第23話 最悪の次にはきっと楽しい事が待っているはず。

俺が野郎の顔を掴んで居る、腕に手を置き。


「お止め下さいっエース様っ。私なら大丈夫ですからっ」


「しかし…」


「お願いしますっ」


 ベル嬢の…彼女の顔を見ると、今にも泣きそうな顔になっていた。


 俺の方を見ないで、ただ下を向いたままのベル嬢。


 俺は、何も言えなくなり野郎の顔を掴んでいた手を離しては「ドサッ」と野郎は地面に尻餅をついた。


「おっおいっ!大丈夫かっ!」


「っるせぇっ!行くぞっ!」


 野郎二人は、俺達に唾を吐き、この場から罰が悪そうな顔をしながらも、人集りの中押し退けては去って行った。


 今まで俺達を、見ていた人集りも、好き勝手な事を言っては、散り散りと去って行く。


 後に取り残され、自分達の足下には、彼女達が頼んだコーヒーやアイスクリームの残骸だけが転がっている。


「……折角、買ったのに」


 悲し気な声で、ゴミと化したコーヒーやアイスのコーンを拾いゴミ箱に捨てに行くシーア嬢。


「おーいっ!?エースッベルッシーア嬢っ何やってんだよっ!」


 彼女達を、迎えに行った俺までの帰りが遅い余り、イーソンが迎えに来た。


「…イーソン」


「エースッお前まで何やってんだよっ彼女達を迎えに行った切り帰って…て、どうした?何か有ったのか?」


 当然、事情を知らない彼の顔を見るや否や、シーア嬢がポロポロと泣き出してしまった。


「はっ?なっ…んでっ!ちょっ…!エースッ此れは一体っなんでアイスを買うだけで、シーア嬢が泣くのよっ」


「…イーソン様ぁ」


 よしよしっ。と優しくシーア嬢の頭を撫でるも状況が掴め無いイーソンは、俺を見ては「お前が何かやったのか?」と言うアイコンタクトを送って来やがるっ!


(何でだよっ!)


 俺も口パクでイーソンに答える。新たにコーヒーとアイスの代わりに水族館名物の特製ドリンクを買っては其々に渡し、最初にイーソンと座っていたベンチに四人並んで座る。


「…なるほど。エースの話しで大体の事情は分かった。シーア嬢もベルも嫌な思いしたね?大丈夫かい?」


 ヒックッヒックッと涙をハンカチで、拭いながら、シーア嬢は「私は…ヒックッ大丈夫なんですが…ベ…ベル様が…ヒック」と泣きながらイーソンに答えていた。


「…シーア様…私なら大丈夫ですから…さっき転んだ所も幸い怪我も無かったですし」


「でもぉ…」


 と、中々泣き止む気配が無い彼女に少し困っていたベル嬢を見て、俺は何も言えなかった。


 あの時、彼女達じゃ無く俺が買い出しに行っていたら…ベル嬢もシーア嬢もきっと怖い思いをさせずにすんだのに…と自分で自分を責めていたから。


 この重い空気を打破したのは、イーソンだった。まるで厄祓いをしたかの様に、両手をパンッと高らかに叩いては俺達を一括する。


「ヨシッ!はいっ!これでこの話しはお終いっ!結果エースが助けに入って、輩達も逃げベルも怪我が無くて良かったじゃ無いかっ」


 イーソンは、俺達に「ニッ」と笑うと、さあっ皆立って立って!と両手を上下、上げ下げしてはベンチから引き離す。


 そんなイーソンに釣られたのか、ベル嬢も段々と顔が、明るくなって行くのが分かった。


「…そっそうですわよっイーソンの言う通りですわっ確かにあの方達は許せ無いですけど。これで嫌な事も有りませんっ有るのは楽しい事だけですわ?ね?シーア様。だからもう泣かないで下さいまし」


 イーソンとベル嬢が見つめては、ニコッと笑う…その二人を見ては…なんだ?胸がチクッとしたぞ?


 しかもっ本来なら、ベル嬢じゃ無くて、俺が言う立場だったんじゃ無いかっなのに何、彼女に気を遣わせてんだよっ。


「…エース?どうした?何処か痛いのか?」


 俺自身も、気付か無いまま胸を押さえて居ると、イーソンが心配そうに聞いて来た。


「あっ…いやっなんでもっうん!この二人の言う通りだよっシーア嬢っ元気出して」


「……はい。皆様の仰る通りですね」


「ヨシッじゃっ水族館に行こかっ」


 先まで泣いていた、シーア嬢も気を取り直しては、泣き腫らした顔でニッコリと笑顔になってくれた。


(…やっぱ、なんだか凄えなイーソンって)


 あの時、もし俺じゃ無くイーソンが助けに入っていたら、ベル嬢にあんな顔をさせ無かったのかも知れ無いな。


 俺も、皆みたいに、気持ちを切り替え無くてはっと思う反面…。

 だけどっどうしても脳裏に、あの時のベル嬢の顔が焼き付いて離れ無い。


 俺の、前を歩く三人を見ては、なんだか自分が情け無く感じた。


(格好悪過ぎだろ…俺)


「…どうかなさいましたか?エース様」


「えっ?」


 パッと声のする方を見ると、いつの間にか、ベル嬢が俺の隣りに並んで歩いていた。


 前を見ると、シーア嬢とイーソンが楽し気に会話をしている。


「何だか元気が有りませんが…やはり何処かお身体の具合でも」


 先ほど、俺が胸を押さえていたのを気にしいるのか、今度はベル嬢が心配そうに聞いて来た。


「全然っ!大丈夫ですっありがとうございます。ご心配をお掛けして」


「ならっ良かったです。ふふふっカリム様の大事な弟君に何か有ったら、彼に顔向け出来ませんもの」


 ふふふっと兄さんの名前を出した途端に、少し頬を赤らめるベル嬢を見ては、またチクッと胸が痛む。


(…あれ?なんだ?さっきから)


「あははっ僕の方こそっ。貴方に、もしもの事が、有ったと兄に知れ渡ったら、其れこそタダでは済まされませんよっ」


 お互い兄さんの話題になると、自然に笑い合えた。


 以前「甘い物」の件で屋敷に来ては、俺に笑い掛けてくれた。あの時と同じ笑顔を俺に見せてくれる。


(…やっぱ…可愛い笑顔するじゃん)


 その彼女の笑顔を見ては、またチクッと胸が痛んだんだ…でも…この痛みはさっき迄のモノとは違う…なんだ?これ。




  ♦︎♢♦︎♢♦︎♢後書き♦︎♢♦︎♢♦︎


…むう(ㆀ˘・з・˘)なんか、むうって感じです。


後…少しだけ旅が続きますっがっ次はお兄様とアリス嬢のお話しを書きたいと思いますな。


ここ迄お付き合い頂きまして本当にありがとうございました(*´꒳`*)b

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