第5話
今にも朽ち果ててしまいそうな、腐食した木でできた小さな祠。中をのぞくと、いかにも手作りという感じの羽のある石像があった。アキラと目を見合わせ、恐る恐るべっこう飴を供え手を合わせる。噂を聞いた時から来たかった。幼い頃からずっと願っていたことがあるから。その透き通った瞳に私だけを映してくれたら良いのに。あふれ出すほど心を独占したい。叶わないと知っていても望まざるおえなかったかすかな希望。帰り道、急な坂を自転車を押しながらのぼる。横をのんびりと歩くマリエはニヤニヤしながら聞いてくる。
「気にしてないって言ってたのに結構しっかりお願いしてたよね」
「そんなことないよ」
「そんなことなくないよね」
「ないって」
「どんなお願いしたの?」
「内緒」
「マリエは何を願ったの?」
「秘密」
数秒目が合い吹き出すように笑う二人。お互いの願いは聞かず、マリエの家に帰ることにした。
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