第33話 私なら大丈夫…大丈夫…大丈夫。

私は、アリスにはなるべく平常心を装った顔付きで部屋を出る事にした。

 そう…私は一切気にはして無いわっと言う顔でね。


 内心は穏やかじゃ無かったけど…でも、だってアリスを責めた所でカリム様と二人パーティーに言ったのには変わりが無かったから。


「…なんで、アリスなの」


「ベル?大丈夫かい?」


「あらっイーソン。どうしたの?」


「君がアリスの部屋から出て来る所を見かけたからね」


「そっか。ありがとうっ私は大丈夫よ?」


 良かった。と優しい笑顔を私に見せてくれるイーソンだったけど、何が「大丈夫」なのかは分からない。


 だって…彼の言う「大丈夫」は私には理解が出来なかったから。


…でも、後にこの「大丈夫」の意味が分かる事になるなんて。


「じゃ…俺も部屋に行って勉強でもして来るかな?結局向こうに参考書持って行ってもやらなかったから」


「ふふふ…そうね?それだけ旅行が楽しかった証拠ね」


 イーソンは惚けた顔をしては「ああっだな」と「ニカッ」と笑う。


 私も自分の部屋に戻り遊んでいた分だけ、勉強を取り戻さなきゃ。


「えーと…来週までに家庭科のパッチワークを2枚縫って…其れからクィントンの歴史に、英語」


 其々の参考書の内容をパラパラとページをめくっては、やる気が起きない。

 取り敢えず頭が働かない今は、歴史を勉強するより家庭科のパッチワークから手を付ける事にした。


「あれなら…何も考えずにただ好きな柄に縫い合わせたら良いんだものっあっしまったパッチワークだけじゃ無いわ!ハンカチに刺繍もしなきゃっ」


 …なんだかアレもコレもと思うと、益々やる気が無くなっちゃう。


(今日は駄目ね…勉強は夜からにしょうかしら)


 私は、喉が渇き食堂で何か飲み物を頂こうと部屋を出た瞬間。アリスとバッタリ会っちゃった。


 当然、同じ家に住んでいるのだから、会うのはしょうが無いにしても、今はアリスの顔をまともに見れ無い。


「ベルッ貴方も食堂に行くの?私はなんだかお腹が空いちゃって貴方が買って来てくれたお菓子を頂きに行こうとしていたのよ?ベルもご一緒にし無い?」


 アリスは先程、私が気にしていないっと言う言葉を間に受けたのか…はたまた彼女なりにモヤッとしている腫れ物が取れたのか…兎に角いつものアリスの顔を見ては、私の中で苛立ちが出てしまった。


「要らないわっ!」


「ベル…」


(ハッ!私ったらっつい)


「今から勉強するから…後で頂く事にするわね?でもお菓子はアリスが全部食べて良いのよ?」


「ベルッあのーー」


 アリスが、何か言いかけていた様だったけど、私は彼女の言葉を遮るかの様に部屋のドアを思いっきり閉めたの。


「はあー…何が全然気にして無いわ?よっこれじゃ明白あからさまじゃ無いよ」


 格好悪…喉が渇いていたけど、今はアリスの顔を見たく無い方が勝っている。


 夕方には、なるべく平常心で彼女と接し様。周りの人達に心配されたく無いし。


「大丈夫…私なら出来る」


 そう、思っていたら、いつの間にか眠ってしまったみたい。

 気付けば辺りは夕方のオレンジ色に染まっていた。


「あれ…いつの間にか眠っていたのね?」


 私は、部屋のカーテンを閉め灯りを付ける事にしたの。その時に下の階が何だか賑やかな事に気付いた。


「…誰か来ているのかしら?」


 私は、そっと部屋を開けるとメイド達が何やらバタバタと忙しく動いていた。


 その内の一人のメイドに声を掛けると、思わぬ客人が来ているとの事。


「えっ!?カリム様が?いらっしゃってるの?」


「はいっ先程ベルお嬢様にお声を掛けたのですが」


「其れはごめんなさいっ今直ぐに行くわ」


 カリム様がっカリム様が来てらっしゃる!先程までのアリスに対しての胸のモヤッとがカリム様が来てくれた事で全て消えた。


「ふふふっ私も単純よね」


(あっ!そうだわっ彼に渡すお土産!)


 そうだった!旅行先で、きっとカリム様に合うコロンを買ったの忘れてた。


 普段は、香水なんて付けはし無いって聞いていたけど…。香水よりキツく無く爽やかなフルーティな香りなら喜んでくれる筈…だと良いなあ。


 私は、彼に渡すべくお土産を服のポケットにしのばせ、彼の喜ぶ顔を想像しては、客間の扉の前で服装や髪型チェックをして、速る気持ちを抑えコンコンとノックをした。


 心無しか、ノックの音まで軽く聞こえる。


「ベルです。入ります」


「やっと来たか。先程からカリム殿がお待ちだよ」


 私は、カリム様の顔を見る前に、自分なりの完璧なカーテシーをした。


「ようこそカリム様」


 私は高鳴る胸を押さえつつ、頬は…少し赤かったと思うけど彼を満面の笑みでお迎えした。


「やあっベル嬢。久しぶりですね?旅行はどうでした」


 カリム様の心地よい低音ボイスが、私の胸をより一層高鳴る。


「はっはいっとても楽しい旅行で…した」


 カリム様に旅行の報告をしようとした時、フッと視界に入ったのは、アリスがカリム様の真横に座っている姿だった。


(え…なんで?なんでアリスがカリム様の横に座っているの?)


 たまたまよね?長いソファーが向かい合わせに有り、カリム様がその長いソファーに座って、両親は向かい合わせ、両端には一人掛け様の椅子。其処にはイーソンが…ならばアリスは?何故アリス一つ空いている一人掛けの椅子に座らず、カリム様の隣りなの?


 あれ…私って心が狭い?今アリスに対して苛立ちしか無いのだけど…。


 ヤバいッ平常心を保た無いとっ私なら大丈夫っ大丈夫っ大丈夫!


 アリスも、私の視線に気づいては慌てて席を立ち私にカリム様の隣りに座る様促す。


「ベッベルッほら早くカリム様の隣りにっ」


 その時、カリム様は気を使ってなのかは分からないけど、アリスにはそのまま座る様に話している「私が席を移動しますからベル嬢はアリス嬢の隣りに」私は笑うしか無かった。


 だって…アリスが席を譲ろうとした時、一瞬カリム様が真顔になったんだもの。


 先程まで笑顔を見せていてくれた彼が。


 ううんっこれは私の考え過ぎよね?今はなんでも悪い方へと見えちゃうんだわ。


 私なら大丈夫…大丈夫…大丈夫。




  ♦︎♢♦︎♢♦︎後書き♢♦︎♢♦︎♢


…今日は頑張って2本書いちまいました_:(´ཀ`」 ∠):


ここ迄お付き合い頂き本当にありがとうございますぞっ(*´꒳`*)ノ

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