第6話 言葉の勘違い…思い込み…恐いです。

 俺はひとまず、メイドのエリンが用意してくれた。お茶を兄とリビングで飲んでは落ち着く事にした。


 カチャン。と、テーブルに有るソーサーの上にティーカップを乗せては、両手を顔の前に組み静かに俺に事情を問いただす。兄。


 …まるで、取り調べ室に居るみたいな感じさえした。実際、警察にはお世話にはなった事が無いけれど。


「…で?さっきお前が悶絶していたのと、俺への甘い物に何か関係が有るのか?」


「あ…いえっ…その」


(ヤバいっ!上手い言い訳が浮かばねぇっ!)


 以外にも、兄はそれ以上問いた出す事は無く、小さな溜め息を一つ漏らしては、カップに入っている残りの紅茶をクィッと飲んで席を立った。


「兄さー」


「…お前が言いたがらないのに無理に聞く必要は無いだろ」


 夕食まで部屋で休む。と、その一言だけ言ってはリビングを出て行った。


 バタンとリビングのドアを閉め、カツカツカツと兄の靴音が遠くへ聞こえる迄、待ってから俺は深い溜め息を吐いた。


「ふうあっぶねぇ。兄さんの目を見てたら、全部洗いざらい吐いちまう所だったぜ」


 兄は別に脅している訳でも、怒鳴り声を上げている訳じゃ無いのにっ…なんだあの迫力。


 兄にしつこく聞かれ無かっただけ、有難いのに…なんだろ?物足りないつーか…退き際良すぎんだろっ!

 ハッ!今の言い方じゃ、まるで俺は兄に質問攻めにされたいみたいじゃんかっ!


「いやいやいやっそんなバカなっ俺は決してMなんかじゃ無いっ」


 俺は、自分自身に自問自答しては、首を左右にブンブンと振る。


「エース様ったらそんなに首を振られては、捥げてしまいますわよ?」


 あははっと笑いながら、さっき迄飲んでいた、兄のティーカップを片付け始めるエリン。


(んな訳ねぇっつーの。しかも若い娘が、捥げるなんて言っちゃダメ)


「あっそうだエリン。今度クラーク家でパーティーするの何か聞いてる?」


 カチャカチャッと食器をおぼんの上に片付けていた手がピタッと止まり、暫く考えていた彼女は「あっ」と言う表情を見せる。


「はいっ聞いていますっ!確か…えー…と今度の土曜日に主催なされるそうですよ?」


「今度の土曜日ぃっ!」


「はいっ確かかだと思いますけれど、其れが何か?」


「あっ…いや…ありがとう」


 エリンも一礼をしておぼんをカチャカチャと食器の音を立てては部屋を出て行く。


(今度の土曜日…って一週間もないじゃんよて、言うか、なぜエリンは知っていて俺が知らないんだよ)


 と、頭をフル回転していたら、エースでの記憶が蘇る。あっ!そうだそうだっ!そうだったった!


 確か…その話しを聞いたのは、一ヵ月前だった!…多分。俺がエースに憑依した事でスッカリ忘れていた!


 だって…コイツに憑依したてのホヤホヤだったし、今までの生活がゴロッと180度変わったんだもんよ。


 エースの身体に慣れるに必死だったからなぁ。

 パーティー所の話しでは無かったから…つい、忘れてた。


「良かったっ!思い出してっ!」俺は頭の中のモヤッとしていた事にスッキリしては、すっかり冷え切ったお茶をコクコク飲んで…吐いた。


(ああああああっ…!良かったじゃねぇよぅ何が良かったんだよぅ)


 問題がっ一番の問題が残っていた!ベル嬢の件どーすんのよっ!


