第24話
「お母さん、久しぶり。また、会えるなんて夢にも思っていなかった。死者の国でだけど。」私は、顔を強張られながら言った。
「ううん。私は、会えただけでいいのよ。明梨は知らないでしょうけど、何度も何度も帰っておいでってLINEやメールをしていたのよ。ブロックしてたから、全部知らないでしょうけど。」
「ごめん。でも、私、てっきりもう無理だと思ってた。長い間家出していたし、本当はあの10年の間何度も戻りたいって思っていた。」
私の感情が昂る反面、母の涙はおさまっていた。
「いいのよ。私たちが悪いんだもの。カメレオンと結婚させようなんて、そりゃ怒って当然だものね。冗談半分のつもりだったのよ。」
母は言葉通りに、少し笑顔を作った。その笑顔はとても人為的なものに見えた。私は余計情けなくなり、さらに感情が昂ってしまった。
「お母さん!」私は、声を張り上げた。
「産んでくれてありがとう。育ててくれてありがとう。ろくに結婚や恋愛をしない娘のために頑張ってくれてありがとう。私、まだ…。」言おうとしていたことがあまりにも情けなくて、私はつい涙ぐんで言葉を詰まられてしまった。
「もう、いいの。それだけでいいの。明梨の言いたい事は全部わかってる。私の方こそありがとうね。私の元に産まれてきてくれてありがとう。私の為に元気に育ってくれてありがとう。最後の最後で寂しい思いさせてごめんね。」
「違う!違うよ!!悪いのは私なの。私の自業自得なのよ!!お母さんは悪くない。謝る必要なんてない。」
「いいのいいの。」
母は、そう言いながら、私に優しくハグをした。私は上から彼女の顔を覗き込むと、彼女は幸せそうな表情をしていたので、私の方からも両手で彼女の体を引き寄せた。しばらくの抱擁の後、母は手を引っ込めてこう言った。
「私ちょっと、役所の方に行かないと行けないから、明梨待っててくれる?」
「分かった」と私は頷いた。
母は周囲を見渡して「役所どこだろう。」と呟いて辺りをウロウロし始めた。
「お母さん、こっちだよ。」
私はそう言うと、母の手を引っ張って役所まで連れて行ってあげた。
「明梨〜!」
昼過ぎ、ルルとカスタードさんと一緒に広場をブラブラしていた私は、この声で立ち止まった。
「明梨!お待たせ!!私、お母さんの町子。見て見て、明梨似の美人になったでしょ?」
私の母を名乗る女が、私の前に立った。顔をよく見ると、確かに今の私の顔にそっくりだ。目元がカスタードさんみたいにクールビューティーなところがちょっと違う。私の目元はもっと優しい。鼻と口はかなり似ている。
「この世界だと美人になれるの?って訊いたら、職員になれば自分の容姿を自由に決めれるって言ってて〜。明梨、職員やってるんだって思って、私もなっちゃった。」
母は、ニカッと笑った。私は、苦笑いをした。
「これでまた一緒にいれるね。明梨と、でその後ろが明梨の上司さんかしら。」
カスタードさんは、数歩前に出て私の横に並んだ。
「初めまして、ラーマ・カスタードです。あなたが町子さんですか?ちょっとお話があるのですが…。」
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