第5話 憶測で物事を判断したら痛い目を…みます。

「イーソン?何故…」お前が?と言い掛て止めた。

 そりゃ、ベル嬢と義理の兄妹だから一緒に居て不思議は無かったし。


 あのまま言い続けていたら、又ベル嬢の嫌味に近い返答を聞くのが嫌だったのも正直ある。


 イーソン・クラーク氏とは、俺と同じ専門学校に通っていて仲の良い友人の一人。


 見た目は伊達眼鏡を掛けているイケメン兄ちゃん。


 本人曰く「人見知りをするからカモフラージュ」らしい。


 イーソンは成績もスポーツも優秀で万能その上、性格の良いイケメンと来たもんだ。

 俺が女だったら間違い無く、惚れていただろう。


 でも其れを言ったらウチの兄も、目付きは悪いけどイケメンだし性格も「ドS」…いやいや「悪魔」アワワッちがっ…「鬼畜」コホンッ。


 性格は…まあこの際アレとして、弟が言うのも何だけど、男が惚れる男だっ。あら?これってフォローになってる?


「珍しいな。エースとここで会うなんて…まさかっお前っ誰かとデ…デートとか?」


 イーソンのキラッキラした顔が何かムカつくっ。しかも「まさか」だなんて失礼しちゃうわねっ。


「俺がデートしちゃ悪い?」と言いたいっ!声を大にして言いたいっ!がっそんな相手がいるはずも無く。


「あー…いやぁ…一人で散歩中?」なぜ疑問系。


「あっ…そっか…何か…うんごめん。んじゃ俺達そろそろ失礼するよ。また学校で」


(なぜに謝るっ!しかもそんな目で見るんじゃねぇっ今、なに気に傷付いたよ?)


「それでは、エース様失礼致します。カリム様によろしくお伝え下さい」


「あっああ…イーソンまた学校で、ベル嬢も確かに兄に伝えます」


 それでは、と、ベル嬢は俺に一礼をしてイーソンと二人この場を後にした。

 ヒラヒラと手を振りながら二人が見えなくなる迄、満面の笑みで見送くる俺。 


 当然、腹の中は煮えくり変えっていた。


「うがぁあぁっ!っだよっあの人を哀れみで見る目はっ!それにっあのベル嬢っ小さく「プッ」と笑っていたのを俺が気付かなかったとでも思ってたんかぁいっ!!」


 ガルルルッとまるで犬が威嚇しているみたいに唸っているのを、通行人達はドン引きしていた。


(クッソ面白くねぇっ俺もベル嬢に気付いた時点で無視しとけば良かった)


 俺がブツブツと文句を独り言を言いながら歩いていたら、目の前からハァハァッと息を切らしながら走ってくる人がいた。


 …まさかとは思うが「ベル…嬢」


「ハァハァ…やっと…やっと見つけました。もしかして…ハァ…帰え…帰られたのかと…ハァー…苦しいっでも良かったっ会えた」


「一体…どうしたのです?イーソンは?彼は」


「イーソンなら馬車で待って貰っています」


 なんだ?まだ俺に言いたい事でもあんのか?いや…わざわざ言いたい事言いに、息を切らしながら「令嬢がはしたない」って怒られるかも知れ無いのに普段来るか?


「あのっ…あのエース様に一つお聞きしたい事がありまして」


「僕に聞きたい事?ですか?」


 息を整え直しては、走って来たからなのか…其れとも今から言う事が照れ臭いのかは、分からないが、彼女の頬が少し赤く染まる。


「あの…その…今度私の屋敷でパーティーを開くのをご存知です…よね?」


「いいえっまったく」


 俺の感情の無い返事にベル嬢は、ガーンとした顔をしたが、直ぐにいつもの彼女の顔に戻った。


「えっ?そんな筈はっ!ちゃんと招待状お出ししましたわ?貴方ちゃんと読ま無かったのですね?」


「招待状…はて?」


「貴方って人はっ!!」


 俺の淡々とした返事に少し苛立ちを覚えたのか、またもや上から目線で俺を見る。

 でも、俺の返事は間違いでは無い、知らないものは知らないのだから。


(はぁ…んだよっめんどくせぇな)


「それは本当に申し訳有りませんでしたっそれで、僕に用と言うのは?」


「ハッ!そうでしたわっ…その…今度のパーティーで…カ…カリム様に何か贈り物をしたいと思っているのですが…その」


 先ほどから上から目線だった彼女は、急にモニョモニョと小さな声で俺に聞いて来た。

 ほほーう?このご令嬢は兄の事となると急にしおらしくなるんだな?


