第6話

 騒然とする学内。教員が慌ただしく廊下を通る。祠の中にあった天使の像がなくなってしまったらしい。近くに生徒と見られる目撃情報があったが、二名の生徒の所在はつかめないままだった。両親もお互いの家に泊まりに行ったと聞いていたというばかり。同級生に聞いても交友関係は狭い生徒たちだったようだ。警察は事情聴取を形ばかり行い。ただの家出だろうとたかを括り捜査をしなかった。数日後、白い月が雲に隠れ小雨はやがて街を海底にしようとしているみたいに降りこめる。むせ返るような濃密な雨の匂いがまとわりついた。獣のうなり声に似た音が空から聞こえたかと思うと、いかずちが黒い夜を引き裂くように落ちる。まるで天罰がくだったようだったと人々は口にした。小屋の外には真っ二つに割れた天使の像が転がっていたのだ。熱くて赤いゆらめきの中、煙が充満している。炎から私をかばい外へと向かう気配。ゆっくりとまぶたを上げるとマリエの満開の花束みたいな笑顔と目が合った。私だけを特別に思ってくれる純白の天使がそこにいた。

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