キミはサンタの贈り物

贈り物①

※性描写あり






side.Tomohisa




「相変わらず、いい食べっぷりだねぇ~智久さんは。」



差し出された料理を夢中で頬張っていると。

向かいに座る雪緒が、嬉しそうに微笑む。





「ん~こんなご馳走、たまにしか食えねぇかんなぁ。」


「ご馳走って…こんなの普通じゃん~。」


「独り暮らしの俺からすりゃあ、充分ご馳走だよ。それに、」



お前の作ってくれたものだしな、と。

本心を述べれば、




「ま、まあっ…智久さんは放っておくと、まともな食事も出来ないだろうからね~。」



雪緒はからかうような口調でありながら、

色白い肌を赤く染め、はにかんだ。








去年のクリスマス…偶然出会った雪緒。

最初は軽そうな外見とか、初対面でいきなり家に入れろとか…。図々しいヤツかとも思ったんだが。


仕方なくも家に招き入れ、コイツの過去を聞かされて。チャラチャラした風貌とは裏腹に、実は健気というか…儚いというか。


そういった意外な一面を知ってから。

俺はどうもコイツの事を気に入ってしまったらしい。





だからといって、いきなりそれが恋愛対象に…なんて事にはならなかったが。雪緒もなんだかんだ俺に懐いていたので…。


奇妙にも、お互い切れることなく。

この不思議な関係を、未だ続けてたりした。







大体は、俺の休み前に雪緒からメールが届いて。

都合が合えば、コイツが家にやってくるといった感じで。


…とはいえ、雪緒は実家から遠路遥々俺に会いに来てくれてるわけだから。月に数回、こんな風に飯を作ってくれたり身の回りの世話をしてくれたりと。


甲斐甲斐しくも、俺に尽くしてくれていた。






「ほんと、独り暮らしの男ってだらしないよねぇ~。」


「そうか?これくらい普通だろ?」


「ダメダメ~今は男も家事出来なきゃ、モテないんだよ~?」


普段は掃除も飯も適当な俺を、しょうがないなと雪緒は面倒みてくれるんだが…。

それがただの親切心じゃないって事ぐらい、さすがの俺にだって理解出来ていた。


や、むしろコイツは判りやすいというか…。






「そんなんじゃあ、彼女なんて一生出来ないよねぇ。」


「ん~お前がいてくれれば、別に要らない気もするけどな。」


「えっ…?」



ほら、こういうこと言ってやるとすぐ赤くなるし。




「またまたそんなこと言って…。知らないよ~、今年のクリスマスもぼっちになったってさ?」



恥ずかしさを誤魔化すよう、夕食の後片付けに精を出す雪緒。チラチラ見える耳朶は、じんわり赤みがさしていて…。


それを眺め、俺はつい顔を緩ませる。






(愛されてん、のか…)


雪緒は偶然このアパートのこの部屋に、以前付き合ってた“恋人”と住んでいた。

雪緒は初めて本気で惚れた相手だと、それが単に男だっただけだと語っていたが…。


惚れてただけに、ずっとソイツに捨てられた事を引き摺っていたようだから。

俺とソイツを、どっかで重ねて見てるのかもなと思えば、複雑なとこもあったけども…。






(自惚れても、いいんじゃないか…)



ただそれだけで、遠くからわざわざ通って来て。

飯だなんだと尽くしてくれるもんだろうか?


例え相手が男の雪緒であってもだ。

こんな可愛い反応されたら誰だって────…






「どしたの?変な顔して…」


「や、なんでもねーよ…」


ジーッと雪緒の背中を見て考え事してたら、本人に気付かれてしまい。俺は頬杖で口元を隠し、明後日を向く。





(可愛い、ねぇ…)


外見はまあ美人だが、チャラいし男だし。

凡そ可愛いと形容するようなタイプじゃないんだが。


逆にそんな顔して、家庭的で飯が美味くて。

すぐ赤くなったり、判りやすく俺を意識しながら、

今までずっとそれをひた隠してるところとか…





(可愛いとしか言えないだろ…)


偏見はなかった。が…自分にはあり得ないと、無意識に思っていたのに。


そんな考えが一年近く経った今、覆りそうになっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る