 最初から、俺にもそう言う態度すりゃ良い物の…。なんで俺の前だと態度が違うんだよ。

 俺もやはり兄の弟なのだ、思わず「ドS」が出てしまった。


「兄への贈り物ですかっ!」


「ちょっ…声が大きいですわっエース様」


 そりゃそうよ。だって…通行人に聞こえる様に言っているんだっもーん。


「うううっ…」と小さく唸っては益々顔を赤らめて俺を睨む。


 (へぇーぇ…おもしれぇ。)


 普段から物静かにどこと無く俺への態度が冷たい彼女に不満を持っていたから、つい意地悪な態度をしてしまいたくなる。


 けれど…わざわざ走って俺を探しに来る位だ。そう思うとなんだか逆に可哀相にも思えて来た。


(こんな事思う俺も大概だな)


 普段のベル嬢からは想像も付かない様な顔で、顔を赤らめてはハンカチまで取り出して両目を、ギュっと瞑って握りしめている。


(ったく。しょうがねぇなぁ)


「…………確か兄さんは甘い物には目が無かったかな?」


「甘い…物?」


「ええ…ああ見えて、実は甘党なんです。だから甘い物なら何でも喜ぶとは思いますよ?」


「ありがとうっエース様っ貴方様でも役に立つ事が有るんですねっそれではっ!」


 俺の両手を力一杯握り締めたかと思うと、急にベル嬢の顔に、パァッと光が差した途端、イーソンが待っている馬車へと掛けて行ってしまった。途中、要らぬ台詞が混じっていた様な…。


(まあ…良いか喜んでいてみたいだし)


 なんて呑気に鼻歌混じりの口笛を吹きながら自分の屋敷へと戻った。

 誰も、俺が公爵家の人間だなんて、思わないだろうなぁ…。


 なんて思いつつも屋敷に戻ると、今日は珍しく兄の帰宅が早かったのか。


 リビングでバッタリと出くわした…。


(噂をすればなんとやらか?)


「…なんだ?気持ちの悪い奴だな?良い事でも有ったのか?」


「いいえ?それより今日は帰りが早かったのですね?」


「ああ…今日は上層部の連中の会議が有ったのでな」


「…なるほど…あっ!兄さん一つお聞きしたいのですが、兄さんは確か甘党でしたよね?」


 俺は、ふふーんっと言う笑顔の下、ニコニコ笑顔で兄に問い掛ける。

 そんな俺を見ては、兄は気持ち悪い奴と言わんばかりに少し警戒していたけど、今はそんな事どうでも良いやっ。


「俺か?…いいや?どちらかと言うと辛党だが」


「……………はっ?」


「はっ?とは…?」


 (いやいやいやいやっ!俺の聞き間違いか?)


「えっ?えっ?だって…この前の母さんの試食と言いっ食後のデザート残さず食べていましたよ…ね?」


「ああ…確かに食っていたな。たが、母さんのは何故だか食える。しかも食後のデザートは全て母さんのレシピだからな?だか其れ以外は無理だな」


「うぉおぉおっマジかぁっそっちかぁあぁあっ!」


 俺は兄のまさかのを床にめがけ悶絶しちまった。


「なっなんだなんだっ!大丈夫かっエース」


 俺が、さっき迄ニコニコ笑顔だった筈が急に、悶絶しだしたモンだから、そりゃ驚くのも無理は無いっ。がっ!!今はそんな兄を他所目にベル嬢に対してやっちまった感の方が、猛烈に勝っていた。


ここで其れは無いわぁ兄さんっ!?




  ♢♦︎♢♦︎♢後書き♦︎♢♦︎♢♦︎


ここまでお付き合い頂き本当にありがとうございます(*≧∀≦*)ノ

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