第16話 もう一人のヒロイン。シーア嬢。

 イーソンと大学の食堂で昼メシを食っていると、同じクラスの女子「シーア・マルタン」が俺等の席に近寄って来た。


「マルタン」伯爵家の三女だ。


「ご機嫌よう。イーソン様にエース様」


「やあ、シーア嬢。君が食堂に来るなんて珍しいね」


「そんな事はありませんわ?私も食堂には来ます」


 イーソンに言われ少し頬を染める彼女。

 彼女は大学一美人と言われている、確かにとても綺麗だけど…人の好みだよな?


(少なくともタイプじゃ無いな)


 俺はイーソンとシーア嬢が会話をしているのを入る訳でも無く。

 食堂の人気メニューの一つビーフシチューを堪能していた。


(うんっやっぱ美味いっ!このゴロッと大きく切って有る肉が口の中でとろけるぜ)


 俺が二人の会話に入らず一人夢中で、ハフハフさせながら飯に夢中になっているのが、いけなかったのか。


 イーソンが人差し指をテーブルの上に「コンコン」と音を立てては俺を呼ぶ。


「ンンッエースっ飯に夢中になるのは良いが少しは気を遣えよ」


「…なんでよ?」


 イーソンが俺を見たかと思うと、その視線をシーア嬢の方へと向ける。


 そうなのだ、学院一美人さんを見て誰もが彼女の虜になる…のか?

 そんな彼女を無視しては俺はビーフシチューに夢中。


 ここに居る男性達でさえ中々彼女とお話しが出来無いと言うのに…俺はビーフシチューに夢中。


(んな事言ったって…彼女とは同じクラスだし?いつでも話しなら出来るじゃん?)


 シーア嬢も初めての事だったのか、少し戸惑っていた。

 まさかっ男性は皆私とお話しをしたいのよ?それなのに貴方は私よりビーフシチューなの?…とでも言いたげそうな顔。


 もし俺が「公爵」では無かったら下手したらビンタを食らっていたかも知れ無い。


「…あの…シーア嬢もビーフシチュー食べます?めちゃ美味しいですよ」


(何言ってんだっアホッどんだけビーフシチュー好きなんだよっ)


 俺の第一声にイーソンもシーア嬢も目が点になっていたが、二人共笑ってくれた。


(良かったぁー!一瞬、怒られるかと思った!)


「ふふふっエース様って本当に面白いお方ですわね?折角ですが…私さっき程食べて来ましたので、今度は食べてみますね」


 余程面白かったのか…暫くは笑っていた彼女の笑顔は何処と無くあどけ無かった。


 正直…美人なのを鼻に掛けているのかと、思ったけれど…それは俺の思い違いだったみたいだな。


 そして、その笑顔を見ては、ふっとある女性ひとを思い出した。


 ベル嬢だ。あの日以来彼女とは会って居ない。


 兄さんの仕事の都合もあり屋敷にも顔を出さないでいた。

 俺のいない所で二人で会っているのだろうけど…まあ…婚約者同士なら当たり前か。


 イーソンに聞けば「元気にしているよ」とは言ってはいた。

 今、アリス嬢と二人「立派な淑女」になる為、毎日家庭教師が来て日々猛勉強中なのだとか…ふーん。忙しいんだなぁ。


 まぁ…良いんだけど…ベル嬢に一言謝りたいのはあったから。

 このままじゃ嫌な気持ちで居る事になるから、それだけは避けたかったんだ。


 だからと言って…そう安易と屋敷に行く事は駄目だっましてや兄さんの許婚だろ?


(…許婚か)


「わあっ是非っ行きたいですっ!」


 ハッ!!とシーア嬢の声で我に帰った!何が行きたいって?


「そうだねぇ。今度の大型連休にでも行こうか?あの別荘から眺める景色は絶景なんだ」


「別荘?絶景?」


「…なんだよ?エースまさか俺の話しを聞いていなかったのか?」


「あ…ああ。すまない」


「あのですね?イーソン様のお屋敷にご招待されたのです」


「へー…良かったじゃ無いですか?楽しんで来て下さいね?」


 余りの他人事の様に話す俺に、少しイラッとしたのかイーソンは俺の胸ぐらを軽くグイッと引っ張り。


「お前も行くんだよっ」


「はっ?俺一緒に行くなんてーー」


「行きましょうっ絶対に楽しいですよ?エース様っ決まりっ!!」


 はぁあぁあっ!?なんでやっ!つーよりっ強引過ぎやろっ!


 なんて…とても言える雰囲気では無かった。


 まあ…気分転換にたまには良いか?こっちに来て初めての旅行だしな?


 其れに連休中に入ったら、ここぞとばかりに絶対兄さんから扱かれるのは目に見えてるし。


「で?俺達と後誰が来るの?」


「そうだな?クラーク姉妹を誘ってみるか」


 なっ…んだってっ!?なんでよって顔でイーソンを見ては彼も其れを感じ取ったのか。


「だって…別荘はクラーク家の所有だし?俺が勝っ手にする訳にもいかないだろう?」


「…だからって…」


 俺が、それなら行かない方が…とも思ったけど…断るには理由を話さなければならない。


 けど…何故か言いたくは無かった。


 其れに、折角別荘を提案してくれたイーソンや其れを楽しみにしているシーア嬢の水を差すのには気が引けたからだ。


 でも良く考えてみれば…あの姉妹は日々猛勉強中だ。

 もしかして連休中も忙しくて行けないかも知れ無いしな…っていやいやっ何考えてんだ俺っ最低かっ!?


 良く考えてみろっベル嬢に謝るチャンスじゃ無いかっ?そうだよっ彼女に謝ろ!


 俺が誠意を持って謝れば、きっと彼女なら許しくれるだろ。


「そうだな?人数も多い方が楽しいに決まってるしな?行こう」


 俺の一言で、ワアッとなる二人そんな二人を見ては何だか嬉しくもある。


 イーソンのこんな顔初めて見たかも。


 シーア嬢も意外に人懐っこい人だし、きっと楽しい旅行になるだろうと思っていた。



  ♦︎♢♦︎♢♦︎後書き♢♦︎♢♦︎♢


ここまでお付き合い頂き本当に本当にありがとうございました(*´꒳`*)ノ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る