう。
シュロは残った力の限りで、大鎌をぶん投げた。
大鎌はブーメランの様にクルクル廻りながら、アンドロスフィンクスの片翼を切り落とし、再び、クルクルとシュロの手の中に戻って来た。
バルーンは丸い身体を生かし、ボールの様に弾み、スピードをつけ、全てを込めて、もう片翼に突進し、穴をあけた。
シュロもバルも、ジノスフィンクスに止めを刺す前から、かなりのダメージを喰らい、血を頭から大量に被った状態な程、血塗れで、それでも限界を超えて迄、最後の一撃を放った。
シュロはシンバに二ヤリと笑って見せ、ドサッと倒れ、バルも転がり落ちた——。
——あんちゃん、後は任せたよ。
——クルルルルルルルルル・・・・・・。
シンバの鼓動がドクドクと、その脈打ちを感じる。
何かが変わり始めていた。
——何故だ、こんなに長時間バトルなのに。
シンバの中で何かが変わり始めている。
——何故だ、思考がハッキリしている。
そう、ブルーに沈む自分も見えない。オルゴールの音色も聞こえない。
まるで、何かの呪縛から解き放たれたように。
——なんだ、この感覚。
——これが、死への恐怖?
——違う、死への恐怖じゃねぇ。
——でも強く想う、死にたくねぇって。
——何故だ?
恐怖に震える訳ではない。だが、生きたいと強く思う。
力を出し切った後も、限界ギリギリで、シンバにバトルのチャンスを作ったシュロとバルの、そうした迄の、生きたいと思う念が、シンバに伝わっているのか。
——死にたくねぇ。生きて帰るんだ、生きて帰って、アイツに言ってやるんだ。
——アイツ?
自分に問い掛けるのは、自分の気持ちがわからないから。
——アイツって誰だよ?
——誰に何を言うんだ?
倒れているシュロとバルを巻き込まぬよう、場所を選んでバトルをしている自分に、混乱しながらも、ふと、わかってしまう。
——ディジーに文句言ってやる!
——シュロだって、バルだって死なせやしねぇ!
——アイツに・・・・・・、ディジーに何一つ文句は言わせねぇ!
シンバの中で、今ではなく、明日に生きる糧が生まれる。
ディジーの笑顔が見える。
——くそっ! シュロが妙な事言うからだ!
『——好きなんだろ、おねえちゃんが』
——好きじゃねぇよ!!!! あんな奴!!!!
シンバのソードがアンドロスフィンクスの心臓を貫く。
奇声をあげ、怪物が息絶える。
「——ハァ、ハァ、ハァ」
息を荒くし、気付くと、まわりにはアダサート兵がいた。
応援に来てくれたのだ。
「日が登る。英雄よ、勝利の光だ」
ストフル将軍がそう言い、シンバは微笑む。
すると兵士達が、勝利の喜びに歓声を上げた。
倒れているシュロとバルは手厚く運ばれる。
シンバは、将軍の手さえ、拒否し、一人で、歩き出した。
城では、シンバを心配していたローズ王女が、英雄の無事の帰りに、門迄、迎え出た。
「シンバ! 約束を守って、無事に戻って来てくれましたね! 嬉しいわ!」
しかし、そう言った王女の横を素通りし、その後ろにいた、ディジーの目の前に立った。
ディジーは余りにも酷いダメージのシンバの姿に驚く。
「お前、またオイラを騙そうと思って、嘘吐いただろ」
「え? 何が? ていうか、そんな事より早く手当てしないと!」
「いいから聞けよ! オイラは騙されてねぇからな!!」
「・・・・・・私、何か言ったっけ?」
「とぼけんな! 何が頑張ってだ! そんな事、王女は知らねぇってよ! どうせ、喜ぶオイラ見て、単純馬鹿とか思ってんだろ! お生憎様、お前の嘘なんてバレバレだぜ!」
血だらけで、そんなどうでもいい事を言い出すシンバに、ディジーはビックリするが、直ぐにクスっと笑って見せて、
「なんだ、もうバレちゃったの。つまんないの」
そう言った。
「それになぁ、オイラは頑張った! お前は何一つ文句言えねぇだろ! ザマーミロ」
「そうだね。王女との約束も守って、無事に戻って来たもんね。今回ばかりは何にも文句ないよ。流石だね、英雄!」
「違ぇだろ!」
「え?」
「お前が、王女が頑張ってって言ったとか、嘘言ったんだろーが!! でもオイラは、嘘とわかってても頑張ったんだよ!! だから誉めんとこが違ぇんだよ!!」
まさかのそのセリフに、ディジーは、
「そっか・・・・・・私が言ったから・・・・・・頑張ったんだね・・・・・・バァーカ! 頑張りすぎでしょ!」
そう言って、笑顔を見せる。その笑顔に、シンバはへっと笑い、そのままディジーに倒れ込んだ。
「オイラはお前と違って嘘はつかねぇ。約束は守る。だから・・・・・・心配しなくていい——」
ディジーはシンバを抱き締め、
「うん、そうだね」
心配して泣き腫らした赤い瞳で頷いた。
その日、英雄は、深い眠りについた——。
シンバが目覚めたのは、それから丸一日過ぎた朝だった。
