第14話 俺(エース)は最低な奴でした。

あの後、ベル嬢は以前の冷たい雰囲気のまま「貴方…私に仰っていた事何も覚えていないのですか?」


 あの事?…全く持って見に覚えの無い俺は、何も言い返す事が出来ないまま、黙っていたら。


「…私急用を思い出しましたので、これで失礼致します」


 と、屋敷の中庭から去って行ってしまった。


 彼女の後を追って謝罪したくとも、何をどう謝れば良いのか分からず仕舞いだったし。


 下手に謝ればあのプライドの高いお嬢様の事だ。そう簡単には許して貰えないだろう。


「根が深そうだもんなぁ」


 全く…エースの野郎は一体何を言ったんだ?いや、正式には姉貴のネームか。

 彼女を怒らせる言動………言動…駄目だっ思い浮かばなねぇ。


 ネームやエースの記憶を辿っても…無理だ。

 エース自身も、この件に関しては、記憶の奥底に封印してやりやがるのか…何も分からない。


 ちっとも思い出せないっ上。俺自身は多分…この辺を飛ばして読んだんだろう。記憶に無い。


 いや…全ては姉貴に有るっ!つっても今更だから自分で解決するしか無い。


「っち。めんどくせぇ」


 俺は自分の部屋に戻ってはベットの上にダイブしてそのままいつの間にか眠ってしまった。それからどれ位寝てしまったのだろう。


 エリンが俺の部屋の前で何やら言っているのをボンヤリ寝惚けながら聞いていた。


「エース様エリンです。アリス・クラーク様がお見えです」


(アリス…?誰だ?そりゃ)


「エース様?いらっしゃら無いのですか?」


「アリスッ!?」ガバッと飛び起きては、危うくベットから転がり落ちる所だった。


「…変ねぇ。居ないのかしら?」


「待て待て待てっ居るっ!俺は居るから」


 慌てて部屋を開けたもんだから、エリンも嘸かし驚い顔をしていた。


「……アッアリス様がお見えです。客間でお待ちしております」


「ありがとうエリン」


 彼女はふうっと驚いた胸を撫で下ろすかの様に厨房の方へと向かって行った。

 …多分、エリンの中で俺がアリス嬢に好意が有ると勘違いした顔だな。


(後で誤解を解いておこう。変な噂を流れてはヤダからな)


 アリス嬢が待っている客間のドアを開き改めて彼女を見ると…やはり双子だわ。

 俺が寝むってしまって居る間に、時間が巻き戻った感覚さえ覚えてしまう。


 俺を待って居る間メイドに出して貰っていた。母さんの手作りのクッキーと紅茶を美味しそうに食べる姿を見ては。


(やっぱ。小学生にしか見えない。こう言う所はベル嬢とは違うんだよなぁ)


 今にも、サクサクッと言うよりモギュモギュと言った効果音が聞こえて来そうだった。

 その姿を見ては、思わず「ぷ」と吹き出してしまい。


 次々とクッキーに手を付けていた、アリス嬢が、俺の存在に気付き慌てて口を拭き席を立つ。


「エース様っ!ヤダ私ったらっ!はした無い所を…申し訳ありません」


「あっいえっそのままで結構ですよ」


 アリス様は少し顔を赤らめ席に座り直す。けどっ前のお茶会の時の方が凄かったよ。

 口にクリームを付けた上にケーキ2個たいあげるんだもんよ?


 それだけ母さんの菓子が美味いって事だよな?息子の俺としては嬉しい限りだぜ。


「えっと…今日はどんな御用件で?」


 コクコクとお茶を飲んでいたアリス嬢がカチャンとソーサーにカップを乗せたては俺にベル嬢の事を聞いて来た。


「ベル嬢が…ですか?」


「はい。今日あの子貴方様の所にお礼を言いに行った筈なのに…帰って来たと思ったら不機嫌になっていたし…何を聞いても教えてくれ無いんです」


「あー…ベル嬢がですか…」


「其れでっ此れはきっと何か有ると思い、エース様にお聞きしたく参りました」


(そう言われてもなぁ…逆にこっちが知りたい位だよっ)


 などと思いつつ。あっ!もしかして姉のアリス嬢ならベル嬢が言っていた「あの事」を知っているかも知れ無い。

 アリス嬢にベル嬢が何故不機嫌になってしまったのか事の経由を話してみた。


 暫くアリス嬢は俺の話しを聞いていたが、急に両腕を胸の辺りで組んだかと思うと。


「其れは貴方が悪いっ!」


 と一言一括されてしまった!だからっ何でよ?何故俺が悪いのよっ!


「本当に覚えていないのですか?ベルにあんな酷い事を言っといてお忘れになったのですか?」


「えぇえぇえ!おれっ…僕がですかっ?」


「しょうがありませんね。お教え致しましょう」


「…宜しくお願いします」


 アリス嬢の話しでは、こうだった。


 兄とベル嬢の、許婚の話しが決まった時。両家が顔合わせの為、ホテルで食事会が行われたんだと。

 その時エース俺がトイレで席を立った時に顔合わせで一緒に来ていた。


 兄専属の執事「クルーズ・モレル」と手洗いに行った帰りに…俺がついクルーズに愚痴と言うか…ベル嬢に対してこぼしていたんだ。


「はあー…其れにしても兄さん。良くベル嬢との婚約を了解したよな。幾ら両家の為とは言え…俺なら絶対に無理だわ」


「…と、言いますと?」


「だってさ?姉のアリス嬢ならまだしも、妹のベル嬢は愛想無さすぎて正直引くわぁ」


「其れはベル様が緊張なさっているからでは無いでしようか?」


「いんやっ違うね?アレは絶対に腹黒だよ。うん無い無い」


「エース様っ少々言葉が過ぎます。私は何も聞かなった事に致しますので、決してその様な事は私の前だけにして下さい」


 あはははと笑いながら両家が待つレストランに向かって行ったって!

 ちょっと待て!本当にそんな事…言ったのか?この俺が?正確にはエースだけど。


(う…あっめっちゃ最低な奴じゃん俺って)


 その話しを聞いて恐る恐るアリス嬢に聞いてみた。


「……あの。其れでその話しをなぜアリス嬢達が?」


 フンッと鼻息を荒くしてはキッと俺を睨む…わー…何か思い出しては腹が立って来たって顔をしてるぅ。


「なぜって?そりゃ私とベルは貴方達の直ぐ側に居たからですわ?」


 …ハハハ…成る程。偶然居合わせて聞いてしまったパターンね。


 その後、無事?顔合わせも終わり、アリス嬢達は屋敷に戻ってベル嬢は部屋で泣いていたらしい。


(そりゃ…泣くわな。仮にも義弟になる奴に陰口叩かれたんだもん)


「これでお分かりなられましたか?」


「はい。痛い程…すみませんでした」


「あの子は人一倍感情を出すのが苦手な子なんです。だからエース様の様に誤解を招く人も居ます。でも本当は心根はとても優しい子なんですよ。ですから…あの子を傷付ける様な事だけは言わないで下さい」


 アリス嬢は俺を罵倒する訳でも無く、ただ姉として妹を庇いたかったんだ。

 ベル嬢への話しをするアリス嬢は、どこと無く悲しげで、その表情を見るとまるでベル嬢本人から言われている様な気がする。


 その表情を見ては俺の胸にズキンと鈍い何かが突き刺さった様な感じがした。



  ♦︎♢♦︎♢♦︎後書き♢♦︎♢♦︎♢


ここ迄お付き合い頂き本当に本当にありがとうございました(*≧∀≦*)ノ

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