第33話
ルルはニマーっとした。
私が気味の悪そうな顔をすると、ルルはそーっとポケットから箱型の電子機器を取り出した。私は咄嗟にそれが何なのか理解し、大袈裟に「それは!」と叫んだ。すると、杉本の顔が少しずつ青ざめてきて、私の首を締めている手が徐々に緩まっていった。
「杉本くん、これが何か分かるかい?」
私の視界の端に、杉本の喉仏がごくりと飲み込むような動きをした様子がうかがえた。
「録音機だよ。君が取り引きを持ちかけた時にこっそりスイッチを入れたんだ。君がさっき言っていたことはすべて録音させてもらった。フフフ、分かるよね。」
刀が床を何度もこする音から、杉本の左手が震えているのがわかった。彼の右手の力が完全に抜けているのに私は気が付くと勢いよく彼のそばをスッと離れた。孤立した彼は私に見向きもせずに、虚な目で床を見ながら何かをブツブツと呟いている。
ルルは立ち上がって「これで終わりだー!」と杉本に録音機を見せびらかしながら大声を出した。杉本は涙目になりながらもブツブツはやめずにルルの方に視線を送った。
「俺たちの言うことを聞いてもらう。まず、下の人間どもを排除して欲しい。剣道全国のお前なら、それくらいのこと造作のないことだろ?」
杉本の口は動くのをやめていた。彼の目はしっかりとルルのことを睨みつけている。
「いいだろう。お前らの作戦にのってやる。ただし、一つ条件がある。おい、心美。出てこい。」
私は一瞬ヒヤッとした。嫌な予感がした。
私の横に風が走り、螺旋階段に続く通路から心美が姿を現した。彼女は真っ白なYシャツと黒のズボンを着用していて、私と目があった時彼女は首を傾げながら目を大きく見開いていた。彼女の目からは殺意が感じとれた。服装がいたって普通なだけにそれが余計に怖く感じた。
ズシュッと鈍い音がした。
私が音の方を見ると、杉本の持つ斬魂刀がルルの胸あたりに突き刺さっている様子がうかがえた。刃の少し隣りにはルルが抱えている録音機がある。恐らく、心美の登場に気をとられた隙をうかがっての行為だったのだろう。杉本は苦い顔をして、刀を抜きとった。
刀が抜かれるとルルは一目散に杉元から距離を置いた。傷を抑えて苦しそうな表情をしながら、常に杉本を注視する姿勢を崩さない。
「すまん、心美。やっぱり、俺はこいつらの味方をする。あの録音機がどこかに繋がっているかもしれんしな。」と杉本は心美を睨みながら言った。
「う〜ん、じゃあ私も協力しよっかな。明梨いるし。」心美はさっきまでとは打って変わって、違和感のない普通の表情を作りながら、自分の髪の毛を触っていた。その普通の顔というのが普段通りすぎて、私の怒りのゲージが軽く沸点を超えてしまった。口を開き手を上げたタイミングで、怒りゲージが一気に下降したのを我ながら褒め称えたい。
死者転生なんて @konohahlovlj
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