第28話
プルルルルル……プルルルルル……
「あ、もしもし。こちらルル。カスタードさんたちと門の前に来たんだけど、作業員どこにもいなくてさ。どこいるんだ?」
しばらくの沈黙が流れた。
「は?もう門の向こう側に行った?おいおい、それじゃあ俺たちはどうすればいいんだよ。カスタードさん裏切るつもりか?」
ルルは車内の床を思いっきり蹴った。
「あー、もう分かった。こっちでなんとかするよ。ったく。」
ルルは携帯を閉じると、それをポケットにしまいながらカスタードさんにこう言った。
「ダメです、あいつら。バレそうになって先に行きやがりました。」
ルルは深いため息を吐きながら、背もたれに倒れ込んだ。
それと同時に、車外から車がノックされる音がした。私が窓の外を覗くと、そこには田中さんが気味が悪いと感じるほどの満面の笑みで立っていた。私はすぐに窓ガラスを下ろして、彼に対して不思議そうな表情をわざとらしくとった。
「明梨、ここの人たちは一体誰なんだい?」
「えっと、私の友達です。あと、お母さんもいます。お母さん関連の友達もです。」私はつい目を泳がしながら言ってしまったことを後悔した。
「なるほどね。そこの運転席の女?はなんて名前なんだ?」
私は隣に座っているカスタードさんに目線を送った。彼女は、いつの間にか例の大きめのハットを被っていて、顔をこちらに向けずじーっとハンドルを見つめていた。
「えっと、彼女、カスタードっていうんです。ちょっとシャイで、こっち向いてくれないんですけど〜。」
田中さんは顎に手をやりながら、「ふ〜ん、怪しいな。」と呟いた。
「後ろに座っている、その大男は誰なんだい?」
「この2人は用心棒ですよ!カスタードは金持ちなんでね。」私が口を開いたのと同時にルルが大声でそう答えた。
田中さんは納得したように頷くと、次にこう私に訊いてきた。
「あの男の隣にいるのは、明梨の母親か?」
「明梨の母です〜。町子っていいます。」また、私が口を開いたのと同時に母が大声で答えた。
田中さんは「そうかそうか。」と言いながら深く頷いた後に、カスタードさんの方に一瞥してその場を立ち去っていった。彼が見えなくなると、車内に安堵の空気が流れた。
その空気を断ち切り、仕切り始めたのはルルだった。
「カスタードさんは有名人だから、あまり動かない方がいいな。明梨ちゃん、本当に門の開け方知らないのか?なにか、ヒントになることでも知ってくれてたらありがたい。」
「全く、知らない。ごめん、ルル。」
「そうか。じゃあ、俺と明梨ちゃんで門の開閉室にでも行ってみるか。道具をもしかしたら、残してくれているかもしれないからな。」
ルルはそう言うと、2列目の男に隙間を開けてもらって外に出た。そのまま彼は私の席のドアをノックして、私がシートベルトを外している間に、ドアを強引に開けて私を外に引っ張り出した。
「自分で出るわよ。引っ張らないで。」
「すまん、だけど急いでるんだ。早足でついてきてくれ。」
ルルは門の方に向かって、大股の早足で歩いて行った。私はそれを小走りで追った。
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