シンバの眠っていたベッドの直ぐ横で、ディジーがうつら、うつらしている。
その向こう側のベッドには、シュロとバルが包帯だらけの姿で眠っている。
驚いたのは、こんな近くに人がいるのに深い眠りにつけた自分。
誰も起こさないように、そっとベッドを抜け出し、シンバはその部屋を出た。
オーソは違う客部屋で二日酔いである。
「シンバ君! いや、英雄!」
「あ、ストフル将軍」
「もう休まなくていいのかい? まだゆっくり寝ててもいいのだよ?」
「いえ、これ以上寝るのも疲れますから。ていうか、思ったより重症じゃなくて、あんなに血が出てたのに、全然大丈夫でした。大袈裟な感じで逆に恥ずかしい」
「いや、本当に流石だよ、英雄! スフィンクス相手に、その程度の傷で済むなんて! しかしキミは変わったようだな」
「え? 変わった?」
「三年前、キミはもう少し身長が低かったかな。まだまだ幼い表情で、優しい少年の笑みを見せていた。しかし、キミは何かに脅えていた。いや、常に警戒していた。小さな風の音にも剣を抜く程だったよ」
「そう・・・・・・ですか? 多分、それはトラウマだったんですよ。幼い頃にビーストに襲われた記憶が、風の音さえも脅えさすようになってたんでしょう」
「トラウマを克服し、今のキミがいるって事かい?」
「いや・・・・・・」
——風の音にも警戒していたのはトラウマだったのだろうか?
適当に言った事に、責任はもてない。
ましてやシンバ自身の事なのに、何もわからない。
しかし、変わった原因がふと思い当たる。
己が変わったと思われるなら、それは環境が変わった事であり、それも最近の事。
「怪しい音は風でも、ビーストでもなく、全部、ディジーなんですよ」
「ディジー? キミの仲間の女の子だね」
「仲間なんかじゃありませんよ! アイツ、物音なく近付いてくれば驚かしてきやがって、足音に振り向こうものなら突き飛ばし、もう絶対、驚かねぇし、あんな奴相手に剣なんて抜けませんよ!」
「ふっ、クックック。いや、すまない」
ストフル将軍は笑みを零し、謝った後、笑みを必死で堪えている。
「いいですよね、笑って見てられる奴は。アイツに弄ばれるオイラの身にもなってみて下さいよ」
「ハハハ、これでは英雄も女の子一人に形無しだな。しかし、いい子じゃないか。キミの為に寝ずの看病をしたりして」
「アイツはオイラじゃなくて、シュロやバルを看病してたんですよ」
「そうか。彼女がどれ程キミを想っているかなど、眠っていた本人は知るよしもないな」
「——え?」
「いや、しかし、キミがこうも大きく変わったのは、彼女の存在がそうさせているんだな。シンバ君、彼女との出逢いは運命だったのかもね。二人でディスティープルにでも登ってみてはどうかね?」
「——冗談はやめて下さいよ」
シンバが苦笑いでそう答えると、ストフル将軍は笑いながら、その場を立ち去った。
静かなローカに、一人、立ち尽くす——。
ふと、ローカを駆け抜ける風にビクっとする。
そして今、丸腰の事に気がついた。
飾られてある絵画の女性の瞳にハッとする。
シンバの頬に汗が流れ落ちる。
忘れかけていた何かが蘇るように、シンバを支配する何か。
何もわからないが、変わっちゃいけないと悟る。
——このまま、オイラは変わっちゃいけない。
向こうに続いているローカの影。
闇に潜む者が獲物を狙っているんだ——。
バッと後ろを振り向くと、
「うわぁっ!!!!」
無言で音もなく立っていたディジーに驚いて、シンバは後ろへ身を引く。
「勝手にベッドからいなくなって心配したよ! 一人でなにやってんの! こんなとこで!」
「ほ、ほっとけ! お前こそ、驚かすなよ!」
「そっちが勝手に驚いたんでしょ! ねぇ、それより、体は大丈夫? どこか痛い所とかない? シュロ君やバルと違って、シンバは軽傷だったけど——」
「そんなの、お前に関係ないだろ」
「心配してあげてるのに、どうしてそんな言い方するかなぁ!」
「お前、いつまでオイラと一緒にいる気なんだよ?」
「なに急に——」
「違う大陸に渡れたんだし、お前に対するオイラの義務ってのは終わったんじゃねぇのか? いい加減、オイラの前から消えてくんねぇかなぁ。お前といるとオイラは変になる」
「——変?」
「ああ、変になる。驚いたよ、傍に誰かがいて眠りにつけた自分に。油断っての? そういう無駄な事を身につけたくないんだよね。わかるだろ? オイラはビーストハンターなんだよ、もっと強くなるんだ。強くならなきゃ駄目なんだ! 弱さになるようなものは必要ないんだよ」
「弱くなる? シンバ、充分強いよ」
「強くねぇよ!!!!」
大声を出すシンバにディジーは黙り、考える。
——この人は、何に脅えているの?
