第12話 激甘マフィンと一つの疑問。
昨日の晩の事は、俺は何一つ覚えていない。
昨日、クラーク家の「如月 尊」では人生初のパーティーデビューが最悪な物になった。
そんな事を、朝メイドのエリンが起こしに来る前に目を覚ましては。ベッドの上で窓を眺めながら昨晩の事を振り返っていた。
と、言うより頭に余り残って無い方が正しいのか?
…ただ、ボンヤリ楽しかったなぁ。とか?アリス嬢やイーソン達と何か楽しい話しでもしていたなぁ…て事しか記憶に無い。
あっそう言や、仕事で遅れて来た両親に俺と兄さんが、何処ぞのお偉い方達に紹介されたっけ?内容はまるっきし覚えて無いけど。
だって…隣りの兄から常にダークオーラで俺の背後から纏わりついていたのが気になって仕方が無かったから。それ所じゃ無かったもんなぁ。
(いつ兄からネチネチとした尋問が、来るのかと怯えていたし)
でも…ただ記憶に有るのは、兄さんに贈り物を渡してた時のベル嬢がとても可愛く見えた。
柱から離れた場所に居た二人だけど…遠くても分かった。
(少し兄さんが羨ましいくも思えたわ)
「…エース。起きているか?はいるぞ?」
(うわっまさかの本人が来たっ!一層の事っ)
「寝たふりをするなら殺す…」
「おお起きています!兄さんっ僕は起きていますよぉ」
慌てて、俺みずから部屋のドアを開けては「無」に近い顔の兄を中に招き入れた。
最初からそうしろと言わんばかりの態度で、あたかも自分の部屋かの様に椅子に座る。
「…どうした?早く席に着け」
「失礼しまぁす」
俺は兄の言うがままに、腰を引くくしながら席に座るってっ!なんでこんなに兄に弱いんだ?俺っ。
それから…どれ位の時間が経ったんだろ。実際は五分も経って無いんだけど…俺にはこの空間が永遠にも感じた…。
(あれ?前にもこの感じどこかで…)
「あの…兄さん。何かお話しが有るのでは…?」
この重い沈黙を、先に打破したのは俺の方だった。
暫く沈黙だった兄も俺の問いに、ふむと頷いては又暫く黙る。
(なんだよっ何も無いんかいっ!なら何故来た)
と、思いつつも俺も何となく分かっている。昨日のパーティーの件でしょ?
なぜ俺がクラーク家に手土産を持って、ベル嬢を訪ねたのかを聞きたいんでしょ?
……この兄は口数が少なく自分の言動より行動が先に出る人だ。
上手く文章に纏めて話せ無いのだろう。だからある意味で誤解を招きやすい。
そして、改めて聞くタイミングが分からないんだろなぁ。
まあ…。悪態やら木刀などは俺が弟だからと言うのもって…。其れはそれで、なんか腹が立つな。
「…兄さん。昨日イーソンが言っていた件については謝罪をします」
「…謝罪?」
「はい。兄さんは昨日イーソンでの話しに疑問を持ったのですよね?」
「…………。」
あれ?反応が無い?まあ良いや続けて話してしまお。
俺はこの際、洗いざらい兄に贈り物の件の事を全て話した。
パーティーで、兄に贈り物をしたい事や俺が勘違いして「甘党」だと話した事によって、ベル嬢が、兄の為に両手の指に何故か絆創膏だらけにしては一生懸命作ったお菓子。
そうとは知らず、ベル嬢に手土産を持って謝罪しに行った俺。
兄に本当の事を伝えたかったけど…中々時間が取れず、パーティーの日が来てしまった事。
全部胸につかっ得ていた事を兄に話した。
当の本人は、俺が話ししている間も茶々を入れる訳でもまして怒る訳でも無く。
ただ黙って聞いてくれてた、その代わり相打ちも無かったけどね?
(さあっ兄さんが聞きたかった事。全っっ部話したぞ?後はどう出て来るんだ?)
暫く黙って、俺の話しを聞いていた兄さんは、俺と思っていた事と違う返事をして来た。
ぶっちゃけ、怒られる迄は行かなくとも、注意くらいは有るだろうとは思っていたから。
「…ふむ。大体の事情は分かった…一つお前に聞いておきたい事が有るんだが」
「はいなんでしょ?」
「……お前、アリス嬢の事はどう思う?」
「アリス嬢…ですか?とても明るく良いお嬢様だと思いますよ?一緒に居ても楽しいですし」
(…なんだ?何故そこでアリス嬢の事が出て来るんだ?)
兄は其れ以上の事を聞いて来る訳でも無く…と、言うより多分何かを聞きたいんだろけど…どう聞いて良いのか分からないのか?
「あの…兄さん。アリス嬢がどうかしたんですか?」
「あっいや…別に。俺もお前と同意見だと思っただけだ」
「はあ…」
なんだなんだ?何が聞きたかったんだ?まあ…良いけど。
「…俺はそろそろ公務に着く。すまなかったな。折角の休日を邪魔して」
兄さんは、本当に何も無かったのか、ベル嬢の件を追及しては来なかった。
「兄さん。もう出掛けられるのですか?まだ朝の7時前ですよ?朝食もまだー」
「いいや、朝食は向こうで何か食べる。今日は早朝会議が有るからな…それと」
ひやー…こんなに朝早くから仕事だなんて、役職の人は大変だよな!俺まだ学生で助かったわ。
兄はテーブルにポンと綺麗な小箱を俺の前に出すと席を立った。
「それ…お前にやる」
「これは…?あっ」
兄さんがテーブルに置いたのは、ベル嬢が兄の為に作ったお菓子の箱だった。
中身を開けてみると、まだフワリと甘い香りが鼻に付く。
どうやらマフィンを作った見たいだな。マフィンの上に生クリームを乗せ、その上にイチゴが乗っていた。しかも…何故か微塵切りで。
(…なるほど、これで指を切ったんだな)
「もし…ベル嬢に会う事が有れば礼を言っといてくれ。美味しかったですと」
「えっでも僕が言うより兄さんが言った方が喜ばれるかと思いますが」
「…俺はそう言うのは苦手だ。特にベル嬢に関してはなーー」
兄はそこまで言いかけては、良いから言う通りにしろっなどと無茶振りを言っては仕事に出掛けた。
「…なんだよ。そこ迄言っておいて気になるだろう」
小さな小箱には2つ入っていただろうマフィン。
「一つは食べたんだ…どれどれ」
なんだかんだ言っても、優しい兄なんだな。
残りのマフィンをパクッと一口食べた時余りの激甘に飲み込め無かった!
「うっげぇえぇっなんつぅ激甘っ!まるで砂糖の塊を食ったみたいだっ!!」
俺はその一口食っただけで、次の二口目には到底運べなかった。
「うっ…ベル嬢…すまないっ無理だ食えねぇ」
兄さんは…全部食ったのかな。そんな事を思いつつも、ある一つの大事な事を思い出した。
そう言や、姉貴のネームでは…兄の許婚って…確かっ。
「アリス・クラーク」嬢で「ベル・クラーク」嬢では無かったんじゃ無いか!?
其れが本当なら一体どうなってるんだ?俺の読み違いだったのか。
♦︎♢♦︎♢♦︎後書き♢♦︎♢♦︎♢
ここ迄お付き合い頂き本当にありがとうございました(*´꒳`*)ノ
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