第4話

 『天使の像も君が作ったんだってね。どうしてそんな噂を流したんだい?』

『願いが叶うという噂を流せば望みを聞くことができると思ったから。部屋に仕掛けた盗聴器も様々なアングルから撮った写真も彼女のことを教えてくれる。でも心の中までは見ることはできないことが、長い間もどかしかった。恥ずかしい時にする癖もトイレに行く回数もいつも何時に寝るのかも、なんでも知っている。それなのに心をよせる人間が現れてしまえば。見つめる彼女の横に私ではない誰かがいる日が来てしまったら。恐ろしくなった。だから、部屋一面に飾っいとしい彼女を全て占領するために、閉じ込めてしまうことにした。天使にお願いをした後、姿を消したと証言すれば閉じ込めたことを誰にも気付かれない。仲の良い友達が嘘をついているなんて疑う人はいないから。二人きりの空間なら私しか見ることも話すこともできない。少しの間はわかってもらえないかもしれないけど、そのうち自分には私しか頼れる人がいないって気づいてくれる。暗闇の中でほのかに灯るろうそくの火は、熱さで身を焦がすとわかっていても触れられずにはいられないから。駄目だと思えば思うほど、彼女の心の中には私の姿だけが何度も繰り返し映し出されるの。想像しただけで歓喜にうちふるえた。ようやく彼女を私のものにできる』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る