第8話 アリス嬢の視点。ベルとカリムの婚約の経緯。

うーん…先ほどエース様のご様子が少し変だった様な…それにベルに謝罪の言葉を残して、これは何か有ったわね?


 私は、エース様が持って来て頂いたお土産をテーブルの上に乗せては一人考え事などをしてみた。


 皆さまこんにちは。ご機嫌如何ですか?私はアリス・クラーク「クラーク」公爵の長女です。


 ベルとは双子の姉妹なのです…双子は性格も似ていると思われがちなのですが、決してそうとは限りません。


 これ迄のお話しでもお分かりの様に、ベルはしっかり者の「令嬢」下手をしたら何処となく冷たいイメージに見えるかも知れません。

 ただ…勘違いし無いで欲しいのは、あの子は自分の感情を出すのが下手なだけなんです。


 本当は誰よりも気遣いが出来る優しい子なんです。これは姉の良く目なんかじゃ有りませんよ?本当にそう思うから言えるのです。


 私は…そんなベルとも似ても似使わ無い…「令嬢」らしからぬ「令嬢」だと自分でも自負しております。


 ですがっこんな真逆の私達だからこそ、今まで仲良くして来れたとのだと思っております。


 ここで少し私のお話しにお付き合い下さいませ。


 時を遡る事、二ヶ月前お父様達から「許婚」のお話しまで遡ります。


 其れはもうっ大変驚きました。


 確かに私達の歳で…って言ってもまだ私達は19歳。結婚の事は考えて居なかった訳でも無かったのですが…急と言えば急なお話しで、私もベルも大変困惑しました。


 そのお話しを頂いた時、丁度夕食も終え、食後のお茶を両親と私達姉妹とイーソンとで、頂いている時でした。


 私は座っていた席を「ガタンッ」と立っては、お父様に猛反対したのです。


「お父様ったらっ!私達に何処のうまっ…いえっ殿方も分からない方と結婚しろっと仰るのですか?」


「お姉さまったら、少し落ち着いて下さいまし」


「ベルッ此れが落ち着付けですって?貴方は良いの?もしかして…殿方と言っても90歳のヨボヨボおじいちゃんかも知れ無くてよ?」


「アリスッはした無いわよ!少しは弁えなさいな」


「だってっ!お母様…」


 そんなやり取りを先まで、黙ってはお茶を飲んでいた、イーソンが「ぷっ」と小さく吹いていました。


「…イーソン?」


「あっ…いやっ失礼。流石に90歳と言うのは言い過ぎかと…僕が口出しするのはお門違いですが…可愛い愛娘に最初から苦労させるかもしれ無い殿方の所に嫁がせるでしょうか?」


 私はイーソンの言葉に素直に聞く事にしました。両親を見てもイーソンの言葉に「うんうん」と賛同とばかりに頷いているし。


「…続けて?イーソン」


「はい。もし僕が、ご両親の立場でしたら、余程の事が無い限り、所には嫁がせません。しかもそんな大事な話しでしたら場所を考えます」


 両親も私達姉妹も、今まで見て来たかの様に淡々と話しを続けるイーソンに耳を傾けました。


「大変失礼ですが…今日こんにちまで過ごして来た中で、「クラーク」家は、とてもでは無いと確信しているので…安心しても良い殿方だとお見受け致しました」


 イーソンの何処となく落ち着いた物言いに態度…私達姉妹は何も言えなくなってしまいました。…って言っても最初から騒いでいたのは私だけですけれど。


「ふむっ!良く言ってくれた。イーソン!流石わが息子だっ」


「恐れ入ります。義父上」


「…お姉さま」


「ではっ!一体誰なのです?私達のお相手になる殿方って」


「アナタ…そろそろお名前お出ししても宜しいんじゃ無くて?」


「そうだな」と、言ってはンンッッと咳をした時のお父様のお顔未だに忘れませんわ?


