第18話

 「飯田さんってどんな人なの?」

 「スッゴいイケメンだよ。身長が確か180cmくらいあって、ピアス付けて金髪にしているから多分遠くからでも分かると思う。」

 う〜ん。見たことないぁ。

 「心美は、その人のことどう思っているの?ちょっとでもいいなって思っているとかある?」

 「なくはないかな。でも、あまり興味ないかも。私、外見より内面気にするタイプだから。」

 心美の顔がなんだか得意げになった。

 「鈴木さんが心美にはいいのかしら?あ、でも田中さんは良い人っぽいし。」

「田中さんはダメよ。見た目、おじさんだし。」

外見より内面じゃないの?

 「だったら、鈴木さん一択じゃない?あなたの直々の上司でしょ?」 

 「鈴木さんはね〜。悪くないんだけど、なんか違うんだよな〜。」

「何が違うの?」

「私の理想の彼氏像と違うのよ。」 

 「何それー。折角のチャンスなのに。」

 「あ、明梨。そろそろ帰らなきゃ。またね。」

 掛け時計を見た心美はそう言うと、急ぐようにして立ち上がり部屋を後にした。

 私のデスクには大量のお菓子とそのゴミが放置されている。仕方ないわね。私は、中身が入ってる個包装と入っていない個包装で分け、入っていない方をまとめてゴミ箱に放り込んだ。

 お菓子は仕事のお供にしようと、それらを手の届く範囲に固めて置いた。デスクがスッキリしたので、仕事を再開する。キャンディーを一つ手に取り、飴玉を口に放り込んだ。

一つ目の書類に目を通したタイミングで、部屋のドアが突然開けられた。ドアの方を見ると、杉本が立っている。相変わらず、彼の手には書類の山で一杯になっていて、それなりに重たいだろうに彼の顔は澄んでいた。

 杉本は何も言わず私のデスクの前までやってくると、「お!お菓子あんじゃん。」と嬉しそうに呟いた。

 「好きに取ってどうぞ。友達が勝手に置いていったものだから。」

 私はカッコよく書類に目を落としながらそう言った。すると、杉本の持っていた書類が乱暴にデスクの上に下ろされた。判をおす直前だった私は、デスクの振動で手元が狂った。

 「ちょっと、優しく置いてよ。もうちょっとでミスするところだったじゃない!」

 私がかぶりを上げながらそう怒鳴ると、杉本は個包装のギザギザゆ摘みながらニヤニヤした顔でこちらを見ていた。彼は私の向かいにある椅子の肘置きに腰掛けると、なんだよと煽るような表情をとり、グミを一欠片口に放り込んだ。 

 なんでうちの上司はこんな性格が悪いわけ?私に悪態つく意味が分からないわ。心美の方は寧ろ好かれているってのに。

 「おい、ここのお菓子、自由にとっていいやつだろ?」杉本がお菓子の固まりに指差しながら、そう言った。

 

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