第32話 ベル・クラークの視点。
昨日…旅行から帰って、イーソンと私で家族へお土産を渡しました。
お父様もお母様も大変喜んでは、くれたのですが…お姉様のアリスだけは何処か浮かない顔。
「…あのアリス。お土産気に入ら無かったのかしら?」
「えっ…そんな事は無いわよっとても綺麗なネクレスね?素敵だわ」
アリスにお土産として買った貝殻のネクレス。光によって貝の形をした飾りが七色に変わる…とても可愛く綺麗だったからきっとアリスは喜んでくれるとばかり思っていたのだけど…。
(やはりネクレスより…食べ物の方が良かったのかしら)
ネクレスを手に持っては、下の方でモジモジと触っているだけで、ちっとも付けてはくれ様とはしない。
(…やはり…食べ物じゃ無かったからしょげているんだわ)
「ねぇ…アリスッ何もお土産はネクレスだけじゃ無いのよ?向こうで新発売された特産のお菓子も買って来て有るの!試食したけどとても美味しかったわ?きっとアリスも好きなお菓子よ?」
「…そう?ありがとう…後で頂くわ」
アリスが食べ物に反応し無いなんてっ!!思わずイーソンの顔を見だけど…彼も少し驚いた顔をしていたわ。
アリスは、はあ…と溜め息を一つ吐いては、早々に私達のいるリビングを後にしたの。
「…あの子。あの日以来なんだか様子が変なのよ」
お母様が、頬に手をついては心配そうな声で、私達に話し掛けて来たの。
「…あの日以来って?お母様アリス何処かに出掛けたの?」
「ええっカリム様の部隊のパーティーに誘われてね?たまたまよ?貴方達は旅行に行っていたでしょ?其れでカリム様が退屈をしているだろうアリスを誘って下さったのよ」
「え…カリム様…が?アリスを?」
お母様は、何気に言った言動なんでしょうけど…私は一瞬胸の奥が「チクッ」と棘が刺さった様な感覚だったわ。
お父様も、そんな私の表情を見逃さ無かったのか慌ててお父様なりのフォローをしてくれた。
「別にっパーティーと言っても、正式なパーティーでは無く細やかなパーティーだったそうだぞ?」
お父様の慌てぶりにお母様も、気付いたのか、お父様の後にフォローをしてはいたけど…。
「ベル?義父さんも義母さんも悪気が有って言った事じゃ無いのは分かるね?」
「えっ?ええっ勿論よ?」
「…だったらそんな悲しい顔をするんじゃ無い」
えっ?私とした事が、そんな顔していた?
分かっているわ?分かってはいるけど…何故アリスなの?ううん?だからと言って他の女性と一緒なのはもっと嫌っ!?
「お父様!お母様!私なら大丈夫ですわ?其れにアリスも旅行が行けなかったのも気の毒でしたし」
「ベル…」私のこの言葉に少し安心した両親はホッとした顔を見せていた。
私も、両親の前では何も気にしてなんかいませんっと言う笑顔を見せるも…内心は複雑で仕方が無かったの。
…だって…アリスのあの態度双子だから分かるの。きっと…アリスの事だからカリム様の事を意識したに違い無いわ。
私は、両親に部屋に戻り、休みの間にやっていなかった勉強をやる為戻る事を告げては、部屋を後にしたの。
勿論、両親はまだ旅行疲れが残っているのだから、無理は禁物だとは仰ってはくれたけど…なんだか気分がモヤッとしてしまって、とても両親と一緒に居たいとは思わ無かった。
(ごめんなさい…)心の中で謝っては部屋を出て行ったわ。
イーソンも「大丈夫かい?」などと声には出さ無かったけど、軽く私の背中をさすってくれた。こう言う時って…やはりイーソンは優しいと感じてしまう。
部屋に戻る前に、アリスの顔を見てから戻る事にしたわ。パーティーの事を聞きたいのも有って…ううん?決して彼女を責めている訳じゃ無く…ただ聞きたいっと思ったから。
(だって…私だって…カリム様以外の男性と踊ってんですもの。彼女を責める資格なんて無いわよ)
そう思うと、一瞬ノックを躊躇ってしまうけど…私の心と反対に手が勝手にノックをしてしまう。
コンコンッとノックをすると、少し元気が無いアリスの返事が返って来た。
「はい?どうぞ」
「アリスッ私ベルだけど…少し良いかしら?」
私は、いけないと思いつつアリスの許可が出る前にドアを開けた。
その時、まさか私が直ぐ部屋に入って来るとは思わなかったのか…焦る様に後ろに何かを隠した。
「あっ…ちょっ!?もうベルったらっまず人の返事を待ってから開けなさい」
「…ごめんなさい」
いつもとは逆の事を言うアリス。いつもは私が彼女に対して言う台詞を言うなんて…正直戸惑ってしまうわ。
「…どうしたの?ネクレスなら後で付けるわね?ありがとう本当に可愛いお土産」
「ううん…あのね?両親からカリム様のパーティーの事聞いたの」
まさか、私に知れるとは思わ無かったのでしょうね?少し動揺したアリス。
「えっ?あ…あのでもね?其れはね?貴方が留守だったから代わりに私が出る事になったのよ?」
「ふふふ…何もそんなに焦らなくても良いわよ?別に気にはして無いんだし」
「嘘」私の頭の中にこの二文字が真っ先に浮かんだ。
「なら…良かった。貴方の事だから気になって仕方が無かったんじゃ無いかと心配したわ」
「だったら何故行ったのよっ」と嫌な言葉が脳裏に駆け巡ってしまう。
駄目よっ!そんな事をアリスに対して思っちゃ駄目!!
「…楽しかった?パーティー」
私も、よせば良いのに…きっとアリスのあの表情を見る事になるのだから。
「ええ…とても…夢の様なひと時だったわ。パーティー自体細やかな物だったのだけど…部隊の家族の方々がとても親切で面白い人達ばかりだったのよ?貴方にも是非行って貰いたかったわ」
「……そう?なら良かったわ。カリム様がエスコートなさって下さったのよね?」
「ええ…とても紳士だったわよ?部隊の皆様でお揃いの軍服を着ていたのだけど…カリム様が一番お似合いだったわ…とても素敵だったのよ」
目をキラキラしながら、パーティーの事を思い出しているのかしら…やはりアリスの表情はカリム様に夢中になってしまっている。
(…軍服ですって?私でさえもお目に掛かった事が無いと言うのに)
「ベルッ彼の…カリム様の軍服姿を見た事が有る?」
「い…いいえ?残念ながら一度も無いわ?」
「あら…そうなのね?ならば一度見せて頂きなさいな?きっと惚れ直すに決まっているから」
何?その勝ち誇った顔は……って!私こそ一瞬何を考えたの?アリスは私に対してそんな悲しい事する筈が無いじゃない。
「……ベル?どうしたの?っは!ごっごめんなさいっ私ったらっ許婚の貴方を前にベラベラと」
アリスは、私の気持ちを汲み取ったのか、慌てて弁解を始めたけど…異様な重い様な空気だけが流れてこんでいた。
「大丈夫よ?何謝っているの?気にし過ぎっ」
取り敢えず、この重い空気を打破すべく私は無理矢理にでも笑顔をアリスに向けた。
アリスも、ホッと安心したのか安堵の笑顔を私にも見せたわ。
けど…そのアリスの笑顔が私の中の何かに刺さる。
♦︎♢♦︎♢♦︎後書き♢♦︎♢♦︎♢
ここ迄お付き合い頂き本当にありがとうございます(*´꒳`*)ノ
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