第25話

 母が事態を飲み込むのにあまり時間がかからなかった。カスタードさんの一言一言に、母は頷ずきながら目を輝かせていた。

 「と、いうわけです。町子さんももしよければご一緒しますか?」とカスタードさんは母に微笑む。

「ええ、明梨も行くんでしょ?私も行きたいわよ!」

 「お母さん、危険な賭けなのよ。私は、それにのるしかないけれど。」

「明梨をほっておくなんて、私には出来ないわよ。私も参加します!」

 「うふふ、親子関係が良くなってて、よかったわ。さあ、ルル行きましょう。」

 カスタードさんは、そう言うとどこかに向かって歩きだした。それをルルが続き、最後尾に私と母が並んでついて行った。

 歩きながら、母が私に話しかける。

 「カスタードさん、彼女は本物だわ。本物の目をしてる。私には分かる。」

「本物の目?」確かに目は鋭かったが。だけど、お母さんの勘は別に正確無比じゃないからなぁ。

 しばらく歩くと、カスタードさんは道路の脇に停められているワゴン車の隣で立ち止まった。すぐにポケットから携帯電話を取り出して、どこかへ電話をかける。私と母は、盗み聞きしないように少し離れた位置で待機した。

 私と母は会話しながら、待っていた。カスタードさんが大声で私たちを呼んだ。私たちが彼女のところに行くとすぐに、カスタードさんは「この車に乗って。」とワゴン車を指さした。車内を覗くとすでにルルが助手席のシートに腰掛けている。私と母が2列目のシートに続けて座るとすぐに、外からカスタードさんが窓をコンコンして「ごめんなさい。三列目に座ってくれる?」と言った。私たちが三列目に座るのと同時に、カスタードさんは運転席に座り胴にシートベルトをかけた。

 「予定より、決行時刻が早くなりそうなの。寄るとこもあるから、ちょっと飛ばすわね。」

 カスタードさんは、ルームミラー越しに私たちに微笑みかけると、すぐにワゴンを発進させた。

 10秒くらいでトップスピードになると、車はすぐに住宅街を抜けた。住宅街を抜けるとそこは先の見えない荒野になっていて、荒野に敷かれている道路だけが安心感を我々人間に与えていた。カスタードさんは、車をビュンビュン飛ばす。思いの外、車通りが少なかったため、車は全くの減速なしで目的地に向かって走った。

 車は途中の分かれ道で左に曲がるとパーキングエリアに入った。カスタードさんは必死に減速しながら、停める場所を必死に探していている。ルルはカスタードさん携帯を手に取って、電話をかけた。

 「うどん屋さんの前だそうです。」とルル。

 「うどん屋さんね。了解。」

 カスタードさんは、すぐにうどん屋さんを見つけると、車に少しアクセルを加えてキキッと音を立てながら静止させた。

 車の横に立っていたのは、大きめのコートを羽織った2人の大男たちだった。

 

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