第28話 今は余計な事は考え無いっ…ようにはしたい。

暫く馬車を走らせると、一際明るい屋敷が見えて来た。


 屋敷の周りには、数台の馬車が停まっており、その中から綺麗な服を身に纏った婦人や紳士達が降りいるのを視界に入る。


 どうやらパーティー会場に着いたみたいだ。


 アッシュ氏も、屋敷に近い場所で、俺達を下ろしては、馬車を停めに馬繋場へと向かった。


「さあっ皆様っここがハキーム・アンドレ公爵様の屋敷ですわ。行きましょ」


「わあっなんて素敵なお屋敷なんでしょう」


 ベル嬢の案内で、俺達はパーティーの為に色飾った門を潜り屋敷の敷地内に一歩足を踏み入れた時点で既に、其処はパーティーの会場だった…と、言うのも庭をパーティー会場にして有るんだよ。



 庭師達が、丁寧に育てて有る、バラの花々が綺麗に咲き誇り。周りの樹々達に淡い色の蛍光灯が飾られ、見事なパーティー会場になっていた。


 其れを見た、シーア嬢は益々目をまん丸に輝かせ興奮気味にベル嬢と話しをしている。


(うん?待てよ?ハーキム・アンドレ…候。何処かで聞いた名だな?)


 久々に、エースの記憶を辿って見る事にしたら、意外や意外っなんだっ…!?アンドレ氏って父さんの友人でも有る人じゃんっ。


「やあっ良く来てくれたね?ベル嬢にイーソン氏に…其れと…そちらは…リチャードソン家の御子息じゃ無いか」


「はははっ…どうもっご無沙汰しています。アンドレ殿」


(なぁんては初対面だけどね)


「暫く見ない内に随分と立派な好青年になったもんだっご両親や兄上はお元気かな?」


「はいっ皆元気だけが取り柄なので」


 などなど、いつもの社交辞令をすると、「そうかそうか、ゆっくり楽しんでいきなさい」と、そのふくよかな体型のジェントルマンは、笑いながら客人達の輪の中へと溶け込んで行った。


「まあっエース様っアンドレ様とお知り合いでしたのね?」


「はいっ僕の父とも友人だった様です」


「そうだろな?エースのリチャードソン家とクラーク家…そしてアンドレ家は代々由緒有る公爵家で指折りに入る位だから…知らない方が不思議かもな」


 俺達の会話に、ポツン…と置いてきぼりにされたのか…一人疎外感を感じたのか…なんだか元気が無いシーア嬢が一人モジモジ両手を下で組んでは黙って俯いていた。


 其れに気がついたイーソンは、彼女の腰に手を回す素振りを見せては、俯き加減な彼女に優しく答えている。


「どうしたんだい?シーア嬢?さっき迄の元気が無いようだけど?緊張でもしているのかな?」


「あ…いえっなんだか私っ場違いな所に来てしまったんじゃ無いかとっ…だって私…その立場が違い過ぎて」


 彼女の中で、何かが引っ掛かかっていたのか…「公爵」の人間じゃ無い自分にひき目を感じてしまったらしい。


「…なんだっそんな事?「公爵」の人間じゃ無かったらなに?そんな事気にしないで良いんじゃ無い?」


 イーソンが軽く彼女に「ニカッ」と笑うと、気にし無いのっと彼女の背中を軽く押す。


 俺もベル嬢も、イーソンと同意見だと彼女の手を引っ張りパーティー会場へと向かう。


 俯き加減だった彼女も、さっき迄のしょげて居たのは何処へやら…パァッと一気に顔色が明るくなりどうやら元気を取り戻した様だ。


(良かった…流石はイーソンだよな)


 そう思って彼の方をチラッと見たら、先程、俺が見た「冷たい」目をした奴がそこには立っていた。


(…なんだ?アイツってあんな目をする奴だっけっか?)


 俺が、イーソンの表情が気になりつい見ていると彼も俺の視線に気づいたのか、直ぐにいつもの表情に戻る。


「なんだよ?エース俺の顔に何かついているのか?」


「…うん。目と鼻と口が付いてる」


「なんだっそりゃ」と軽く吹き出しては、俺の右肩を軽くポンッと叩きベル嬢達の後を追うイーソン。


 やっぱり…気のせいなんかじゃ無い。一体何が有ったんだよ。


 そんな俺の何かがモヤッとした中、パーティーは始まった。


 豪華なディナーにプロ達の生演奏…綺麗な服を着飾った婦人や紳士に淑女達。

 其れを一層演出している見事な迄の庭園。


 女性ならば「御伽の国のパーティー」で心弾ませるんだろなあ。


 でも、俺の中はパーティーよりも、イーソンの事が気になる…特に今日の彼の言動が気になるのは初めてかも知れ無い。


 前々から、癖の有る奴だとは思ってはいたけど…別に嫌いでは無かったし。

 だから…今も友人をやっている位だ、普段の俺ならばイーソンみたいなタイプは避けるんだけど…彼は別だっ根は良い奴と分かっているから寧ろ親友だと思っているから付き合っている。


 だからだから…正直あの「冷たい目」を見てしまったのはショックだった。


 確かに、姉貴が書いた「未完成」ネームの世界だし。

 当然、俺の知らない世界な上イーソンとは、最近知り合った様なもんだ。


 だけど…幾ら俺じゃ無いエースの記憶でもイーソンとは「親友」には間違い無い。


 何か悩んでる事が有るのなら俺が力になりたいっと思うのは、当然なんじゃ無いかって思うんだ!


「…イーソンさっきからエース様。グラスを握り潰す勢いで何やらブツブツ言ってますけど」


「うん?ああ…何か変なスイッチでも入ったんじゃ無い?気にしたら負けだよ。今はそっとしといてやるのが一番」


「流石っイーソン様!エース様の事良くご存じなんですね!」


「ふっふっふ。アイツの事ならなんでも知っているのだよ。シーア嬢」


「…てか、逆に放置してて良いのかしら」


 そんな事を、言われてるとも知らず俺は一人静かに燃えていた!


 明日には、家に帰るんだ。今は取り敢えずこの招待を受けたパーティーを皆との良い思い出にする事だけを考えよう。




  ♦︎♢♦︎♢♦︎後書き♢♦︎♢♦︎♢


ここ迄お付き合い頂き本当にありがとうございましたっ(*´꒳`*)ノ


※フォローありがとうございますっ感謝感謝ですぞっ(*≧∀≦*)b

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