第11話 再会
久しぶりに走ると予想通りタイムが落ちていた。13.35。やっぱり約1年走らなかった代償は大きい。今はようやく走れた事の喜びが1番大きいけど。部活を当たり前にできることに感謝することがあるなんて、思いもしなかった。これも大人たちが言う必要な経験なのだろうか。
中学時代の一年って大きいと思う。でも人生100年時代とか長いなって思うし、その100年を私より先に進んでる大人たちから見たら別にって思うのかも。実際、私が泣くところを見たお母さんは、
「まだ次があるから。」
としか言わなかった。次? あるわけないでしょ。中高合わせて5回しかない大舞台なの。その一回一回に全てをかけてるの。
こんなこと慰めてくれているお母さんに言えるわけがなくって、全部、全部飲みこんだ。
今まで出来なかった分、練習して、練習して、練習して。
全国大会のトラックを見た時、10年ぶりなんじゃないかってくらい久しさを感じた。ここで走るためだけにずっと耐えて、頑張ってきた。
ふと視界の端にこっちを見ている人を見つけた。影野さんだった。目があった瞬間逸らされてしまったが、私が影野さんを見間違えることは無いと思う。2年前のあの会話、影野さんの細かい動き一つ一つが全て思い出せるくらい、鮮明に覚えている。
ああ、また影野さんと戦える。大会に来たという実感が溢れんばかりに湧き上がってきた。
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