 しょうが無い…明日学校に行って、イーソンに相談してみるか。


(はあ…頭痛ぇ)


 その頃、厨房では、さき程のティーカップを洗っているエリンに他のメイドが心配そうに話しをしていた。


「あの…エリンさん。エース様のお茶に何か入れました?」


「え?…何も入れてませんよ?」


「だって、エース様お茶を飲まれたかと思うと、それを吐いては頭を抱え項垂れていましたよ?」


「えええっ!吐いたっ!?」


 翌朝、俺はいつもエースが出て行く時間より早く学校に行く事にした。

 確か…イーソンは始業より一時間前に早く来ては、予習をしていると聞いた。


 俺等が通っている「ワイアット・ユニィヴァー」


 専門学校と大学が一つになっているんだとか。言わば「坊ちゃん嬢ちゃん」の通う所。


 勿論っ一般生徒も全然良いんだが…その分倍率がめちゃくちゃ高いらしい。


 そんな中。色んな専門知識を養う…王律・医学・音楽に軍まで学ぶ事が出来る。

 その中で、俺とイーソンは「普通科」に通っている。


 専門を習いたきゃ、途中からでも移動が出来るシステム。

 だから…俺はまだやりたい事が見つからないので「普通科」にいる。

 イーソンはどうなのかは知らないけど、とっ言うか「クラーク」家に養子なった以上。何かの専門分野を身に付けるのだろうがな?


「あっいたいたっ!イーソンお早う」


 教科書を出しては予習している手を止めては、朝から爽やか笑顔で挨拶をしてくれたかと思いきや、またノートにサラサラと勉強を続け出した。


「やあっお早う。エースなんだ?今日はやけに早いな?」


 目線は教科書に向いたまんまだ。


「うん?まあな?それより相変わらず勉強熱心だねぇ?そんなに面白い?」


 俺の言葉にノートに書ていたペンがピクッと動いては書くのをやめた。


(あちゃっ何かまずい事言っちゃった?)


「あははっそうだよぅ。楽しいよ勉強、エースもやったらハマるかもね」


 あれ?気のせいか?さっき一瞬顔が強張った様にも見えたけど…またいつものイーソンだ。


「絶対にヤダッ」


「そんなハッキリと拒否すんなよ」


 それからイーソンは、予習をやめ俺と話しをしてくれた。

 …なんか邪魔したみたいに悪い事しちゃったみたいで、罪悪感は有ったもの。


 昨日のベル嬢の事を、彼に話しをしてみた。


「ふむ…なるほど…。ようはエースの勘違いだったって訳なんだな?」


「ああっだってさ?いつも食後のデザート残さず食べていたら、てっきりそうかもって思うじゃん」


「まあ…お前の気持ち分からない訳じゃ無いけど、普段カリム氏は、母君以外の甘い物を食べているのを目にした事は有ったか?」


「うっ…其れはぁ」と、またまたエースの記憶をフル回転して過去を遡っても…ない。


 確かに、他の来客の手土産や、父親のお土産を食った所見た事が無いな。


 それ所かっパスタとかに、やたらとタバスコをドバドバ掛けていたり…異国の誰も食えない様な、激辛な食べ物を一人喜んで食ってたわ。


「確かに…無いデス」


「まったく…。まあ言ってしまったのならしょうが無い。今日クラーク家に行って本当の事言うしか無いだろ?」


「っな!俺にクラーク家に行けとっ!」


「なんだよっ他に方法があるのか?其れにパーティー迄の日にちは無いし」


「う…」


 確かに…それしか無いよなぁ…不本意だけれどベル嬢に会いに、元はと言えば俺の早とちりだし。

 そうだな!ちゃんと誠意を示した態度で、謝れば許してくれるよな…多分。


「ありがとうっイーソンッお掛けで気持ちが楽になったよ」


「どういたしまして」


 イーソンは、又あの爽やか笑顔を向けては、さき程邪魔してしまった。勉強を再開し出した。

 そんな彼を、今度は邪魔し無い様、席を外そとした時。


「ああ…っそうそう…エース」


「うん?」


「ベルの奴…上機嫌で鼻歌を歌いながら厨房で、甘い何かを作っていたのを俺は見たわ」


 はぁあぁあん!今っ!それを此処で言うっ!?


 ニヤッと口角を上げては、教科書に目を向けるイーソンッ!!

 さっきのアドバイスはなんだったんだっ!


 コイツ…性格が良いっと言うのは…の方だったかっ!


 またもや俺はエースの記憶に勘違いしていた様だ。





  ♦︎♢♦︎♢♦︎後書き♢♦︎♢♦︎♢


因みに学校の設定は無視して下させぇ。私自身なぁんも考えて無かったですな_:(´ཀ`」 ∠):


ここまでお付き合い頂き本当にありがとうございました(*´꒳`*)ノ



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