第6話 合格発表!!
私の前から解答用紙が取り上げられた。
その瞬間、私は現実世界に引き戻された。
教室中には紙をつかむ音、整える音が大きく響いていて、それ以外は何も聞こえなかった。私は両肘をついて両手の間に顔を挟み込むと、しばらくの暇な時間を潰した。
カワボの声で私たち受験者は解散を言い渡された。
私は受験票を手に取ると、席を立った。通路にはさまざまな虫や動物が列をなしているため、思うように進めない。ゆっくり進む行列にイライラしていたら、さっき座っていた席の下に受験票が一枚落ちてるのが見えた。私がそれを拾い上げると、そこには私と同じ番号が書かれている。前回受験者の忘れ物かと思い、私は机の上に置いて去る。しかし、途中で引き返してきて、替え玉受験などに悪用されないか、間違って使われたりしないかと思案し、結局それをまとめて持ち帰ることにした。
合格発表は、受験した日から大体3日経った後のことだった。合格者は掲示板に受験番号が表示されるため、私は再び試験場を訪れていた。私がついた頃にはもう会場は生き物たちで埋め尽くされていたが、人間というアドバンテージを持っていたため、遠くからでも番号を伺えそうだった。
魔法の力で試験を乗り越えた私は、この三日間不安で仕方なかった。この世界には基本的に朝昼晩、食事の概念がないため、変わり映えのしない生活を強いられることになる。そのため、私は散歩をしながら時間を潰していたのだが、心が休まるタイミングが見つからず、余計苦しい思いをした。
私は魔法の力についての思案もした。私はやはりあの謎現象が他の誰かの仕業だという考えを覆すことが出来ない。マグレであの丸枠全てに、黒の塗りつぶしをすることができるだろうか。私は不可能だと思う。もしこれで受かっても落ちても、誰かの陰謀であることには変わらないだろう。
掲示板が公開された。私は左から順に目を通す。あった!左から2列目の1番上に私の番号が記されていた。私は思わず飛び跳ねて、両手を振り上げガッツポーズをとった。
私が空気を読まずに喜んでいるとアナウンスが流れた。「合格者はこちらの交付所にお越し下さい」
私は堂々と交付所に向かった。
入るやすぐに、受験票とサインの確認が行われる。私は受付が差し出してきた用紙にサインして、受験票を彼に差し出した。彼は眼鏡をクイッと指先で持ち上げて、受験票のチェックを行なった。
「あれ?こちら、別の方の受験票ですね。」彼はかぶりを上げて、私の顔を覗き込むように見る。
「そうですか?あ、こっちかもしれないわ。」
私はそう言うと、もう一つの方を差し出した。
「確認しますねー。」と彼は言うともう一枚の方もチェックした。終わったのか、次は明るい声でこう言った。
「こちらですね。はい。合格おめでとうございます。志望転生先はアフリカ象で間違いないですね?」
「え、いや。」私は急で、言葉が見つからない。
「アフリカ象ではないのですか?」
彼の問いに5秒ほど空白を開けた後、私は口を開いた。
「えっと、頭の良くて美人の日本人…。」
私の声が小さすぎたのか、彼は耳に手を当てて、身を乗り出しながらそれを私に近づけた。
「出来れば日本人がいいです。」
彼は何も言わずに、隣のパソコンをカチカチといじり始める。そして、2、3分すると、彼は腕組みして背もたれにもたれ始めた。
「う〜ん。ないですねぇ。日本人か〜。」
「な、なんかすみません。」私は頭が混乱しつつも、表面上は申し訳なさそうな雰囲気を示そうと思った。
彼はマウスをパッパッと操作して、モニターを凝視した。
「お客さまのテストの成績は完璧でした。満点です。しかし、転生先がないということなので、現状順番待ちということになります。もし見つかったら、優先してご案内出来るのですがねぇ。」
「そうですか〜。」と私は相槌で返した。
「知的で容姿も整っている日本人の女の子ねぇ〜。時間はかかりますよ。そうそういませんから、そんな子は。
どうせなら、その間にうちの職員として働きませんか?」
「へ?」
「うちの職員として働くと、徳を積めるんですよ。徳は来世にも来来世にも効いてくるものだから、やっておいて損はないでしょう。もちろん地道な作業ですがね。この世界で働いている職員は皆、元々は下の世界で普通に生活していた者たちなんですよ。」
「お仕事ですかぁ。接客もありますよね?こんな見た目だから、あまり自信ないなぁ。」
「ここで働く人たちは皆、見た目を変更できるのですよ。」
「え?見た目を?」
「ええ、自分のイメージ通りの見た目で働くことができます。この世界の職員、美男美女が多いと思いませんでしたか?」
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