第7話 今頃になって本人に本当の事言え無い…情け無い俺。

今朝からイーソンの、あの言葉が頭から離れ無い…。


「上機嫌で鼻歌交じり…」めっちゃ渡す気万作やんっ!


 …そりゃそうだよ。兄への情報は唯一、弟の俺だもん。

 俺とギスギスしている間なのに、兄へ贈り物を贈りたい一心で聞いて来た位だ。


(そりゃ…上機嫌にもなるわな)


 俺は学校の帰り道、途中可愛くて美味しいそうな、チーズケーキ専門店で手土産を買い、辻馬車でクラーク邸宅へと向かう。


 馬車から降りては、数メールの場所に、一際目立つ見覚えの有る屋敷が有った。


「…多分、まごう事なきクラーク邸宅だな」


 エースの記憶を辿ると、小さい頃父さんや兄さん達と来た記憶が有る。


(そっか…爺様同士が、友人だもんな。そりゃ来た事位はあるか)


 なんて考えているは良いけどっ!さぁっここまで来たんだっ!手土産も持ったし!


 男らしくベル嬢に誠心誠意謝ればっきっと許してはくれるはずだっ!


(パーティーで恥をかく事になるかも知れ無いベル嬢に比べたら…うん!)


「よしっ!!」と気合を入れては、門の中に足を一歩また一歩と入って行く。


 スウッと鼻から深呼吸をしては、大きく呼吸を吐くまさにその瞬間、後ろの方から、一際でかい声で俺の名前を呼ぶ人物がいた。


「あーっ!エース様っ!エース様じゃ有りませんか?」


「はひっ!?」呼吸を吐くタイミングと、いきなり呼び止められ驚いた俺は、素っ頓狂な声を出してしまった。


「ああ…やっぱりっ今日はどうしたのです?珍しい事も有るものですね?」


 ベル嬢とソックリな声で、大きな声の主は、ベル嬢の姉アリス嬢だった。

 アリス嬢は妹のベル嬢とは、違いニコニコと俺に接してくれる感じの良い令嬢だ。


「こっこんにはアリス嬢。何も予約なく突然の訪問をお許し下さい」


「全然っ寧ろ嬉しい位です。お気にならさないで下さい」


 急な来訪でも、嫌顔を微塵も出さないで笑顔で迎えいれてくれる。


(やっぱ。良い人だなぁ…アリス嬢って)


「所で、今日はどんな御用件で?まさか本当に遊びに来て頂いたのですか?」


 キラキラとした笑顔が眩し過ぎるっ!本当にベル嬢と双子なのか?


 ベル嬢の皮を被った天使とか?んな訳無い。


「残念なが…ンンッいいえっ今日はベル嬢に用がありまして…そのベル嬢はご在宅ですか?」


 俺が遊びで来たのでは無いと分かったら、アリス嬢は少し残念そうに。


「…ベルに用事ですか?ベルなら今お買い物中です」


「買い物…」


 なんだろう…居なくて残念な様な、ホッとした様な…いやいやっ彼女にはちゃんと話さなくては!


「そうですか」


「あの子、なんでもパーティーでカリム様に手作りのお菓子を作るんだって、張り切っていますのよ」


「それでね?あの子ったら産まれてこの方、料理所かお菓子作りなんてやった事も無いのに、両手の指を絆創膏だらけにしちゃって…」


(ばっ絆創膏っ!?お菓子作んのに、なぜ絆創膏だらけになるのっ!?)


 その光景を思い出し笑いをしているのか、アリス嬢は、クスクスと笑ったかと思うと。急にハッ!と我に帰り慌てて自分の口に手を塞いだ。本当に今更だけど。


「あっ!やだっ!私ったら余計な事っベラベラとっどうか今の事、聞かなかった事にして下さい」


「はあ…」



(この人は天然なのか…それか隠し事が出来ないのかな)


「その件の事だったら、大丈夫ですよ?そのプレゼントの事は元はと言え僕の責任でも有るのですから…」


「はあー…良かった」と安心した彼女。


 我が妹が、婚約者の為に何かをしているのを見て嬉しくなったんだな?

 だから…つい俺に聞いて欲しくて、聞いても無い事を口走ったんだろう。


(良い姉ちゃんだなぁ)


 はあ…でもやっぱり、これだけ張り切っている彼女の話しを聞いては、今更だよな。

 こうなったら、兄にはベル嬢の件、内緒にして貰って受け取ってもらう様頼んでみる…いやいや兄の事だ。婚約者のベル嬢のプレゼントを邪険にはし無いだろう。


 そうだよっ!あんな目付きが悪く、性格も鬼畜な兄だけど、その辺は大人だっちゃんと紳士的な態度を取ってくれる筈っ!!

 …でもっでもっプレゼント受け取ってくれなかったら、どうしょ…。


「…あの…アリス嬢。申し訳有りませんが…僕これで失礼します。これ皆様で召し上がって下さい」


 アリス嬢にさき程手土産に買った、チーズケーキを渡しては、一礼をして屋敷を後にする事にした。

 俺が急に来たかと思えば、ケーキを渡されてキョトンとしているアリス嬢。


「えっ?あのっ折角来て頂いたのにっお茶も出さないでお帰しさせる訳にはいけませんわ?じきにベルも帰って来ると思いますから」


「いいえっ大丈夫です。お気にならさないで下さい」


「でもっ」


「それとっ一つお願いが有ります。ベル嬢に申し訳有りませんでした。と、だけお伝え下さい。では」


 アリス嬢は訳も分からないまま「…はい」とだけ答えていた。

 そりゃそうだよな?何か意味深にしか聞こえ無いもんよ。


 きっとアリス嬢の事だ、ワクワクしながらベル嬢を問い詰めるに違い無い。


 まあ…良いけど。


 パーティーの事を思うと、自分の屋敷までの足取りが重い。

 情け無いよな、ここまで来てベル嬢が不在って聞いた時、心のどこかで安心してる俺がいた。


 潔く一言「僕の間違いでしたっすみません」と謝れば良いだけなのに。

 それを聞いた、ベル嬢は不機嫌な…しかも上から目線でキツイ一言言う位なのにな。


 …でも、ベル嬢のあの嬉しそうな顔を見たり、イーソンやアリス嬢の話しを聞いちまったら、今更、渡すのを止めてくれなんて言えねぇよ。


 違う物へのプレゼントを提供した所で、パーティーは今度の土曜日だ間に合う筈もねぇ。


 しょうが無いっ後はなる様になるしか無いっもし兄さんが受け取ら無かったら俺が謝ったら良いだけの事。「僕の早とちりでした!」てね。



 なんか自分の中で解決した様な…しない様な…そんな感覚で自分の屋敷へと向かう。


「あっ…大事な事思い出した」


 エリンに頼んで、湿布と塗り薬用事しといて貰おっと。




  ♦︎♢♦︎♢♦︎後書き♦︎♢♦︎♢♦︎


ここまでお付き合い頂き本当にありがとうございます(*´꒳`*)ノ



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