第4話

それから一年が過ぎもう何曲作ったか分からない頃、僕はあきらめかけていた。何度も何度も曲を作り、ネットにアップする。再生数は二桁どまり、もう自分では何をしたらいいのか全く分からなくなっていた。僕は床に横たわりながら自分が出した曲のコメント欄を見ていた。


「はぁ……」


僕はため息をこぼした。このままじゃ彼女が歌う曲を作るなんて夢のまた夢だ。僕はテレビをつけた。画面はニュース番組だったのでチャンネルを切り替える。切り替えた先の番組はある新人アーティストのインタビュー番組だった。その番組を見て僕は驚いた。その新人アーティストは彼女だったのだ。僕は手に持っていた携帯を落とし、唖然とした。インタビュアーが彼女に質問した。


「あなたの力の源になっている言葉は何ですか?」


彼女はその質問にこう答えた。


「そうですね。私の力になっている言葉は私が路上ライブをしていた頃の最後の日に言われた言葉ですね」


と。インタビュアーは深く掘り下げようと


「具体的には何と言われたんですか」


と質問を重ねた。彼女は


「あなたの夢が叶うように一生懸命応援します。そう言われました。その人は毎週同じ時間に私の路上ライブを見に来てくれて、いつも最後まで聞いていってくれたんです……そのあとに……」


とそのまま言葉を続けていたが僕の耳にはそこまでの言葉しか届いていなかった。


「僕のことだ。僕の言葉が彼女の力になっていた」


僕がそう確信した瞬間僕の頭で何かがはじけた。


「これだ!」


彼女に送る曲のアイディアがあふれ出してきた。僕は三日三晩寝ずにその曲を完成させた。疲れ切った僕は曲をネットにあげたあと反応を見ることなく寝た。

次の日の夕方まで僕は寝ていた。眠りから覚めた僕は慌てて携帯を開いた。再生数が一万を超え、まだまだ増え続けている。


「やった……やったぞー!」


僕の曲は瞬く間に有名になった。それまで再生数が全く伸びなかった他の曲も注目されていき、ネットの世界で僕は有名人になった。


「これで彼女に……」


僕はやっと彼女に顔向けできるようになった。あの日からずっと追いかけていた彼女に少しだけ近づけたような気がした。

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