「相手の殿方は、カリム・リチャードソン氏だ」


『えっ!?…リチャードソン氏っ!カリム様ですか!』


 流石は双子っ絶妙なタイミングでハモリました!


「ああっそうだ。お前達もお祖父様から聞いた事が有るだろう」


「ですが…お父様っあれは冗談では無かったのですか?私達がお聞きした時は、リチャードソン様のお祖父様とお酒の場での、戯言ばかりだと思っていましたわ?…ねぇ?ベル」


「はいっ確かに私もお姉さまもその様に、お祖父様からお聞きしております」


「其れが…冗談では無かったみたいだな」


『カリム・リチャードソン…様』


 カリム様の事は、勿論お祖父様や両親に、この国の人達なら誰もが、知っているお方。

 カリム様自身を存じ上げ無くても、お名前だけでも耳にした事が有る位です。


 其れ程までに、有名人なのです。王宮直属の騎士団の団長を父に持ち、カリム様自身も第一部隊の隊長を務められている。若き実力者。

 見た目もイケメンでクールなお方、女性だけでは無く男性からも絶大に人気がおわり。


 …私もベルも幼い頃から存じ上げていました。しかも私達の憧れのカリム様。


 そんな夢の様なお方が、私達どちらかの…どちらか…そうだっ!私だけじゃ無いっベルの許婚になる可能性だって!?


 ハッとベルを見ると頬を高揚させては、スカートを握りしめていました。

 ベルもきっと私と同じ気持ちなんだと痛い程分かってしまったのです。


 スカートを握りしめている手を見ると、震えている。

 幾ら双子でも「姉」の私を優先にする、昔からベルは自分より人の事ばかり考える子でした。


 でも今回ばかりは今までとは訳が違うのよ?


「其れで…これは双子で有る故にお前達のどち等かと言う事になる、勿論異論は認める。なんなら断っても良いんだぞ?あのカリム氏だ。幾らでも求婚の相手ならいるからな」


 口ではああ仰っているお父様ですけど…。内心は「カリム様と許婚」になって欲しいはず。

 だって…私の「クラーク」家もそうですけれど「リチャードソン」公爵家と言えば代々の名家。


 しかもお相手はあの若き実力者。こんなチャンスは二度と無いのですから。


 勿論っ!私もベルも名家だからと言う理由では無くっカリム様本人だからですわ。


「あの…お姉さま…」


 暫く黙っていた、ベルが途切れ途切れに私に話し掛けて来ました。


「あのっ!私っ!私…っカリム様と許婚になりたいっ…です」


 その言葉に、ここに居る全員が、ベルの言葉に耳を疑いました。


「ベルッ貴方っ」


「ごめんなさいっお姉さまより先に許婚を決めるのは間違っているのは、十分に承知ですっですがっこればかりは」


 正直、驚きました。でも…何故か私不思議とベルにやきもち?だとか嫉妬は無かったのです。寧ろ…驚きの方が勝っていたから。


「え…ええっベルさえ良いのならば私は一向に構わなくてよ?けれど…ベル貴方本当に良いの?」


「はい」


 そのやり取りに、両親やイーソンは暫く放心状態でしたけれど。

 直ぐに両親が満面の笑顔を向けては、お母様はベルに抱きついていました。


「ベルッありがとうっ早速リチャードソン家にご連絡をっアナタ」


「あっああっああっそうだなっ早速リチャードソン家への返事を出そう。ベルッ良くぞ決心してくれた」


 両親に抱きしめられたベルは、今まで見た事が無い位に真っ赤な顔をしていました。


 其れが…ベルとカリム様の「婚約」が決まるまでのお話しです。




 そう言えば…あの時、喜ぶ両親とベルの三人に対し…イーソンはどこか目が笑っていなかった様な?…私の気のせいでしょうか?




♦︎♢♦︎♢♦︎後書き♢♦︎♢♦︎♢


ここまでお付き合い頂き本当にありがとうございました(*´꒳`*)ノ

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