第4話 休日でも油断は禁物ですって誰かに言いたい。
「はぁー…食い過ぎたっ腹パンパンだわ」
そうなのだ…母親が作ったケーキが美味すぎて、あの後2つも食ってしまった。
昔、まだ俺が「如月 尊」だった頃、じいちゃんが言ってたっけ。
「甘ったるいケーキなんぞっ女・子供が食うもんだ!」って…の割りにはイベント毎の時には喜んでケーキ食ってたけどな。
母親のこのケーキを食ったら、言っていた事も又違っていたんだろうな。
…なんて、一人ベットに横になりながら、物思いにふけていたら、いつの間にか奴が居た。
「うおっ!ビックリしたぁ」思わず飛び起きてしまったわっ!
「兄さんっ!部屋に入る時はノックして下さい」
「あっ…いやすまん。ノックしたんだが、返事が無かったから」
(したんだ?気づかなかった)
「で、なんです?何かご用件でも?」
俺の問い掛けに、ウォホンッと咳払いを一つしては、目線を俺に合わせる訳でも無く、俺の後ろの壁の方を見ながら。
「…その…すまなかったな…今日の昼間助かったよ。お前が居なかったら大変な事になる所だったから、その…ありがとう」
「兄さん…」
顔は相変わらず「無」だったけれど、照れ臭いのは手に取る様に分かる。
だってさ?耳まで薄ら赤くなっているのが、分かっちゃったんだもん。
兄は、その一言が良いたかっただけだから。と最後には付け足し、俺の部屋を出て行った。
初めて見た時は、「なんじゃっコイツ」て思ったけれど、案外良い奴なんじゃ無いかと思った。
翌朝、メイドが俺の部屋をノックしたと思ったら、なにやら何かを言いながら、部屋のカーテンを思いっきり開ける。
シャッとカーテンの音と共に、外の光が俺の瞼に光をさす。
「うっ!まっ眩しい…」
「エース様っお早うごさいますっ良い加減起きて下さいまし」
「お早う…エリン。もう朝か」
「はいっ皆様はとっくに朝食を済まし、それぞれお出かけになられました」
「マジかよ…」
俺、専用のメイド。エリン・ロバン嬢。姉貴のネームでは田舎の男爵家の娘で、立派な令嬢に成る為に、修行の一貫として俺の屋敷でメイドとして働いている娘さんだ。
最初目が覚めた時に、俺のベットの横でハラハラと眺めていたメイドさんね?
幾ら、田舎男爵家と言っても、貴族の娘さんだ。それなり苦労も有ったろうに。
エリン嬢だって「令嬢」には変わりが無いのだから、姉貴は多分何も考えて無いんだろうなぁ。
「さっ早く朝食を済ませて下さい!じゃ無いと厨房の人達にご迷惑をお掛け致します」
「はい…スミマセン」
流石は「令嬢」物事をハキハキ言う、俺は嫌いじゃ無いけどね?
俺は、少し遅い朝食を済ませては、屋敷の外を探索する事にした。
一応、俺も公爵家だから、専門学校に通ってはいるみたいだし。その学校は明後日まで休み。ラッキー。
だから、この休みを利用しては、出来るだけの知識を叩き込みたかった。
半分以上は姉貴のネームを読んでいたお掛けでも有るな?
俺は、周りの景色を堪能しながら、散策をしていると、一際行列が出来ている店を目にした。
「…メルシエ」母親が経営している店だ。
大半の客は女性だけど、その中には孫を連れた老人や俺と大して変わりが無い男性も混じっていた。
俺は、客の邪魔にならない様、店の出入り口の端っこで客達のウォッチングをしていたら。
購入を済ませた女性客達の会話が聞こえて来た。
べっ別に盗み聞きするつもりは更々無かったさ!…偶然聞こえて来たんだよ。
「やっぱ、早く並んで良かったねぇ!今度、新作イチゴモンブランってのが出るんだって!楽しみだねぇー」
(新作モンブランって…昨日食後に試食した奴か?)
なんか身内が作った物を、褒められているのは悪い気し無いよな。寧ろ嬉しい位。
その後も、暫く客ウォッチングをしていたら、店から出て来る、客達は皆同じ表情を見せる。
店に入る前は、ワクワクしている顔で店から出て来た時には、満面の笑顔に変わっているのだ。
孫を連れた爺さんも俺と大して変わらない男性に…若い女性達。
皆、それぞれに良い笑顔をしているのを見ては、俺もなんだか嬉しくなっちまったよ。
「…へぇーっ母さん中々やるじゃん」
流石に店の前で、ウロウロしていたら通行人に怪しまれる為、俺は再び街を散策する事にする。…て、現に通行人の視線が痛かったしな。
下手したら警察に通報されかね無いや、其れこそ店の迷惑になっちまう。
気を取り直し暫く歩いていると、凄く大きな自然公園の前に着いた。
中に足を踏み入れると、其々公園を楽しんでいる人達で一杯だった。
ピクニックしている家族や恋人達に、運動をしている人…後、木陰で読書してたり昼寝をしている人達。
「おおっ…まるで映画のワンシーンを観ているみたいだぜ」
自然公園なだけ有って、至る所に管理人の人が、丹精込めて育てているのか、綺麗な彩どりの花々が見事に咲いていた。
「んんーっ春だねぇ」俺は生前「如月 尊」の時には考えられ無い位に自然を満喫している。
あの時の俺は、こんな綺麗な風景を見ても「ふーん」位な感情しか無かっただろう。
中坊から悪友と遊ぶのに夢中だったしなぁ。今、思えば勿体無い事したと思うわ。
またまた公園の中を散策を続けていると、今度はバラの庭園までやって来た。
ここは、さっきの場所と違って人が疎だ、赤いバラに黄色に白にピンク…青まで有るじゃんっ青なんて初めて見たわっ!
「ひゃあ…まるで少女漫画の世界みたいだな」
何回も言うけど…あの姉貴が考える事だから。
(以外にロマンシストだったんだ…マジ以外)
姉貴がロマンシストだったのを知って、一人思い出し笑いをしていたら…見覚えのある人影が、あの人は…。
「…ベル・クラーク嬢?」
「あら?エース様。エース様じゃございませんか」
(うわ…思わず声に出しちまった)
「こんにちは。偶然ですね?お一人ですか?」
「いいえ?私一人じゃ有りませんわ」
(むっ…この口調可愛くねぇ)
彼女は自慢だろう長く綺麗な髪を、右手で後ろの方にサラッと流しては…何故か上から目線で俺を見る。
「ああっ…失礼しました。兄とご一緒だったんですね?」
別に俺は皮肉でも何でも無く、ただ普通に聞いただけなのに…何が気に入らないのか、少し睨まれた。
「まさかっカリム様は公務でお忙しい方です。そうそうにお会いにはなれませんわ」
カッチーンッ今の言い方よっ流石にカッチーンと来た!
何かを言い返したくても、兄の許婚と言う事に変わり無いから…言い返しが出来無い。
下手をしたら、俺が兄に何をされるかも分からないし。其れこそ打ち首獄門の刑になりかね無いわっ。
「…エース?エースじゃ無いか?」
俺の名を呼ぶ方へ振り向くと、俺が通っている専門学校の友人が居た。
彼の名は確か…「イーソン・クラーク」姉貴のネームでは、数年前からクラーク家の養子になった、「ルグラン」伯爵家の三男坊だ。
♦︎♢♦︎♢♦︎後書き♢♦︎♢♦︎♢
ここまでお付き合い頂き本当にありがとうございますっ(*´꒳`*)ノ
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