——世に名を知られる程の強さを持ちながら、何故、脅えているの?
——多分、それは、シンバにないものがあるから。
「だったら、強くしてあげるよ」
「は?」
「私がシンバの強さになるの。シンバが弱い部分は私が補って、私が弱いところはシンバが補うの」
「はぁ?」
「一人より二人のが強くなれるって事! そう思わない?」
「それで、お前の気まぐれで、お前がいなくなったら、オイラはどうなるんだ? オイラは弱いままになる」
「いなくなんないよ。私、シンバにずっと付いて行くよ? 心細くなった時とか、独りだと思った時とか、振り向いてみて? 私がいるから。絶対に、私、いるから。傍にいる」
「なんでお前はそうやって、また嘘ばっか!!」
「嘘じゃないから!!」
「またオイラを騙して!!」
「騙してない!!」
「だったら簡単に言うなよ!! そんな事!!」
「簡単だもん!! 一緒にいるよ!!」
「だから! そうじゃねぇだろ! そうじゃねぇんだよ! 一緒にいちゃ困るんだ、迷惑だって言ってんだよ!」
「なにそれ! ていうか、そんな事言って、シンバの方が嘘吐こうとしてない?」
「なんでだよ! オイラは嘘は吐かねぇよ!」
「なら私に似合うアクセサリー、ちゃんと買ってよね! まだ買ってくれてもない癖に、一緒にいちゃ困るなんて、そんなのこっちが困るよ!」
「か、買うよ、いつか買うけど、それとこれとは話が違うだろ!」
「——私はね、別に行く宛てなんてないし。何処にいるのかもわからないの。何処にもいないのかもしれないし。そういう旅なの。私、探してるの」
——まぁた、突飛な意味不明発言だよ。
シンバは溜め息をつきながらも、
「なにを探してるんだ?」
そう聞いてみる。
「——家族」
「家族?」
聞き返すシンバに、ディジーはクスッと笑う。
「ねぇ、シンバ。シンバが、邪魔だ、付いて来んなって怒っても、迷惑がっても、困られても、私は付いて行くから。何言っても付いて行くから。何言っても無駄だと思うよ?」
「もういい、勝手にしろよ」
呆れたように、そう言ったシンバに、あっかんべぇをして、
「勝手にするもーん!」
と、背を向けて、行こうとするディジーに、
「あ! おい! あのさ! えっと・・・・・・あの・・・・・・」
と、そこまで言うと黙り込み、頭を掻き出したり、腕を組んだり、急に挙動不審な動きになるシンバ。クエスチョン顏で、首を傾げ、
「なぁに? どうしたの? 他に文句でもあるの?」
と、少しムゥっとした顔になっていくディジー。だが、
「ストフル将軍に聞いたよ、寝ずの看病してくれたんだってな? まぁ、どうせ、オイラはシュロやバルのついでなんだろうけど・・・・・・ありがとう・・・・・・」
最後に、目を逸らして、もごもごと口の中だけで、ありがとうと呟くように言ったシンバに、ディジーは驚いた顔になる。でも直ぐに笑顔になって、シンバの傍に駆け寄って、
「なぁに? なんて言ったの? 聞こえなーい!」
と、からかうように、シンバの顔を覗き込んだ。
「二度と言うか!! てか、言わせんな!!」
「えー? なんでー? ホントに聞こえなかったんですけどー! もう一度言ってよー!」
「言わないっつってんだろ、聞こえなかったお前が悪い!!」
「言ってよー! 言って言って言ってー!」
「あー、もー、うるせぇうるせぇうるせぇ!!」
もう風の音にビクついてた自分はいなかった。
そんな自分はダメなんだと、そう思っていても、ディジーの笑顔に流されてしまう。
——あぁ、またオイラ、コイツの術中にはまってる。
そう気付いていても、もうディジーを突き放そうとは思わなかった。
そして、アダサートを旅立つ日。
シュロもバルーンも包帯を巻いている部分もあるが、略、完治と言ってもいい程の回復。
子供と獣は治りが早い。
シンバとシュロとバルーンは王に呼ばれ、別れの挨拶をする事になった。
「英雄シンバよ、そなたの英雄伝はアダサートが続く限り、永遠に伝えよう」
王の言葉に、シンバは首を振る。
「伝説は勇者だけで十分ですよ。
勇者は英雄にはなれない。しかし、英雄は勇者には勝てません」
「——それは? どういう意味だ?」
「英雄とは勝利を確信し、戦いに挑む者。勇者とは勝てないとわかっていても、負けない為に戦いに挑む者です。その勇気に勝てる者などいません」
