第13話

 「明梨さん!好きです!もしよかったら僕と!!」

 放課後の階段で、私はいきなり告白された。普段仲のいい男友達が、私の背中に手を突き出している。下りだったので、彼の両手は私の目線の高さに上げられていた。私は、困惑しながら自身の口元にそっと手を添えた。

 その男の子とよく話すようになったのは最近のことだ。きっかけは、体育委員が同じでその集まりがきっかけだった。はじめは、好きなアニメの話で盛り上がった。それ以来、休み時間や放課後に2人は自然とお互いのいる方に足を運ぶようになっていた。

 私は、異性と2人で放課後の教室にいるという青春を楽しんでいた。彼も同じだったと思う。しかし、日を重ねるごとに彼の視線がおかしくなっていったのは事実だ。彼は私の胸元や首筋、髪の毛に目線を落とすことが多くなっていた。さらには、顔を合わせているとき、ジーッと私の顔色をうかがうように見つめる時があった。

 彼の好意に気付いていなかったと言ったら、嘘つき呼ばわりされても仕方ない。彼の妙な視線に、心の中の明梨が火照っているのを私は必死に隠していた。ただ、それが本当に好意なのかどうかを確かめる術がなかったため、私は素知らぬふりを貫いていた。

 私が彼の告白に全くの無反応だったため、彼はかぶりを上げて私の様子をうかがう。私が苦笑いすると、彼は照れ臭くなったのか目線を逸らして苦笑いした。

 「好きってこと?私のこと。」

 私は冗談っぽく言ったのだが、彼が神経質そうな眼差しで見つめ返してくるので、悪く思い頬を下げる。

 「好きというかなんというか。良いとは思うけど。」と、少し口籠った感じで彼は返す。

 「はっきり言って!私のこと好きなら好きってはっきり!ね。」私は、自身の発言に則すくらいのハッキリとした口調でそう言った。

 「す、す、好きです。僕、明梨さんのその髪飾り。もし良かったら、僕に教えてくれないですか?どこに売ってたか。あと、少しだけ貸してほしいです。僕に似合うか分からないので。」

 

 ろくに出会いのなかった私が妄想するとなると出てくるのは、ありふれた恋愛とそれを全力で否定してくる私の本音だった。

 「明梨のやつ、また変な妄想してるぜ。まあ、こういう奴なんだよ。」

 杉本の声で、私は完全に現実世界に引き戻された。

 鈴木と心美が私を見て苦笑いしているのが分かる。私は無意識に髪の毛を解かし、喉を鳴らした。

 「安心しな、心美にもそういう変な一面があるんだよ。まあ、女の子はみんなそんなもんだよね。」

 鈴木のその一言で、心美の頬が一瞬でピンク色に変わった。

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