「——だが、しかし」
「オイラはスフィンクスを倒せると思ったから戦いに挑んだ。倒せないと思ったら、ここには現れませんでした。そんな奴の英雄伝など伝える必要はない。オイラが旅を続け、また、何年か過ぎて、アダサートに立ち寄った時、勇者オレハの、勇者伝説を聞かせて下さい。王よ、また、いつか——」
挨拶をすませ、旅の準備が終わり、城を後にする。
城下町でローズに出会い、シンバの表情が明るくなる。
「シンバ、もう行ってしまうの?」
ローズ王女は哀しそうに俯く。その姿に、
——オイラと別れるのが哀しいんだ。
などと思ってしまうシンバ。
「あ、あの、王女、オイラ、その、ローズ王女の事が、その、あの、だ、だから、だからですね、悲しまなくても、オイラは——」
「シンバ」
「は、はい!」
「結婚式には必ず来て下さいね!」
「けっ、結婚!? オイラ達、まだ手も繋いでないのに!?」
シンバがピラミッドに行く前に、ローズ王女と話していた町の青年が現れた。
「彼との結婚を考えているの。お父様は反対しているけど、私は彼と結婚するわ。彼を愛してるもの!」
ローズ王女は言いながら、その青年と腕を組み、ラブラブ状態を見せる。
「へぇ、身分違い過ぎるのに、随分と勇気あるね」
シュロが青年にそう言うと、
「皆、そう言うよ。でも僕はローズを愛してしまった。それを勇気と言うなら、僕はローズの為に勇者になろう」
などと、青年はカッコいい台詞を吐き、ローズ王女も惚れ惚れと青年を見つめる。
「王女、お幸せに——」
——笑顔でそう言う他に何が言える!?
「有り難う、シンバ。英雄が祝福してくれるなら、お父様も反対はしなくなるわ。ねぇ、シンバ、結婚式には来てね。約束よ」
「勿論です。約束は守ります」
ローズ王女は嬉しそうに頷き、青年とイチャつきながら行ってしまった——。
どよーーんとした空気が流れずに沈む。
「英雄は勇者には勝てない、か。あんちゃんが王に言った台詞、訳わかんねぇって思ったけど、わかったような気がするよ」
「やかましいっ!!!! オイラはそういう意味で言ったんじゃねぇっ!!!! ちくしょーーーーっ!!!!」
ディジーが吠えるシンバの背中に、ドンっと頭をぶつけて来た。少し震えている。
——泣いている? もしかしてオイラの為に?
「——ディジー? オイラ・・・・・・」
「クックックッ、くっ! あーーっはっはっは、もぉ駄目ぇ、苦しい、うひぃ、ひひひ」
——コイツ、笑い、堪えてやがった!
「あはははは、王女、お幸せに、だってぇ。無理しまくっちゃってぇ。あははははははは」
「やかましいっ!!!! 無理したんじゃねぇ!!!! 頑張ったと言え!!!!」
「あはは・・・・・・。そうだね、頑張ったんだよね。シンバはカッコいい英雄だったよ。勇者には勝てなかったけど」
「やかましいっ!!!! 勝てなかったって余計だ!!!!」
「だから、はい、ご褒美」
ディジーはそう言うと、シンバの頬にちゅっとキスをした。
「うわぁっ」
驚いて、仰け反りながら、キスされた部分を拭くシンバ。
「ちょっと!! なんで拭いてるの!! 私のキスを!」
それについて怒り出すディジー。
「ゴルァーー!!!! シンバァ!!!! 死ねぇ!!!!」
シンバの首を締めるオーソ。
「・・・・・・バル、俺達は他人のふりしてような」
少し遠くで見ているシュロ。
「クルルルルルル」
シュロに頷くように、鳴くバルーン。
三年前、アダサートを襲う、恐ろしいビーストが英雄により仕留められた。
まだ少年の笑みを残す、その英雄の名を知らぬ者は、彼をこう呼んだ。
孤独の獅子と——。
群れからはぐれた獣のように注意深く、しかし、獣のように、彼は強い——。
「獣のように、彼は強い。獣のように、か——」
黒いマントで身を全て包んだ者が、アダサートの昔の英雄伝を語ったバイブルを手に取り読んでいる。
マントのフードもしっかり被り、全てを隠す姿は、気味が悪い。
そして、
「英雄シンバ・フリークス・・・・・・」
繰り返し、英雄の名を呼び続けていた——。
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